聴くにこだわるようになったのは

太田英樹

太田英樹

テーマ:コーチングコミュニケーション

もう20年以上前になりますが、特別養護老人ホームで働いていたことがあります。

20代後半だった私ですが、その特養の職員さんは開所まもない施設で、私より若い職員さんがほとんど。

着任前から、「経験者が来る」といろいろ言われていたそうで、
初日から、「いろいろ教えてください」と言ってくれる人もいれば、
「経験者なんだから、これくらいできますよね」と最初から喧嘩腰の人もいたりと、
こちらもかなり戸惑いました。

今でも忘れないのは、
初日の午後に、ちょうどその特養の月に一回のカラオケの日で、2フロアの入居者様を一堂に集めて100人のレクリエーションがありました。

その誘導をしている最中に、「経験者なんですから。レクの司会くらいできますよね?お手本見せてください」と、無茶振りをされたこと。

入居者様のことはもちろん、職員の名前さえわからない初日にいきなり司会をやらされる羽目になりました。

レクリエーションの目的から考えれば、入居者様の心身状況もわからないので断ることもできたと思いますが、
私もムキになり、「そっちがそうくるなら、とことんやってやる」と、引き受けてしまった。

やりました、
相手の性格も何もわからないのに、スタッフいじり、入居者様いじりの連続で大爆笑のレクを。

と、まぁ、ここまでは余談で、
その特養で、初めて夜勤を経験したんですが、

特養で頑張っておられる方には申し訳ないんですが、私は本当に夜に弱い。

日ごろは、「入居者の笑顔優先。どんなに忙しくても、入居者の前を素通りしない」というのが私のポリシーで、
日勤で仕事をする時は、入居者様一人一人に一声かけたり、笑わせたりして、コミュニケーションをとるようにしていましたが、
夜勤だと、そもそも静かにしなきゃいけないですし、眠っている入居者様のオムツ交換にまわるときも、眠気や疲労との戦い。

そんな中、ある女性入居者様のオムツ交換をしているとき、その方が
「コロしてくれ」
と言ってきました。

当時の私は、意味がわからず聞き流しました。

2時間後にまたオムツ交換に行くと、また同じことをおっしゃる。

「バカなこと言わないで、眠ってください」と返して、また部屋を出る。

3回目もまた・・・

ここで、ようやく私も考えました。

なぜ、こんなことを言うんだろう。

介護の仕事をしている私にとっては、高齢者が加齢や病気によって介助が必要な身体になって、私たちがお世話をするのは当たり前でしたが、

高齢者にとっては、当たり前じゃない。

何歳になっても、異性に下半身の霰もない姿を見られるのは恥辱であり、イヤイヤながら身を委ねてくれているだけ。

それに気がついたとき、
「私たちの仕事は、オムツ交換をすることや、入浴介助をすることじゃない。
高齢者お一人お一人のこれまでの人生を受け入れて、
これからも生きていく活力を、希望をもってもらうこと」

「そのために、頭や心にある言葉、言葉にならない言葉も含めて全部出してほしい」

そう思いました。

だから、「聴く力」「傾聴力」を上げるために心理学を学び、心理カウンセラーの民間資格をとりました。

臨床心理士や公認心理士の方からすれば、資格とは言えない資格ですが、あくまでも実践力を身につけることが目的だったので、それで良かったと思っています。

皆さんが当たり前のようにやっている「人の話を聴く」という行為。

それが、表面上の言葉を聞いているのか、言葉の奥にあるものまで聴いているのか、どちらでしょう?

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太田英樹
専門家

太田英樹(コーチングコミュニケーション講師)

株式会社インサイトハウス

介護・福祉業界を中心に人材育成と事業支援で多くの実績あり。アドラー心理学ベースのコーチング研修により、社内コミュニケーションを円滑化のみならず、人材定着率や利用者満足度を高め、事業の成長につなげます。

太田英樹プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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