リンゲルマン効果にならないように!
星野リゾートさんの「マルチタスク」とは?
星野リゾートでは、スタッフは特定の部門(例:フロント、レストラン、清掃)に限定されず、複数の業務を横断的に担当します。これを「マルチタスク」と呼びます。例えば、朝はレストランで接客し、昼は客室の清掃を行い、夕方にはレセプションでチェックイン対応をするといった仕事のやり方です。
この仕組みの真の目的は、単なる人件費の削減ではありません。社員一人ひとりが「お客様に最高の体験を提供する」という共通の目標を深く理解し、そのために必要なすべての仕事を遂行できる「サービスプロフェッショナル」へと成長させることです。
「マルチタスク」が「チーミング」を育む3つの理由
1. 共通の目的を肌で感じる
マルチタスクを通じて、スタッフはフロント対応、客室清掃、食事の提供という、お客様体験の「全体像」を自ら経験します。これにより、「自分の仕事」という狭い視野ではなく、「お客様の満足度」という共通の目的を、頭だけでなく身体全体で理解できるようになります。例えば、フロントの対応がスムーズであれば、食事を提供するスタッフの仕事が楽になることを実感し、お互いの仕事のつながりを意識するようになります。
2. 役割の流動化と相互理解
異なる業務を経験することで、スタッフはそれぞれの仕事の大変さや専門性を深く理解します。これにより、「清掃スタッフ」や「料理人」といった肩書きの壁が薄れ、お互いの努力やスキルに対する信頼と尊敬が自然と生まれます。これは「流動的な役割」を可能にし、何か問題が起きた際に、誰がどの役割に縛られることなく、最も必要な場所で協力し合える強いチームを形成します。
3. 心理的安全性の醸成
自分も相手の仕事を経験しているため、相手の失敗や課題に対しても共感しやすくなります。例えば、忙しい時にグラスを割ってしまったスタッフがいても、「自分も経験したことがある」という共感が生まれるため、非難するのではなく、「次にどうすればいいか」という建設的な対話が生まれます。この共感が、チームが安心してミスを共有し、互いに助け合える心理的安全性の土壌を育みます。
マルチタスクで複数の業務を並行して進めることにより、チーム全体の進捗の停滞を防ぎ、お互いの状況を把握しやすくすることや、仕事を縦割りにせず、相互に仕事を理解することで円滑な協働(チーミング)を促進する基盤となります。




