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管理職「罰ゲーム化」を変えられるか?

森田祐司

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テーマ:管理職


管理職という役職は「罰ゲーム」

近年、企業において管理職という役職が「罰ゲーム」と揶揄される状況が散見されるようになりました。これは、管理職が負う責任と権限のアンバランス、過大な業務負荷、そしてキャリアパスの不透明さなどが複合的に絡み合った結果として生じています。この「罰ゲーム化」の背景と対策について考えたいと思います。

1. 管理職「罰ゲーム化」の背景

管理職の「罰ゲーム化」は、主に以下の3つの要因が複雑に絡み合って生じていると言われます。

1.1. 過大な業務負荷と責任範囲の拡大
多くの企業において、リストラや効率化の波の中で、管理職の「プレイングマネージャー」化が加速しました。これは、本来は部下の育成や組織全体の戦略立案に注力すべき管理職が、一般社員と同様に実務もこなすことを求められる状況です。

複数の調査結果では日本の管理職の約9割以上がプレイングマネージャーであり、多くの管理職が業務量の増加、特にプレイヤーとしての業務とマネジメント業務の両方をこなすことに困難を感じていますまた、管理職の5割以上が「業務量の増加」という課題を抱え、さらに「働き方改革への対応」「ハラスメントの対応の増加」「コンプライアンスの対応の増加」といった新たな業務も加わり、責任範囲が拡大しています。これにより、本来注力すべき部下育成や戦略立案に十分な時間を割けず、ストレスや疲労の蓄積、さらには転職意向の高さにも繋がっているとされています。

1.2. 権限と責任のミスマッチ
業務負荷の増大と並行して、管理職に与えられる権限が責任に見合っていないという問題も顕在化しています。例えば、部下の評価や配置転換、予算の配分などにおいて、実際には上位層の承認や全社的な方針に縛られ、十分な裁量がないと感じる管理職は少なくありません。ある調査では課長の約4割が「十分な権限を与えられていると思わない」と回答しており、この権限の不足が、管理職のモチベーション低下や業務遂行の困難さに繋がっています。

1.3. キャリアパスの不透明さと魅力の低下
終身雇用制度の崩壊や成果主義の導入により、かつては昇進のゴールと見なされていた管理職が、必ずしも魅力的なキャリアパスではなくなってきています。特に若手社員の間では、「管理職になりたくない」という意識が高まっているという調査結果も出ています。その背景には、前述の業務負荷の高さや権限の少なさに加えて、管理職に昇進しても給与が大幅に増えない、あるいは責任だけが増して見返りが少ないと感じる点が挙げられます。これにより、優秀な人材が管理職を忌避し、結果として管理職の質が低下するという悪循環も生じかねません。

2. 管理職「罰ゲーム化」への対策

2.1. 業務の最適化と権限委譲の推進
まず、管理職の業務負荷を軽減することが急務です。業務の棚卸しと削減: 定期的に管理職の業務内容を棚卸し、不要な業務やルーティンワークを削減します。ITツールの導入による自動化や、専門部署への業務移管も有効です。権限の明確化と委譲: 管理職に与える権限を明確にし、部下育成やチーム運営において最大限の裁量を持たせるようにします。上位層がマイクロマネジメントに陥ることを避け、権限委譲を進めることで、管理職の主体性と責任感を高めることができます。

プレイング業務とマネジメント業務の分離・再定義: 理想はマネジメントに専念できる環境ですが、それが難しい場合は、プレイング業務とマネジメント業務の比率を明確にし、過度なプレイング業務を管理職に課さないように配慮します。ある調査では、高いチーム成果を実現しているプレイングマネージャーは、プレイング業務比率を30%未満に抑えているとされています。

2.2. マネジメントスキルの向上支援とメンタルヘルスケア
管理職が直面する困難を乗り越えるためのスキルとサポートを提供する。
マネジメント研修の強化: 部下育成、ハラスメント対応、コンプライアンス、DX推進など、現代の管理職に求められる多岐にわたるスキルを体系的に学べる研修を充実させます。特に、部下のモチベーション向上や育成に関する悩みを抱える管理職が多いことを踏まえ(リクルートマネジメントソリューションズの調査)、これらの分野に特化した研修が有効です。

コーチング・メンター制度の導入
管理職同士のピアサポートや、経験豊富な上級管理職によるコーチング・メンター制度を導入し、孤立感を解消し、課題解決を支援します。
メンタルヘルスケアの強化
過重労働やストレスによる心身の不調を未然に防ぐため、定期的なストレスチェックやカウンセリングの機会を提供し、必要に応じて専門家への相談を促す体制を整備します。

2.3. 管理職の魅力向上とキャリアパスの再構築
管理職が魅力的なキャリアパスとして認識されるような制度改革が必要です。

報酬体系の見直し
管理職の責任と業務負荷に見合った適正な報酬体系を確立します。成果に応じたインセンティブ制度の導入も検討し、管理職のモチベーション向上に繋げます。

多様なキャリアパスの提示
:管理職以外の専門職やプロジェクトマネージャーなど、多様なキャリアパスを提示することで、必ずしも管理職にならなくても専門性を高められる選択肢を増やします。これにより、個人の志向に合わせたキャリア形成を可能にします。

管理職の役割と価値の再定義と発信
企業は、管理職が組織にとって不可欠な存在であり、その役割が企業の成長にいかに貢献するかを明確に定義し、社内外に積極的に発信していく必要があります。成功事例の共有や、管理職の働きがいを可視化する取り組みも有効です。

管理職の「罰ゲーム化」は、組織の活力を低下させ、企業の成長を阻害する深刻な問題です。その背景には、過大な業務負荷、権限と責任のミスマッチ、そしてキャリアパスの不透明さという複合的な要因が存在します。これらの課題に対して、業務の最適化と権限委譲、マネジメントスキルの向上支援とメンタルヘルスケア、そして管理職の魅力向上とキャリアパスの再構築という多角的な対策を講じることが不可欠です。管理職の現状分析と、それに対応した具体的な施策を継続的に実行することで、管理職が本来の役割を発揮し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献できる環境を創り出すことができるでしょう。

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森田祐司
専門家

森田祐司(人材開発・組織活性化専門コンサルタント)

株式会社キャリアリーダーシップラボ

経営課題の解決と人材育成の知見を有し、人と企業の成長を促す多彩なプログラムで実践的な研修を実施。ビジネスススキルの習得やチーム力強化のほか、企業ごとの人材開発戦略を構築するコンサルティングも

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