防犯カメラの設置がプライバシーを侵害すると判断された例
紛争の概要
Xは、駐車場を経営する会社で、いわゆるコインパーキング方式の無人駐車場を経営しています。
このコインパーキングには利用方法を表示した看板があり、「不正利用の場合は、罰金として5万円頂きます。」と書かれていました。
Yは、このコインパーキングに車を駐車し、4時間ほどしてから出庫させました。この間の駐車料金は1000円でした。
Xは、コインパーキングの不正利用であるとして、Yに対し違約金5万円と、弁護士費用相当額5万2500円を請求しました。
裁判所の判断
Yは駐車料金を支払ったか
まず、Yは、駐車料金1000円を支払ったことは、フラップ板による障害を受けずに車両を出庫させたことから明らかである、それが精算機の支払結果に反映していないのは精算機の故障によると主張していました。
この点については、フラップ板を無理に乗り越えた状況はうかがえないが、Y車両の車高であればフラップ板による障害を受けずに出庫させることができる、精算機が故障していたとは認められない、ビデオ映像によって料金を投入した事実を認めることはできない、などとしてYの主張を排斥しました。
違約金の合意の有無と有効性
Xは、Yとの間の駐車場利用契約において、上記看板に記載されたとおりの違約金5万円の合意をした、不正利用があった場合の調査費用等を考慮すれば相当な金額である、と主張していました。
これについて判決は、上記看板の文字はこのコインパーキングの利用者にとって容易に判読できるものであるから、Xは、不特定多数の顧客に対し、5万円の違約金の定めを含む利用契約の申込みをしていて、Yがこれを承諾して契約を締結したのであり、この違約金の定めはXとYとの間の契約に含まれていると判断しました。
また、不正利用があった場合に、利用者を特定して料金等を請求するためにXが要する支出を損害と予想して損害賠償額の予定を定めたものであり、任意規定による場合に比して消費者の義務を加重するものに当たらないから、消費者契約法10条により無効であるとは言えないし、民法90条に反するものではないと判断しています。
不法行為の成否と損害額
Xは、Yが料金を支払わずに出庫したことは、Xの駐車料金支払請求権ないし駐車場の正常な営業活動を侵害する不法行為である、訴え提起を弁護士に委任して弁護士費用5万2500円の支払約束をしたことにより、この費用相当額の損害を被った、Xは損害計算書記載のとおり9万5490円の損害が発生しているから、Yに対し、そのうち5万円を請求する、と主張しました。
この点について判決は、不法行為の成立を認めたものの、弁護士費用については、Xは顧問弁護士に依頼して違約金を回収する方法を恒常的にとっていて、本件着手金がYの不法行為と相当因果関係のある損害と認めることはできないと結論しました。
雑感
違約金の合意があったとして5万円の請求を認める一方で、不法行為を理由として弁護士費用相当額の損害を認めるのは、あり得ないことではないにしてもバランスが悪い感じがしますので、結論は妥当かなと思います。
しかし、顧問契約を持ち出して着手金の相当因果関係を否定するのは、何かすっきりしないものも感じます。
参考条文
民法
(賠償額の予定)
第420条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
3 違約金は、賠償額の予定と推定する。
消費者契約法
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第10条 民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。