【2020年著作権法改正】ダウンロード違法化の拡大
著作権者の許諾を得ないでマンガや雑誌がウェブにアップロードされ,漫画家や出版社の売上に打撃を与えたという事件が相次ぎました。
無断アップロードは写真集や専門書にまで及んでいます。
とくに,違法コンテンツへのアクセスを誘導するリーチサイトが被害を広げていると言われていました。
そのため,リーチサイト対策とダウンロード違法化の拡大を目指す著作権法改正なされました。
リーチサイト
著作権者に無断で著作物をアップロードするのは、従来から送信可能化権を侵害する違法行為でした。
自分でサイトを運営して違法コンテンツをアップロードすると、運営するサイトからアップロードした侵害者が特定できてしまいます。
そのため違法行為者は、オンラインストレージを利用して違法コンテンツをアップロードし、リンク先情報を別のサイトに表示させるようにしていました。
そのリンク先情報を表示したサイトを「リーチサイト」と呼んでいます。
「leech=ヒル」というのがもともとの意味で、他人の財産を食いものにするという意味でも使われるそうです。
他人の著作権を食いものにするサイト、ということですね。
オンラインストレージは、ダウンロード速度やダウンロード回数の制限を解除するための課金で収入を得ます。
そのため、ダウンロード回数の多い人気ファイルをアップロードした利用者に報奨金を支払って、課金を増やそうとします。
そして、その報奨金を目当てに人気作品の海賊版が競ってアップロードされるようになるわけです。
オンラインストレージの運営者は何がアップロードされたか知らないという建前になっていますから、アップロードされた違法コンテンツのリンクを表示するリーチサイトが重要になります。
そしてリーチサイトも、アクセスが増えるとアフィリエイト収入が増えることになります。
それでますます海賊版のアップロードが増えていく構造になっています。
著作権者に無断で著作物をアップロードするのは違法行為になります。
しかし、アップロードした人との共謀がなければ、リンクを提供しただけ人に法的な責任を問うのは困難です。
そのため、リーチサイト対策が必要とされていました。
著作権法を改正して、リーチサイトの運営やリーチアプリの提供、リーチサイトに違法コンテンツのリンク情報を掲載することを、それぞれ規制の対象にしました。
リーチサイト対策
リンク情報の掲載については、リーチサイトやリーチアプリを利用して、違法コンテンツ(侵害著作物)の利用を容易にする行為が、故意・過失を条件に、著作権侵害行為とみなされることになりました(第113条第2項)。
これには刑事罰(3年以下の懲役,300万円以下の罰金)も規定されています(第120条の2第3号)。
ただし親告罪とされていますので(第123条第1項)、告訴があって初めて刑事責任を問えることになります。
「リーチサイトやリーチアプリを利用して」という要件があります。
では、どのようなのがリーチサイトやリーチアプリになるのでしょう。
これについては、リンクの利用を促す表示がされているとか、リンクが強調されているなどのように、利用者を違法コンテンツに殊更に誘導するために作りこまれたウェブサイト(第113条第2項第1号イ)や、違法リンクが多数投稿されていて主として違法コンテンツを利用するために使われている投稿型のウェブサイト(同号ロ)が、リーチサイトにあたると定義されています。
そして、そういうアプリがリーチアプリになります(同項2号)。
サイト運営者やアプリ提供者には、刑事罰(5年以下の懲役,500万円以下の罰金)が規定されています(第119条第2項第4号,同項第5号)。
これも親告罪とされています(第123条第1項)。
民事的には、サイト運営者やアプリ提供者が、違法リンクが書き込まれているのを知っていながら、あるいは知ることができたのに、可能な削除をせずに放置する行為が著作権侵害とみなされます(第113条第3項)。
ツイッターなんかに違法リンクが書かれている場合はどうなのでしょうか。
そういうツイッターのアカウントも、違法リンクが大量に書き込まれていれば「ウェブサイト」に該当するように政令を定める予定だと言われています。
そういう場合、ツイッター社自体の責任はどうなるのでしょうか。
削除要請があるのに正当な理由もなしに長期間放置しているような場合は刑事責任を問われる可能性がありますが(親告罪)、そうでなければ責任を負いません(第119条第2項第4号)。
施行日は令和2年10月1日です。
現代ではインターネットによる情報の流通が重要ですから、刑事罰の適用についてはインターネットの利用が不当に制限されないように配慮しなければならないと附則に定められました(附則第4条)。
それに、1年後にはさらに見直しを行うという附則も定められていますから(附則第6条)、不当な制限がされる方向の見直しになっていないか、監視も必要だと思います。