地方企業を活かす知財戦略…(4)
知的財産権の利用の仕方[Ⅲ]…リバース的利用
前回までの利用の仕方については、「自分(自社)の所有する知的財産」をどのように活用するかの視点から書いてきました。
今回は、一言でいえば、「他人(他社)の所有する知的財産」を活用するにはどうするかの視点になります。知的財産権、例えば、特許の場合、利用できるのは自分の特許だけではありません。他人の特許も利用することができます。いわば「リバース的利用」ができ、このリバース的利用には、「直接的利用」と「間接的利用」があります。
[直接的利用]
他人の特許権等をそのまま利用する方法です。例えば、ある菓子メーカーが、美味しく焼ける「菓子の製造方法」について特許権を所有している場合、小規模のお菓子屋さんが、その特許権のライセンス(実施権)を受け、自分が製造販売しているお菓子の製造に利用する場合などが該当するでしょう。
この場合、そのお菓子屋さんが特許権を侵害して賠償金を支払う場合と同じように見えますが、ライセンスは積極的対応、侵害は消極的対応となり、内容的には180°の違いがあります。
ライセンスは、一見、お金を払って使用するため、旨みがないように見えますが、お菓子屋さんにとってみれば、「菓子の製造方法」を自分で開発する手間が省けるため、適切なライセンス料であればビジネスとして成功する確率が高くなると思います。
[間接的利用]
<リバースエンジニアリング>
他人の特許(発明)を参考にし、その発明に改良を加えて自分の知的財産として確立する利用形態です。
例えば、先の例では、「菓子の製造方法」について、その具体的実施例が洋風クッキーであった場合、その製造方法を実施し、和風クッキーの製造方法に改良する場合などが該当するでしょう。
この場合、他人の特許権の実施は、個人的な実施に留まるため、特許権の侵害にはなりません。
<情報収集>
特許出願は、1年半後にその内容が公報により一般に公開されます。この公報には、技術内容はもちろんのこと、発明者名、出願人名、出願日等の各種情報が掲載されます。
したがって、技術文献としての利用に加え、例えば、「〇〇社は、〇〇年から3年間、〇〇〇に関する特に〇〇の技術について10件の特許出願を行っていた」という、いわば企業情報が分かります。
このような内容をグラフィックにまとめたものを「パテントマップ」と言いますが、競合する企業の動向等の様々な情勢分析に利用できます。
このように、他人の特許であっても、結構、利用価値がありますので、活用しない手はありません。