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コミュニケーション力を高めるコーチングで介護現場を改善に導く

介護業界をコーチングコミュニケーションで幸せにするプロ

太田英樹

太田英樹 おおたひでき
太田英樹 おおたひでき

#chapter1

参加者のビフォーアフターを明確にした「伝わる研修」で組織を活性化

 介護で大事なのは寄り添うこと。でも、どうすれば実践できるでしょうか。「インサイトハウス」の太田英樹さんは、介護・福祉業界に特化し、「コーチングコミュニケーション」をテーマに研修を行っています。

 太田さんは30年近く介護業界に携わり、現場の実情に精通。「経営者は利益を課題に挙げますが、問題の根本は、高い離職率の原因とされる人間関係にある」と語ります。

 研修では、上司と部下、同僚との関係づくりにコーチングや心理学の要素を取り入れ、コミュニケーションスキルを養います。コーチングでは、自分の価値観で相手を判断するのではなく、「相手の関心」に意識を傾けることがポイント。同じ目線に立って話を聴くことで、相手は「寄り添ってくれた」と感じます。

 実践法の一つが、〝通りすがり感謝〟。「例えば、スタッフ間で『おはよう。昨日は手伝ってくれて助かった』など、あいさつに一言加えます。時間に追われながらもモチベーションは上がり、組織の生産性も向上します」

 上司と部下では「1on1ミーティング」の導入を提案。「1on1」では上司が聴き役に徹し、部下と1対1で対話を重ねます。ロールプレーイングを交えた体験型研修で、管理職にコーチングの理解を深めます。

 太田さんのポリシーは、「伝える」ではなく「伝わる」研修。事前に、経営者や管理職から社員らの働きぶりや仕事に対する思いなどをヒアリング。それぞれのタイプに合わせた行動変容へと促します。半年から1年の期間を終える頃、「スタッフ同士の批判やグチが大幅に減った」「社内の雰囲気が明らかに良くなった」などの評価が寄せられるそう。

#chapter2

行政の実地指導対策など、介護事業者向けのコンサルティングも

 太田さんは、研修とあわせて、介護事業の経営コンサルティングも手掛けます。サービス付き高齢者向け住宅が制度化された2011年には、介護ビジネスに参入する中小企業が増加。施設の立ち上げから運営まで、これまで約50の事業者をサポートしました。

 近年ニーズが多いのは、行政の実地指導に対応する支援です。自治体は、サービス提供記録や利用料の明細書といった書類をもとに、介護保険法に基づいた運営ができているかをチェックします。
 「日々の忙しさに追われる中、書類の不備で行政指導を受ける事業者は少なくありません。受領した何千万円もの介護報酬の返還を求められる場合もあるため、普段から備えておくことがリスク回避に、ひいてはサービスの質を高めます」

 太田さんが介護業界に入ったのは学生時代から。高齢者福祉施設でアルバイトをしながらも、「このままでいいのかな」と進路に悩んだそう。その頃、誰とも一言も話さない90代の利用者を担当。こちらの声掛けに返事もなく、仕事の意味を見いだせなくなったといいます。そんな状態が半年続いたある日、自宅に迎えに行くと「毎朝あんたの笑顔を見るのが楽しみや」とぽつり。「自分が役に立っていると実感でき、こうした喜びを広く共有したいと思うようになりました」

 その後、20代で施設長を任されますが年上の部下とうまくいかず、業務が回らなかったことも。何とか改善しようとスタッフ向けの教育プログラムを構築したことが、講師業の始まりでした。

太田英樹 おおたひでき

#chapter3

コーチングやアドラー心理学など、学びを現場に応用

 太田さんは、自身も学びながら研修内容をブラッシュアップしています。初めて外部から依頼されたセミナーは、「認知症ケア」がテーマでした。「認知症の方に無理強いするのではなく、同じ目線に立って何を望んでいるか考えよう」という内容に、「机上の空論だ」と会場はブーイングの嵐に。
 「当時、利用者に寄り添うという言葉すら一般的ではありませんでした。思いが伝わらないもどかしさから、コーチングを勉強しました」

 大きな影響を受けたのが、アドラー心理学だとか。「ありのままの自分を受け入れる〝自己受容〟により、〝他者信頼〟〝他者貢献〟が実現できるという理論に共感しました。介護の世界では、自己犠牲の精神論が少なからずあります。働く人が耐えるのではなく、満足を感じる職場づくりは、人材の定着率を上げます。それが利用者満足につながり、選ばれる施設になると強調したいですね」

 太田さんのコミュニケーション術は家庭でも役立つのが特徴。研修に参加した子育て中のママから「娘が自分の殻に閉じこもりがちだったけれど、本人が興味のあることに同じように関心を持つようにしたら、自ら話してくれるようになった」と涙ながらに感謝されたことも。「直接効果をお聞きすると、その方の人生に貢献できたとうれしくなります」と顔をほころばせます。

 「スタッフ、経営者双方がハッピーになれる未来図を描き、理想の組織を導くことが私の役割です。介護職の経験を生かし、現場に浸透するビジョンをご提案します」

(取材年月:2022年3月)

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専門家プロフィール

太田英樹

介護業界をコーチングコミュニケーションで幸せにするプロ

太田英樹プロ

コーチングコミュニケーション講師

株式会社インサイトハウス

介護・福祉業界を中心に人材育成と事業支援で多くの実績あり。アドラー心理学ベースのコーチング研修により、社内コミュニケーションを円滑化のみならず、人材定着率や利用者満足度を高め、事業の成長につなげます。

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