交通事故裁判(訴訟)の流れ~だいたいのスケジュール~
「ガシャン」という衝突音の瞬間から解決への道のり
1 適切な解決へは,最初の動きが大切
交通事故が発生して,最初に来るものは,何でしょう?
相手の運転に対する「怒り」,自身の運転に対する「後悔」,後の予定やこれからのことについての「心配」,「不安」。。。などなど
様々な感情が出てくるでしょうが,一番大きいのは,事故という緊急事態に対する「戸惑い」と「混乱」ではないでしょうか。
しかし,事故が起きた瞬間から,適切な解決へ向けての勝負は始まっています。
事故後の混乱した状況でも,適切に対応しないと,最終的に解決する際,自身の思いとは異なる「不利」な形で解決されてしまう可能性もあります。
よって,事故が起きれば,「事故が起きた瞬間から解決に向けての勝負が始まっている」という気構えで適切に対応できるようにしましょう。
以下,そのポイントを確認していきましょう。
2 必ず,警察に届け出て,交通事故証明書が出るようにしましょう。
まず,第一にすることは,警察へ連絡して,事故の届けをすることです。
「警察へ届け出るのは当たり前」と思っていられる方も多いでしょうが,いざ事故の場面にたつと,「時間がないから。」とか,「怪我はないから。」とか「警察に届けなくても,きちんとするから。」という言葉に惑わされて,届け出をしない場合もあります。
警察へ届け出がないと,交通事故証明書が発行されません。(後日警察に届け出をしても,警察が「交通事故」として受け付けてくれないケースもあります)
交通事故証明書は,事故の発生(日時・場所)とその事故の当事者,簡単な事故の発生態様が記載されたもので,交通事故証明書があれば,少なくとも,事故の発生自体は,ほとんど争いの余地はなくなります。
一方,交通事故証明書が存在しない場合は,相手から,事故の存在自体や自身が当事者であるかが争われる可能性もあり,それらを相手に全否定されると,事故が発生したこと,そして,その事故の相手がどの人であるかということから立証する必要が出てきます。
余計な手数をかけないためにも,警察への届け出は,必須です。
3 警察には自身の主張をきっちりと伝えましょう。
世の中はおかしいもので,「正しいことを言う」人の主張より,「声が大きい」人の主張のほうが通りやすいという傾向があります。
交通事故の場合は,当事者同士,対立する関係にありますので,「声が大きい」人の主張が通りやすいという傾向は,顕著に出るような気がします。(そのことは,過失割合のみに限らず,最終示談の時の金額の調整でも言えます。)
あまり言いすぎると問題になるかもしれませんが,特に,物損事故の警察の対応というのは,とてもいい加減です。
なぜなら,物損事故というのは,警察にとり,「事故の発生」を把握し,そこに,怪我人があるかどうかを確認するだけの手続きとなるからです。
よって,警察が来ると,まず,怪我人の有無は確認されますが,当事者が「怪我がない」と言った瞬間に,警察の対応はコロッと変わります。
つまり,事故の当事者や事故の発生状況等の確認を簡単に10分くらいだけして,「後は双方で民事で解決するように」と言い渡して,事故の処理を終えてしまいます。
では,警察には何を言っても無駄なのでしょうか。
答えは「いいえ」です。
つまり,最初に当事者が警察に言っていた言葉は,後から警察から「当事者の事故直後の発言」として出てくることもあります。
それらは,事故直後の発言であるので極めて信用できる証拠と判断されることが多く,裁判になると,非常に有力な証拠となります。
また,交通事故証明書の当事者欄には,「甲」当事者と「乙」当事者の区別があります。
この「甲」と「乙」の違いというのは,一概には言えないのですが,一般的には,「甲」のほうが過失が大きいとされており,後から,交通事故証明書を見た場合に,「甲」=「過失が大きい人」と印象づけられてしまいます。
よって,警察には,きちんと事故の発生状況を主張し,自身を「乙」当事者に記載してもらうよう努力してください。
4 相手の連絡先を確認し,ある程度の話をきちんと話をしましょう。
相手の連絡先がわからないと,後から,警察に問い合わせをしても,連絡がとれない場合があります。
よって,相手の連絡先の確認は,必ずしましょう。
次に,事故の発生状況につき,どこまで相手と話をするかですが,ここはなかなか難しいです。
よく,相手側に「自分が全部悪いから,すべて弁償する」と一筆書かせたと説明される依頼者がいますが,交通事故直後の混乱した状況で,そのような文書を書かせても,後から相手に否定されることはしょっちゅうあります。
また,その文書の効力も裁判で争われると,あまり効果的ではないとも言えます。
つまり,その文書だけで,文書を書いた相手が「100%悪い」とか「全部弁償すると書いてあるから,その約束を守りなさい」とまではなかなか認定してもらえません。
もちろん,事故直後,相手側が自身の過失が大きいことを認めていたという意味の証拠として有力に使えるという点では意味のないものではありませんので,相手に自身の過失が大きいことを認めさせれる文書には,それなりの意味はあるかと思います。
ただ,交通事故の後,いきなり紙と筆記用具を持ち出して,「何か書け」というのもなかなか大変でしょうから,そのような場合は,事故の状況につき,相手と詳しく確認する際に,相手の発言を携帯などで録音しておくことをおすすめします。
交通事故に限らず,後日の争い防止のため,相手の発言を録音するように私が依頼者にアドバイスをすると,「相手との会話を勝手に録音してもよいの?」「盗聴などにあたらないの?」という質問がよくあります。
しかし,「盗聴」とは文字通り「盗み聴く」ことであり,会話の当事者がその会話を録音することは,少なくとも「盗聴」にはあたりません。
また,状況によっては,二人の会話を録音することに問題が発生する場合もないことはないでしょうが,交通事故後の会話のような状況では,会話を録音することには,何の問題もありません。
5 任意保険契約があれば,契約する任意保険会社に連絡しましょう。
「加害事故」の場合は,すぐに保険会社に連絡されるでしょうが,自身が「被害事故」と認識されている場合は,保険会社に連絡をしないこともあるでしょう。
しかし,自身が「被害事故」と思っていても,後日,自身の過失があるということになり,その支払いに自身の保険を利用しないといけない場合もあります。
また,被害弁償で相手ともめた場合,解決に向けてのの交渉や最悪の場合裁判をするため,弁護士に委任することが必要な場合もあります。
そんな時は,「弁護士費用特約」をつけた保険契約の場合,自身の負担する金額なしで,弁護士を入れることが可能になります。
よって,念のため,すべての事故につき,自身が契約する任意保険会社に連絡しましょう。