農業と知的財産(1)
初めまして、弁理士の下田茂と申します。
特許等の「知的財産」について、少しでも身近に感じてもらえればと思い、マイベストプロ信州に掲載させて頂きました。今後ともよろしくお願いします。
「知的財産」という言葉を聞いたことはあると思いますが、よく判らないという人がいると思いますので、最初に、「知っておきたい知的財産」の視点から分かりやすく紹介してみたいと思います。
財産の一つである知的財産は、知的財産権という権利により保護され、主に産業財産権と著作権が含まれます。産業財産権は、文明(産業)に関係する特許権や商標権等が含まれ、商品の新技術、デザイン、ネーミング等が保護対象となり、著作権は、文化に関係する音楽や映画等が保護対象となります。そして、これらから抜けてしまうものは、主に不正競争防止法により補填されます。これが知的財産保護の大枠の体系です。
現在、インターネットやデジタル機器の飛躍的な進歩と普及により、一般人でもうっかりすると犯罪を犯すことにもなり注意が必要です。身近な著作権について例を挙げてみましょう。
他人の著作物の私的使用は許されるため、テレビの映画を録画して自由に見れますが、映画館での映画の撮影は例え私的使用でも特別法により違法となります。また、テレビのダビング10はディスクへのダビング失敗に配慮したものであり、ディスクの他人への販売等は勿論犯罪です。インターネットのブログで他人の写真や文章を貼付ける際もルールに則った引用や転載が必要であり原則は他人の許諾です。違法と知りつつ音楽等をダウンロードすることは、例え私的使用でも著作権侵害となります。これらの例のように、著作権は様々なシーンで我々の日常生活に絡んでおり、知らなかったでは済まされない場合も出てきます。
一方、最近、産地偽装の問題も目立っています。「信州」ブランドなども立派な知的財産であり、このような原産地名は、不正競争防止法により保護されるとともに、品名を組合わせれば、地域ブランドとして商標法でも保護されます。
ところで、中小零細企業は、大企業に対して力関係では圧倒的に不利ですが、知的財産権は、大小関係なく公平に保護され、活用が許されます。特許権や商標権等の知的財産権は中小零細企業にとってこそ必要なツールであり、攻めと守りの観点から重要な戦略的武器となります。