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組織において部下を動かす「パワー(影響力)」とは?

森田祐司

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テーマ:管理職


組織において部下を動かす「パワー(影響力)」

組織において部下を動かす「パワー(影響力)」は、リーダーシップの発揮と目標達成に不可欠な要素です。パワーとは、他者の行動や態度を望む方向に変える潜在的な能力を指します。

このパワーを体系的に分類したものとして、社会心理学者のJ.R.P.フレンチとB.H.レーベンによる「パワーの源泉」が広く知られています。彼らはパワーを大きく分けて、組織の地位に基づくもの(ポジション・パワー)と、個人の特性に基づくもの(パーソナル・パワー)に分類しました。

組織におけるパワーの主な源泉

分類パワーの源泉具体例
ポジション・パワー強制的パワー罰則や懲罰を与える能力(例:降格、減給、懲戒)。部下にストレスを与えやすく、長期的な影響力は低い。
報酬的パワー報酬を与える能力(例:昇給、ボーナス、昇進、承認)。外発的な動機づけとなる。
合法的パワー組織内の正式な地位や役職に基づく権限(例:上司が部下に業務命令を下す)。
パーソナル・パワー専門的パワー特定の分野における専門知識、スキル、経験に基づく影響力。信頼と尊敬を生む。
同一視パワー部下がリーダーに憧れ、魅力を感じ、同一化したいと思うことによる影響力(カリスマ性、人間的魅力)。自発的な行動を促す。
情報的パワー他者が欲する重要な情報や知識を持っていることによる影響力(フレンチとレーベンの原典にはないが、後の研究で追加されることが多い)。

現代の組織におけるパワーの活用方法

従来の組織では「強制的パワー」や「合法的パワー」といったポジション・パワー(ハードパワー)に依存し、上意下達で部下を動かすことが主流でした。しかし、現代の多様化し複雑化した組織においては、このアプローチだけでは限界があります。

リモートワークの普及や、自律性が重視される現代の組織では、部下の内発的な動機づけを引き出し、自発的な行動を促すパーソナル・パワー(ソフトパワー)の戦略的な活用が重要になります。

特に活用すべき具体的なパワーの使い方は以下の通りです。

(1) 専門的パワーとコーチングの融合
単に指示を出すのではなく、リーダー自身の専門知識を活用して指導・助言を行います。その際、一方的に教えるのではなく、コーチング型の対話を通じて部下自身に気づきと成長の機会を与えます。

(2) 同一視パワーと信頼関係の構築
部下をひとりの人間として傾聴し、誠実な関心を寄せ、公平に接することで、人間的な信頼関係(同一視パワー)を築きます。リーダーが模範を示し尊敬される存在となることが不可欠です。

(3) 報酬的パワーの「内発的」活用
金銭的な報酬(外発的報酬)だけでなく、仕事の目的意識の共有や、達成感の提供、適切な承認と称賛(内発的報酬)を重視します。可能な範囲で仕事の進め方を任せるエンパワーメントも、自律性への報酬となります。 部下の「この仕事は意義がある」「自分は重要だ」という重要感や自己効力感を高め、持続的なモチベーションを維持させます。

現代のリーダーは、形式的な地位(合法的パワー)だけでなく、個人の専門性と人間的魅力(信頼関係)といったソフトパワーを巧みに使い分ける必要があります。これにより、部下は「やらされている」ではなく「自らやりたい」という動機づけで動き、組織全体の生産性と創造性が向上します。

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森田祐司
専門家

森田祐司(人材開発・組織活性化専門コンサルタント)

株式会社キャリアリーダーシップラボ

経営課題の解決と人材育成の知見を有し、人と企業の成長を促す多彩なプログラムで実践的な研修を実施。ビジネスススキルの習得やチーム力強化のほか、企業ごとの人材開発戦略を構築するコンサルティングも

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