遺産分割協議よりも調停のほうが費用が安い?! 時間や精神的な負担は相当なものですよ!
今月は、今年最後の無料相談会でもあり、ちょうど24回目となる節目の回でもあることから、拡大無料相談会として12月22日(土)と23日(日)の2日間にわたって開催させていただきました。クリスマス直前の三連休にもかかわらず、ご予約いただいた皆様においでいただいたことにお礼申し上げます。
60代前半の女性が、相続手続きに必要な資料をお持ちになって不安な面持ちでご相談におみえになりました。これまで2年にわたりおよそ70名以上の方のご相談に乗らせていただきましたが、この方のようにきちんと相続手続きに必要と思われる資料をお持ちになる方は意外と少なかったと記憶しています。そのため、解決策をお示しすることはさほど困難ではないかと思われたのですが、不動産の登記事項証明書を拝見したところ予想外のとんでもない状態になっており、私は言葉を失うほどの驚きを覚えたのでした。
今回、相続財産となる不動産の登記記録を拝見したところ、なんと複数の不動産の登記記録においてご家族で共有名義となっていました。しかも、その持分割合も一定ではなく、ある土地はお母様が5分の3で、残りを次男と長女が5分の1ずつ、また別の土地はお母様が3分の1で残り3分の2を長男というように、複数ある不動産が複雑に共有名義とされていたのでした。
なぜ、こんな登記をしたのかを伺ってみると、今から約5年ほど前にお父様が亡くなった際に遺言がなく、どのように遺産相続の手続きをしようかと家族で話し合ったもののなかなか話がまとまらずに困っていたそうです。そんなときに、知り合いの税理士に相談したところ、『ギリギリで相続税もかからないので、とりあえず法定相続分で分けてしまえばいいのではないか』とアドバイスされたお母様が、その税理士の言葉を鵜呑みにしてしまい、このような相続登記をしてしまったそうです。
そして、今年の初めにお母様も亡くなり、1周忌を前にそろそろ遺産分けの話をしなければと思い兄弟姉妹で話し合いをしてみたもののなかなかうまくいかず、困り果てて相続まちなかステーションの無料相談会においでになったのでした。
私は、概略を聴き取ってから『とんでもない税理士がいたものだ!』と怒りを覚えずにはいられませんでした。なぜなら、いくら相続税がかからないからといって、実体関係に合わない登記関係を勧めてしまうとは無責任極まりないからです。ましてや、近い将来再び相続が発生して利害や思惑が対立することが容易に想定できる相続人同士(兄弟姉妹)を共有名義人にしてしまうとは、無責任を通り越して無知にもほどがあるといっても過言ではありません。税理士はどうしても相続税ばかりに関心がいってしまい、相続税がかからない相談者の相続関係にはあまりやる気がおきないのは分からなくもないのですが、それならばせめて税理士よりもはるかに適切・的確に対応してくれる他の専門家へ相談することを勧めるのが国家資格者としての最低限の責務ではないでしょうか。こんな対応をする税理士が相続業務に携わることは、一般の市民にとっても迷惑この上ない話であり、相続・遺言の法律専門職としてなんとしてもこの相談者の悩みを解決したい、そのためには私の知識・経験を惜しみなくご提供したいと心の底から思えた次第です。
そこで私は、『まずは、すべての相続人に対して、すべての相続財産を包み隠さず正直に開示し、相続人全員の要望を協議というテーブルに遠慮なく出してもらうことです。その上で、相続財産には限りがあるわけですから、全員が少しずつ不満を引き受けることが出来るような内容にまとめあげていく作業が必要となるでしょう。これが、相続まちなかステーションの基本方針です。私の方針に同意していただけるようであれば、皆さんが少しずつ不満を引き受けることが出来るように、皆さんの間に入って話し合いの土台を作るところから円満に解決するまでまで責任を持ってお引き受けできます』とお話して面談を終了しました。
最近では、『終活』と言う言葉がもてはやされており、人々の相続や遺言に対する関心も高まっているようです。また、相続トラブルは年々増加の一途を辿っており、この現状に目を付けた各種の資格者が相次いで相続業務に参入しており、相続まちなかステーションのある平塚市でも無料相談会などが乱立の様相を呈しています。
しかし、相続は相談窓口を間違えてしまうと、今回の事例のようにかえって不毛な相続トラブルを引き起こし、当事者の話し合いで速やかに円満に解決できなくなることもあるのです。相続は、中途半端な知識や生半可な対応では、解決どころかかえって問題を複雑にしてしまい場合によっては取り返しのつかない事態を招くこともあります。相続の相談窓口は以下の3点が満たされているかどうかで選んでみてください。
1 相続専門であること
2 実務経験が5年以上あり、かつ直近1年間で10件以上の相続実務実績があること
3 実際に面談して、具体的な解決策を示してくれて、かつ信頼がおけること