中国の知財状況
「世界特許」,「国際特許」という言葉をよく聞きます。これらの言葉は全世界に通用する特許のように聞こえますが、このような特許はありません。
特許は各国単位で発生します。理由は、各国で法律が大きく異なるためです。当然、各国毎に特許の扱いも異なってきます。例えば、米国の場合、特許権侵害に対して三倍賠償が適用されるなど、日本の企業に対して〇〇億ドルの損害賠償が認められたなどのニュースもご存じと思います。輸出企業は注意が必要です。
しかし、このような状況下では国毎に手続を行う必要があり、出願人にとって極めて不便です。このため、特許制度のハーモナイゼーションにより徐々にその相違は小さくなる傾向にあります。2011年に成立した米国特許法改正がよい例です。
手続面では、外国特許出願や国際特許出願(PCT)という制度があります。したがって、日本から外国へ出願する場合、各国へ特許出願する、いわゆる「パリルート」による外国特許出願と、PCTによる特許出願、いわゆる「PCTルート」による国際特許出願を利用できます。もちろん、これらの制度を利用することなく、特許を取得したい国へ直接特許出願することもできます。「パリルート」と「PCTルート」の概要を簡単に記載しておきます。
【外国特許出願の豆知識】
<パリルート>
パリ条約に基づく出願です。最も大きな利点の一つとしては、日本に特許出願した後、1年以内に優先権を主張して他の国(条約締約国)に特許出願すれば、他の国の特許出願日は、日本の特許出願日として同一の特許出願日(優先日)として扱われます。
<PCTルート>
特許協力条約に基づく出願です。「PCTルート」の出願は、メリットも多く、日本のPCT出願は増加の一途を辿っています。日本の特許庁(国際受理官庁)に、PCT出願すれば、その出願日に全世界の締約国に出願したものとしてみなされ、いわば「予約」が成立します。そして、その後、30ケ月(原則)の間に、出願したい国をいわば「確定」させることができます。なお、出願日には上述した「パリルート」による優先権を主張した優先日を含めることができます。
※ (注意点)
いずれのルートも日本の特許出願が出願公開された場合、即ち、日本の特許出願から1年6ケ月を経過した後は、発明内容の公開により新規性を失うため、事実上、外国への出願ができなくなりますので注意が必要です。