中小企業にとっての知的財産権…Ⅱ
知的財産の「活用」に関しては「知財サイクル」という言葉がよく使われます。この「知財サイクル」をイメージで表すと次のようになります(図は政府の工業所有権審議会資料)。
そもそも知的財産で優位に立たない商品は、自由競争下で作ったとしても、基本的に、マイナスの循環(負のスパイラル)に巻き込まれます。つまり、「価格競争(値下げ)」→「収益悪化」→「コスト削減」→「価格競争(値下げ)」の循環に巻き込まれ、最悪、体力の弱い企業が撤退するまで続きます。
しかし、「知財サイクル」は、上の図のように、「創造」→「保護(権利設定)」→「活用(権利活用)」→「創造」の順に循環し、知財による作用がプラス方向に循環します。
今、「創造」のステップにおいて、独自の商品をつくったとします。この「独自の商品」については、特許権等の知的財産権により「保護」できます。そして、この知的財産権の「活用」により、「独自の商品」は、他社につくられることなく販売することができ、他社とのコスト競争に巻き込まれることはありません。つまり、本来の収益を確保できるとともに、この収益は、次の「創造」のための資金にできます。これにより、次の新しい製品を生み出すことができ、更なる収益につなげることができます。
勿論、現実は、全てこのような理想形の循環が行われるわけではありませんが、「知的財産権」を有効に活用し、このような知財サイクルを実現している企業も少なくありません。
我々弁理士の仕事は、とかく「保護」の側面から見られがちですが、それだけではありません。「創造」及び「活用」を含めた望ましい「知財サイクル」の構築をお手伝いできればと思っています。