【第3部】令和7年雇用動向調査データから読み取る課題~人件費増加と人材流出のリスク~
はじめに
第1部では、名目GDPや雇用者数が過去最高を更新するマクロ経済の動向について解説しました。
第2部では、その一方で進行している企業の「二極化」と、中小企業を圧迫する人件費高騰・倒産リスクについて、財務と労務のデータから考察します。
過去最高益を更新する企業と倒産増加の二極化
財務省の「法人企業統計」によると、2025年の全企業の経常利益は前年比7.0兆円増の121.9兆円となり、5年連続の増加で過去最高を更新しました。しかし、その内訳を見ると企業規模や産業による二極化が進んでいます。
東京商工リサーチの調査によると、2025年の全国企業倒産件数は前年比294件増の10,300件となり、2年連続で10,000件を上回りました。
倒産の内訳を見ると、負債額1千万円以上1億円未満の中小規模倒産が7,892件と全体の約76.6%を占めており、中小企業の環境が極めて厳しくなっていることが分かります。
利益、倒産件数などの動向の比較
経常利益の変動要因を分析すると、減益の最大の要因は「人件費の増加」です。
特に非製造業の中小企業において、人件費の増加が利益を大きく圧迫しています。
大企業が価格転嫁や海外需要の取り込みで増益を確保する一方、中小企業は賃上げ要請と人手不足対応のための人件費増加分を価格に転嫁しきれていません。
| 項目 | 大企業(非製造業等) | 中小企業(特に非製造業) |
|---|---|---|
| 経常利益 | 過去最高水準を維持・更新 | 人件費高騰により利益が圧迫される傾向 |
| 物価・コスト転嫁 | 価格改定やサービス価格への反映が進行 | 競合・得意先との関係で転嫁が遅れがち |
| 倒産件数の推移 | 10億円以上の大型倒産は減少(206件) | 1千万円〜1億円未満の倒産が7,892件と急増 |
| 人手不足の影響 | 採用力の高さを背景に人材確保を推進 | 人件費高騰型・求人難・従業員退職型倒産が増加 |
銀行員目線での与信評価と労務リスク
財務目線で見ると、「コスト(人件費)上昇分を利益の増加(売上増や価格転嫁)で吸収できているか」です。
人件費が増加しているにもかかわらず利益が伸びていない場合、「収益構造の悪化」と判断される可能性があります。
また、労務目線で見ると、人件費を抑えようとして昇給を見送ったり、過度な長時間労働に依存したりする企業は、さらなる「従業員退職型倒産」のリスクを抱え込むことになります。人件費はコストではなく「投資」と捉え、生産性を向上させる仕組みづくりが求められています。
まとめ
【今回のポイント】
- 全企業の経常利益は121.9兆円で過去最高となったが、中小企業では人件費増加が利益を圧迫
- 2025年の企業倒産は10,300件となり、小規模中小企業の倒産が突出して増加
- 人件費上昇と利益動向が与信判断に影響する可能性があり、価格転嫁と労務改善が必須
第3部では、雇用・労働市場の構造変化とAI導入の現状について解説します。
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