【第3部】令和7年雇用動向調査データから読み取る課題~人件費増加と人材流出のリスク~

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:労務・人事管理


 こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。

はじめに

 第2部では、令和7年雇用動向調査のデータをもとに、入職・離職の動向や転職者の賃金上昇トレンド、男女別の離職理由を確認しました。

 第3部では、これらのデータから浮き彫りになる中小企業の構造的な課題を深掘りします。「お金(財務)」と「人(労務)」の両面のリスクに対して、企業がどのように向き合うべきかを考察します。

財務の視点:人件費増と採用費流出による財務圧迫

  転職者の40.8%で賃金が増加し、特に1割以上の大幅増が28.2%を占める現状は、企業側の採用コスト・給与原資の増加を意味します。
賃金を引き上げなければ優秀な人材を採用できない一方で、安易な賃上げは利益を圧迫するだけになります。
 
 さらに、給与の引き上げに伴って社会保険料の会社負担分も増加するため、固定費のベースが上がることになります。
 また、入社した人材が早期に離職してしまうと、採用費や教育期間中の人件費がすべて無駄になり、資金繰りに悪影響を及ぼします。
 適切な価格転嫁や生産性向上の計画がないままの賃上げは、財務基盤を揺るがすリスクとなります。

労務の視点:ターゲットに応じた労務課題の放置リスク

 離職理由のデータは、自社の労務環境を見直すための重要なヒントです。
男性の離職理由として「給料等収入が少なかった(9.9%)」が上位に入る一方、女性では「労働時間・休日等の労働条件が悪かった(12.9%)」「職場の人間関係が好ましくなかった(11.5%)」が上位を占めています。

 ニーズに応じた環境整備を行わないまま放置することは、離職率の高止まりを招きます。
特にパートタイム労働者の離職率が19.9%と高い現状において、制度や職場環境の改善を怠ることは、慢性的な人手不足から抜け出せない原因となります。

中小企業が直面する2つの課題

 データから読み取れる企業の課題は、以下の2点に集約されます。

  1. 人件費・社会保険料の上昇と早期離職による「財務的コストの増大リスク」
  2. 男女別・雇用形態別のニーズとズレた労務管理による「組織的定着率の低下リスク」

まとめ

 今回は、データから読み取る課題についてまとめました。

【今回のポイント】

  • 転職者の賃金増加傾向は、賃金引き上げと社会保険料増加による人件費圧迫を引き起こす
  • 採用コストや教育費の流出を防ぐためには、早期離職を防ぐ定着化の仕組みが不可欠
  • 男性の金銭的不満、女性の労働条件・人間関係不満など、ターゲット別の労務環境改善が急務


 第4部では、財務×労務の視点から、人手不足時代を乗り切るための対策を整理します。

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江崎充豊
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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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