【第2部】令和8年版「労働経済の分析」より~最高益の影で増える倒産と人件費高騰~
はじめに
第2部では、マクロでの企業業績の好調さの裏で進行する中小企業の利益圧迫と倒産増加について分析しました。
第3部では、完全失業率2.5%という構造的人手不足の市場環境と、急速に普及が進む「AI・技術革新」が雇用に与える影響について解説します。
構造的人手不足と従来の採用手法の限界
2025年の完全失業率は2.5%となり、前述の通り均衡失業率と同等の水準で推移しています。
有効求人倍率は1.22倍、正社員の有効求人倍率は1.02倍と3年連続で1倍を超えており、求職者よりも求人数が多い状態が定着しています。
こうした市場環境において、単に求人広告を増やしたり、募集賃金を少し引き上げたりする従来の採用手法だけでは、必要な人材を確保することは困難です。人手不足への対応策として、事業所の68%が「中途採用の強化」を挙げていますが、同時に38%の事業所が「業務の効率化の推進」に取り組んでいます。
AI導入と雇用の現状
「AIの導入によって人間の仕事が奪われ、大量の解雇が発生するのではないか」という懸念が語られることがあります。
しかし、労働経済白書の分析によると、AI導入期(2022年〜2025年)においてマクロ的な解雇や雇用喪失は確認されていません。
むしろ、AI関連の設備投資(2025年のAIインフラ市場は前年比35%増の6,700億円)は拡大しており、IT・デジタル技術を活用した省力化が求められています。
| 比較項目 | 従来の労働市場・対応策 | AI導入・省力化時代の対応策 |
|---|---|---|
| 人手不足へのアプローチ | 募集賃金の引き上げ、求人媒体の拡大 | 業務プロセスの再設計、AI・省力化投資 |
| AIと雇用の関係 | 「AIが人の仕事を奪う」という懸念 | AIとの「協働」による生産性向上 |
| 職種ごとの影響 | 全職種で一律の採用競争 | 事務職等の業務効率化と現場・専門職の育成 |
| 企業の課題 | 人件費高騰による収益悪化 | 設備投資資金の確保と社内人材の育成・再配置 |
資金調達と労務管理におけるAI・省力化投資の重要性
財務の視点から見ると、与信判断において、単なる人件費補填としての運転資金と、AI導入や省力化機器の購入といった「生産性向上に資する」設備投資資金とでは、受け止め方が変わります。ただし、いずれも投資対効果(ROI)と事業計画によります。
また、労務の視点からは、AIを導入するだけで業務が効率化するわけではないという点に注意が必要です。
現場の従業員がAIツールを使いこなせるよう、就業時間内に教育研修を行う体制や、AI導入によって生まれた時間を活用した職務の再定義(ジョブ・クラフティング)を労務管理として進める必要があります。
まとめ
【今回のポイント】
- 完全失業率2.5%のもと、人手不足解消には外部採用だけでなく業務効率化が不可欠
- AI導入によるマクロな解雇は生じておらず、AIとの「協働」による生産性向上が鍵
- 省力化投資は、投資だけでなく社内の労務環境整備と教育が必要
第4部では、AIによる職種別のインパクトなどについてに解説します。
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