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拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

もしブロック塀が倒れてケガをさせたら責任は?

2021年6月9日 公開 / 2023年4月6日更新

テーマ:寺院の管理・運営

コラムカテゴリ:法律関連

遺言
地震でブロック塀が倒れ、小学校4年生の児童が下敷きになって亡くなるという痛ましい事故がありました。
境内や貸家の周囲にブロック塀を設置されているご寺院も多いのではないでしょうか。
もしブロック塀が地震で倒壊したら、その責任はどうなるのでしょうか。

土地の工作物

ブロック塀ってふだん何気なく見すごしていますが、注意して見るとあちこちにたくさんあるのに気が付きます。
けっこう古いのもあるようです。
一見するとブロック塀に見えないおしゃれな塀でも、ブロック塀の表面にプレートを貼ったり塗装をしたものが多いですね。

ブロック塀が倒れた場合って、法律で何か決まっているのでしょうか。

ブロック塀は、民法上「土地の工作物」にあたります。
そして土地の工作物については、民法717条に規定があります。

これには、ブロック塀の「設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたとき」は、まずブロック塀の占有者が、被害者に対して損害を賠償しなければならないとされています。

占有者の責任

ブロック塀の占有者とは、ブロック塀を直接に支配していて、損害の発生を防止できる立場にある人をいいます。

たとえば、貸家の住人は、この占有者にあたると言えるでしょう。
家を借りている人がいたら、原則、その人の責任になるということです。

しかし、「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」は、責任を免れることができます。

たとえば、家を借りている人がブロック塀の補強や修理まで行うという賃貸契約になっていれば、住人が責任を免れることはできないでしょう。
しかしそのような契約でなければ、ブロック塀の強度が不十分であったことの責任を、住人に負わせることはできないと考えられます。

所有者の責任

占有者が責任を負わないときはどうなるのでしょうか。

ブロック塀の占有者が責任を免れる場合、ブロック塀の所有者が責任を負うことになります。
その場合、所有者が責任を免れることはできません。

ブロック塀が手抜き工事が原因で倒れたとしても、まず所有者が被害者の損害を賠償し、それから所有者が工事業者に求償するという関係になります。
その時に業者が求償に応じられるような状態でなかったら大変です。

設置の瑕疵

「設置又は保存に瑕疵がある」と言えるのはどういう場合でしょうか。

これには、建築基準法施行令で定められた基準が一応の参考になると考えられます。
例えば高さは2.2m以下、厚さは15cm以上、などと決められています。

これを満たさず事故が起きた場合,責任を免れることは難しくなってくるのではないでしょうか。

では、その基準をしっかり守ればいいかというと、必ずしもこれさえ守っていれば大丈夫と安心はできません。
軟弱地盤と指摘されているような場所では、相応の対処が求められることもあるでしょう。
また古いブロック塀で、設置当時の基準を満たしていたとしても、それで免責されるわけではありません。

刑事責任

また、過失致死傷罪として刑事責任を問われる場合があります。

ブロック塀の強度が十分ではなく、倒壊によって人を死傷させる可能性を認識できたのに、補強や修理をせず放置した,というような場合です。
腐食が進んでいるなどの指摘があったのに放置すれば、過失が認められやすいでしょう。
適切な対策を
安全のためにブロック塀を建て直すという意識は、これまであまり一般的でなかったように思います。
しかし、ブロック塀の事故は報道で大きく取り上げられた経緯があります。
とくに通学路にあたっているような場合には、今一度点検されてはいかがでしょうか。

この記事を書いたプロ

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