AIに個人情報を入れていいか迷ったら|名前を「Aさん」に置き換えてから頼む
メールの返信の下書きや、表の整理をAIに任せてみたい。でも、どこまで任せてよいのかが分からず、手が止まっている。最近は、文章を書くだけでなく、パソコンの中のファイルを開いたり、メールを送ったりといった操作まで自分で進めるAI(「AIエージェント」と呼ばれます)も出てきて、余計に迷う方もいると思います。
10月2日には Apple が、Mac の中のほぼすべてのファイルを読める特別な許可について、今後は利用者がはっきり操作したときにしか与えられないよう、制御を足すと発表しました(始まる時期はまだ示されていません)。理由の1つとして「AIエージェントがより有能で自律的になるにつれ、この水準のアクセスに伴うリスクは大きく増していく」と書いています(英語の発表を日本語にしたものです)。
出典:Apple Developer「Updates to Full Disk Access in macOS」(2026年10月2日・英語)https://developer.apple.com/news/?id=p6zjojqw
結論から書きます。任せる範囲は「何をさせるか」より先に、「どこに触らせないか」で決めます。 決めるのは3つ。見せないデータ/下書きまでにする操作/人が最後に確かめる所です。ここが決まっていれば、道具を替えても同じ線を使い回せます。
1. 見せないデータを、先に線引きする
お客様の氏名や連絡先、従業員の給与や健康の情報、取引先との契約の中身、パスワード。こうしたものをAIに渡せば、その中身をサービスの側に預けることになります。
判断の分かれ目は「社外の人に見せてよいか」です。迷ったら見せない側に入れます。名前を置き換えてから頼むやり方は、以前のコラム「AIに個人情報を入れていいか迷ったら」に書きました。
ただし、何もかも禁止にはしません。全部を止めると、結局誰も使わなくなるからです。データで決めるのは「見せないもの」だけ。 それ以外は使ってよい、としておくほうが、現場は迷いません。
2. 外に出る操作・取り消せない操作は、下書きまで
メールの送信、SNSへの投稿、支払い、ファイルの削除、見積書の送付。外に出ていく操作と、取り消せない操作は、AIに任せるのを「下書きまで」にします。送信や削除のボタンは人が押します。
仮に、問い合わせメールへの返信をAIに任せるとします。下書きを作らせるところまでなら、内容が違っていても送る前に気づけます。自動で送るところまで任せると、間違いは相手の受信箱に届いてから見つかります。
線を引く目安は「あとから取り消せるか」です。取り消せない操作は、人の手に残します。
3. 最後に確かめる所と、確かめる人を決める
AIは、もっともらしい間違いをします。だから、AIが作ったものを人が確かめる所を、先に決めておきます。金額、日付、相手の名前、納期や条件といった約束ごとです。
ここで決めるのは「どこを」だけではなく「誰が」です。「みんなで見る」としておくと、結局誰も見ていない、ということが起こりがちです。
反対に、全部を確かめようとはしません。全部を人が見直すなら、任せた意味がなくなります。確かめる所は、間違えたときに困る所に絞ります。
決めた線は、前に作った紙1枚に書き足す
以前のコラム「AIが社内に定着しない理由」で紹介した紙1枚(入れてはいけないもの・使ってよい道具と仕事・迷ったときに聞く人)に、「下書きまでにする操作(送る・払う・消す)」と「確かめる所と、確かめる人」の2行を書き足し、使う人が見られる所に置きます。見せないデータは、その紙の「入れてはいけないもの」と同じ行です。新しいAIの道具を試すときも、この紙に照らせば、設定の画面が道具ごとに違っても判断はぶれません。
システムを作る仕事では、使う人に渡す権限(合鍵のようなもの)を、仕事に必要な部屋の分だけにするのが基本です。AIに任せるときも、考え方は同じです。
迷ったら、まずは触らせない側に置いて始め、慣れてから少しずつ広げます。広く渡してから後で狭めるより、狭く始めて広げるほうが安全です。一度見せたデータは、あとから消しても取り戻せないことがあるからです。
まとめ
- 見せないデータを先に決める。迷ったら見せない側に
- 外に出る操作・取り消せない操作は、AIには下書きまで
- 確かめる所と確かめる人を決め、間違えたら困る所に絞る
宮崎の小さな会社でも、大きな会社でも、この順番は変わりません。AIに何を任せるかは、触らせない場所を決めてからでも遅くありません。


