地方企業を活かす知財戦略…(4)
ヒット商品を支える知的財産権-Ⅰ
今回は、ヒット商品をキーワードとして、知的財産権(知的財産)がどのように関係しているかを見てみたいと思います。ヒット商品には、消費者が関心するようなユニークな商品もありますが、比較的単純な構成或いは形状であっても、機能に優れ、消費者のニーズに合致すれば、ヒット商品に繋がります。
[プラス(株)のHPより]
上の図は、プラス(株)の商品であるフィットカットカーブ(登録商標)というネーミングのはさみです。ちょっと前になりますが、2012年ヒット商品ランキング5位となり、2013年12月時点で500万本以上売れたそうです。
一方、はさみを製造している会社は他にも沢山あり、これだけヒットすると、他の会社も同様のはさみを販売したいと考えるのは自然です。
したがって、プラス(株)にとっては、特許(知的財産権)による防衛を考え、他社の追従を阻止しようとするでしょう。もし、知的財産権制度が無ければ、製造技術が進歩した特に今の時代には直ぐに類似の商品が乱立してしまいます。
このフィットカットカーブのはさみについては、ベルヌーイ曲線(対数螺線)の刃を有するはさみとして既に特許出願されています。
他方、他の会社は、ただ黙って見ているしかないのでしょうか? 特許が成立すると困ると考えれば、逆に、この特許の成立を阻止しようとするでしょう。一般的には、特許出願の内容は新しい発明ではない等を理由にして、その証拠になる資料を特許庁に情報提供できます。さらに、特許の成立後は異議申立や無効審判請求を行うこともできます。
しかし、誰が見ても、この商品は古くから存在したと判るものは兎に角、そうでないものは、例え情報提供したとしても特許の成立を阻止できるかどうかはわかりません。審査官は、自分の調査結果に情報提供された資料を加え、最終的な結論を出します。結局、他の会社にとっては、審査の結果が出るまでは、製造に踏み出すことができにくいのが実情です。
このように、特許出願の段階でも、副次的な作用により、結果として自社の製品を守ることが可能です。ヒット商品は、流行性を有しているものも少なくなく、半年ほどでブームが終わってしまうこともあります。この場合、特許出願は、特許が成立しなくても、結果的に特許を取得したと同様の効果をもたらします。
中小企業(地方企業)において自社製品を発売したら大手企業が似た製品を安い価格で発売してきた。という経験があるかもしれません。この場合、何か知財戦略の見落としがありそうです。知財戦略は様々な角度から様々な戦略を立てることができ、特許出願する際には、単に特許を取る(取れる)/取らない(取れない)だけの判断ではなく、様々な要素を加味することにより総合的に判断することが必要です。中小企業(地方企業)の皆さんこそ、適切で有効な知財戦略を立て、自社の飛躍につなげてほしいと思います。