【妄想コラム】もしも乃木希典がCHROだったら 〜規律と育成の人事戦略〜
はじめに
第1部では、ハラスメントの定義と、2026年10月より施行される「カスハラ防止」「求職者・フリーランス保護」の義務化という法改正のインパクトについて解説しました。
法律上の定義を押さえることと同じくらい重要なのが、職場の現場で現在進行形で起きている「多様化・複雑化するハラスメント」への再認識です。従来のパワハラ・セクハラにとどまらず、管理職を萎縮させる「ハラハラ」や「ホワイトハラスメント」といった新たな課題が、組織の生産性に影響します。
第2部は、多様化するハラスメントによるリスクとマネジメントへの影響について考察します。
厚労省調査に見るハラスメントの発生状況
厚生労働省が実施した最新の『職場のハラスメントに関する実態調査報告書』によると、過去3年間に職場で受けたハラスメントの発生状況において、依然として最も多いのが「パワーハラスメント(20~30%台)」です。
次いでセクハラ、妊娠・育休等ハラスメントが続きます。
しかし、近年のテレワーク定着に伴い、カメラの常時接続要求やプライベート空間への過度な侵入といった「リモートハラスメント(テレハラ)」が新たなトラブルとして定着するなど、ハラスメントの形態は多様化の一途を辿っています。
新たなハラスメントと現場に与える影響
現場から多く寄せられるのが、以下のような新しいタイプのハラスメントです。
ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)
「何でもハラスメントと言えば許される」という過剰反応や主観に基づき、上司の正当な業務指導や厳格なフィードバックに対して「それってパワハラですよね?」と主張する現象です。本来のハラスメント防止制度が悪用され、職場に必要な指導が阻害される事態が起きています。
ホワイトハラスメント(過度な放置・配慮)
リスクを恐れるあまり、管理職が部下への必要な注意・指導を躊躇してしまう「ハラスメント恐怖症」が発生しています。
部下に負荷の低い作業しか与えず、適切な評価や成長の機会を与えないケースも見られます。一見優しそうに見える職場ですが、従業員のスキル向上や成長機会が奪われ、若手社員の離職理由にもなっています。
| 名称 | 内容・状況 | 企業への影響 |
|---|---|---|
| ハラハラ(過剰主張) | 正当な注意・業務指示に対し、部下が主観的に「ハラスメントだ」と反論・拒否する | 指導の形骸化、現場管理職のメンタル不調・自信喪失 |
| ホワイトハラ(過度な配慮) | ハラスメント指摘を恐れ、上司が部下に厳しい仕事や指導を与えず野放しにする | 成長機会の喪失、属人化、優秀な人材の離職 |
| テレハラ(遠隔過干渉) | 在宅勤務中の常時カメラON強制、時間外のチャット即答要求など過度な監視 | プライバシー侵害、エンゲージメント低下 |
マネジメント不全がもたらす財務、労務への影響
1.労務への影響
正当な指導が機能しない「ホワイトハラスメント」状態の組織では、業務の標準化が進まず特定社員への業務偏重(属人化)が進みます。
また、指導されないことに不満を感じた意欲ある若手が早期離職する要因となります。
2.財務への影響
業務の属人化や指導放棄は「生産性の低下」という目に見えない損失に繋がります。
人件費という固定費を支払いながら付加価値創出能力が低下することは、銀行から見れば「利益率の低下」としてネガティブな印象を与える可能性があります。
まとめ
今回は最近のハラスメントの動向と、財務や労務への影響について整理しました。
【今回のポイント】
- パワハラに加え、テレハラやハラハラなどハラスメントは多様化
- 指導を恐れるあまり「ホワイトハラスメント」に陥ると、人材の成長が止まり組織が停滞
- 管理職が安心して正当な指導を行えるルール策定が、生産性と財務健全性を維持する鍵
次回は、ハラスメントがもたらす影響について解説します。
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