「鳥の目、魚の目、虫の目」で課題解決?
多くの会社で、人を採用するときに身元保証書を
取られるところあると思います。
万が一のためというのが本来の目的でしょうが、
むしろ緊急連絡先として扱われているの実情
だったりするのではないでしょうか?
もちろん、身元保証書を取らないという会社が
あるのも事実です。
ところで、民法改正の話は、耳にされている方が
多いと思います。
121年ぶりの大改正で、特に債権関係(債権法)が
大きく見直されました。
中でも人事労務関係に関わるものは、当該改正に
よって、主に消滅時効、身元保証、法定利率・
中間利息控除等の改正です。
特に消滅時効については、かなり話題となりました。
現行2年が5年(当面3年)に。
未払い残業代請求額が増えるのは当然ですし、
それが、事業に与えるインパクト(現行の5割増し)
も無視できません。
ある業界関係者によれば、2年が3年になることで
採算ラインに乗るので、積極的に関わる事務所が
増えるだろうという恐ろしい話も耳にしました。
また、ユニオン等にも言えることですが・・・・
これについても、いずれ書こうと思ってますが、
今回は身元保証書について書きたいと思います。
何がどう変わる?
2020年4月より、身元保証書に賠償額の上限を定める
必要があります。
つまり、会社と身元保証人の間で、賠償額の合意が
必要になります。また、それがなければ、その契約
自体が無効となります。
雇用契約の際に身元保証書をもらう目的は?
おおよそ三点に集約されると思います。
①採用者の身元の確認とその証明
②働く者として適正確認とその証明
③損害発生時、連帯して損害賠償してもらう確認と
その存在の証明
業種によって変わりますが、概ね①の意味合いと
して取り扱っている会社が多いと感じます。
③についてもキチンと書面上に明記している会社も
もちろんあります。
たとえば、「・・・身元保証人として本人と連帯して
誠実に賠償の連帯責任を負うことを誓約いたします」
とか
ただし、その場合でも金額(賠償額)は記載されて
いなかったのではないでしょうか。
普通に考えれば、その従業員が賠償責任を負ったに
せよ、身元保証人に賠償額をいくら請求できるか、
あやふやだったわけです。
身元保証の制度はあるが形骸化し、従業員自身も
事の重要性や義務・責任の範囲を理解してないことが
ほとんどではないでしょうか。
会社としてどんな対応が必要か?
この変更は、2020年4月からなので、これ以降に入社
する従業員に適用されます。
(あくまで、身元保証書の提出を求める場合ですが)
すでに、対応されている会社も多いとは思いますが、
もしまだであれば、早急に対応されることをお勧め
します。
では、具体的には、以下の二点になります。
a)賠償額を決定し、それを記載する運用に変更する
b)身元保証書を提出させる制度自体をやめる
そもそも結果的に緊急連絡先を収集することが実際の
使用医目的になっていたなら、身元保証人の提出を
求めることをやめるのも選択肢の一つです。
その場合は、別に緊急連絡先を報告させる書面を
作ることは必要でしょう。
身元保証人制度を続けるためには?
なにより、まず賠償額の上限を決定する必要があります。
法律上、上限額は決まってなく、会社側で自由に設定
することができます。
ただし、相手があることですから、賠償額があまりに
高額であれば、身元保証人になってくれる人が、
そもそもいるでしょうか?
また、逆に少額であれば、そもそも身元保証してもらう
必要あるの?ってことになります。
したがって、設定する場合は、現実的に支払可能で、
かつ少額すぎない、現実味のある金額にする必要が
あるでしょう。
いずれにせよ、賠償額が明記されるわけですから、
身元保証人に対する説明責任が重要になります。
「どんなときに請求さるのか?」
「契約解除はどんな場合できるのか?」など
つまり、今後は双方のリスク回避ために、会社側が
しっかりと説明責任を果たすことが必要になります。
もちろん、対面で説明できれば、それに越したことは
ありませんが、それも難しいのではないでしょうか?
たとえば、
それらの疑問を解消してもらうための書面「責任範囲
と契約解除」を用意し、身元保証人に渡す運用を考える
必要があるでしょうね。
ところで、本当のところの賠償額の決まり所は?
最終判断は、裁判所が以下四点を総合的にみて判断します。
1.身元保証人になった経緯
2.身元保証人が、本人の仕事内容や勤務場所等を把握してたか
3.会社側の監督責任
4.会社と従業員の過失割合
ですから、たとえば、従業員の仕事内容等が変わった場合は、
身元保証人に通知することが必要になるでしょう。
ともかく、今まで以上に身元保証人に対する説明責任が生じる
ことは否めないですね。
会社がやることのおさらい
万が一の時のトラブル防止を主目的として「身元保証人制度」
を運用すると決めたなら、今までのような形骸化しないように
しなければなりません。
そのための4つのステップは、
①身元保証制度の抜本的な見直し
②賠償額の上限額を検討し、設定する
③身元保証人への説明書を作成し渡す
その上で、身元保証書を提出してもらう
④今後、採用時に正しく運用していく
民法改正に合わせた正しい運用体制を
つくることによって、会社側のリスク
回避が重要なテーマであるこには異論
を挟む余地はありません。
しかし、根本的にもっと重要なことは、
会社と従業員の信頼関係を深め、双方が
同じベクトルを持って、目的に向かって
突き進んでいくことが重要ですよね。