「鳥の目、魚の目、虫の目」で課題解決?
もし、従業員の横領、搾取が発覚したら?
いきなり懲戒免職・懲戒解雇と
いうのは、あまりにも乱暴なやり方
であろことは想像に難くないと
思います。
最終的には、裁判でその有効性が
争われることになるわけですが。
そこまで、いかないにしても
裁判例を検討することは、常日頃の
労務管理をどうおこなうかの大きな
ヒントになり得ます。
もちろん、懲戒免職や懲戒解雇を
有効に行うには就業規則にその旨の
規定が必要なのは言うまでもあり
ません。
ただ、それだけでは足りないのも
事実です。
そういった意味でも裁判例を検討
することが有効だと言えます。
ところで、裁判例でいうと金銭の
多寡を問わず有効と判断される場合。
反面、その有効性が否定されて
負ける場合の裁判例もあるわけです。
この負けるケースとして顕著なのが
立証が不十分というパターンです。
もちろん、そういうことが起きない
ようなマネジメントや労務管理上の
注意を果たすことが必要なことは
言うまでもありません。
しかし、いくら注意を尽くしたと
しても起こってしまうのがトラブル
のトラブルたる所以でもあります。
横領、搾取の事例
実際、時間外勤務したとして届出書類を
偽造し、上司の印鑑を無断で押印し、
時間外手当を搾取し、又は搾取しようと
した事案で懲戒免職処分が有効とされた
裁判例がある。
原告が、当該非違行為による届出により
3万数千円を受領し、また日付なしの届出
書類にも押印し、後日提出し2万数千を
搾取しようとしたものだ。
しかし、この時点では、非違行為が
疑われ、支給されなかった。
また、受領した3万数千円については
返納を求められ、返納した。
この事案では、時間外勤務を実際に
行ったかどうかの事実関係を争われ
裁判所は、時間外勤務を行った事実
はないと認定しました。
それを踏まえ、裁判所は懲戒免職処分が
裁量権の逸脱又は濫用に当たらないと
判断しました。
この原告は、公務員、課長補佐という
立場でありながら、上司の印鑑を無断
使用した悪質な事案であり、
被害は少額であり、すでに返納している
とはいえ、金銭の搾取であり、行為の
悪質性が認められれば、懲戒免職・懲戒
解雇が有効になると理解できます。
ただ、本件では不審に思った被告側が
原告が時間外勤務を行っていないこと
を記録し残していました。
これが、原告の主張する時間外勤務を
否定する証拠(根拠)になったわけ
です。
逆に言えば、相手の不正(横領、搾取)
を裏付ける証拠(根拠)がなければ
難しかったかもしれません。
不正の疑いが発覚した場合、しっかり
調査し、不正を裏付ける証拠(根拠)
集めが重要だし、それも文書で
残す事が必要だということです。