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拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

【宗教法人の管理・運営(5)】 -目的-

2015年6月17日 公開 / 2021年6月8日更新

テーマ:寺院の管理・運営

コラムカテゴリ:法律関連

(目的)
第3条 この法人は、○○宗の教義を広め、儀式行事を行い、及び檀信徒を教化育成することを目的とし、その目的を達成するために必要な業務を行う。
宗教法人
*規則記載事項(法12条1項1号)であり、登記事項(法52条2項1号)である。

《目的》

「宗教法人」とは、宗教法人法によって法人格を与えられた「宗教団体」をいうが(法4条2項)、この「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び 信者を教化育成することを主たる目的とする団体をいうとされる(法2条)。
したがって、規則に定める目的には、「宗教の教義をひろめること」「儀式行事を 行うこと」「信者を教化育成すること」の3つが必ず含まれていることになる。

「宗教法人は、法令の規定に従い、規則で定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」とされている(法10条)。
したがって、この条項が宗教 法人の権利能力の範囲を定める。この目的の範囲内で、代表役員が法人の代表として行った行為により、宗教法人に権利義務が帰属することになる。ただし、裁 判では、契約の安定性を重視して「目的の範囲」を広く解釈する傾向にある。目的の範囲外だから無効ということに簡単にはならない。

通常この目的に不法行為は含まれないから、例えば宗教法人が詐欺行為を行ってもそれは目的の範囲外の行為であり、宗教法人が責任を負うことはないのではないかという疑問が生じうる。
しかし、「宗教法人は、代表役員らその他の代表者がその職務を行うにつき第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定され (法11条1項)、「職務を行うにつき」加えた損害については宗教法人も責任を負うことになる。もちろん詐欺を行うことは「職務」ではないが、「職務を行うにつき」加えた損害かどうかは行為の外形から判断される(大判大7・3・27)。

「職務を行うにつき」加えた損害でなくても(法11条2項の「宗教法人の目的の範囲外の行為に因り第三者に損害を加えたとき」は、そのような意味である。)、その行為をした代表役員その他の代表者及びその事項の決議に賛成した責任役員、その代務者又は仮責任役員は、連帯してその損害を賠償する責任を負う(法11条2項)。
ただし、これらの者は共同不法行為者として連帯責任を負うのが通常であるから、法11条2項は特別なことを定めているわけではない。

《Q&A》

質問

科学的に効果を証明できない加持祈祷を行って布施を受け取ることは詐欺ではないか。

回答

祈祷師が自分の祈祷にまったく効果がないと信じているにもかかわらず、すぐれた効果があるように話し、効果がなければ祈祷料を支払わないことを知っていた場合には、詐欺にあたると考えられる。なお、その「効果」は科学的に証明される効果である必要はない。

たとえば合格祈願のお守りなどは、科学的に証明できる効果はないかもしれないという暗黙の前提を事前に提示した上、それを了解しながらそれでも持っていたいという人に売っていると解釈でき、このような場合に詐欺にならないことは当然である。

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