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はじめに
第1部・第2部を通じて、iDeCo+の概要、就業規則や退職金規程への明文化といった労務管理上の留意点を整理しました。
第3部では、法改正が従業員の退職時に与える影響と労務対策について整理します。
退職所得控除「10年ルール」がもたらすシニア期の課題
私的年金の積立時(iDeCo+の拠出時)の優遇が拡大する一方、出口(受取時)の税制には細心の注意が必要です。
これまで、60歳でiDeCoを一時金として受け取り、その後「5年以上」の期間を空けて65歳以上で会社の退職金を一時金として受け取れば、別々に退職所得控除を適用でき、従業員の税負担は軽く抑えられていました。
しかし、この重複排除期間(前年以前に支払いを受けた退職手当等がある場合の期間)が「10年」へと延長されました。
これにより、「60歳定年・65歳再雇用終了(または65歳定年)」のケースにおいて、60歳でiDeCo、65歳で会社の退職金をそれぞれ一時金でもらうと、退職金側の控除額が減額調整されてしまい、結果として従業員の税負担が増えて(手取りが減って)しまうという事象が発生します。
従業員が迷わないためのサポートと中退共との併用
「国の制度は変わる」からこそ 、企業には従業員の資産形成とマネーリテラシー向上を支援する「伴走者」としての役割が求められます。
この税制変更による従業員の不満や不利益を防ぐため、以下のような労務対応が必要です。
1.退職金の受取時期の柔軟化(就業規則・退職金規程の改定)
従来の「退職日の翌月末に一括支給する」といった画一的な規程から 、「退職日から5年以内の範囲で、従業員が指定する時期に支給できる」、あるいは「70歳までの繰り下げ支給を認める」など、柔軟な支給に対応できるように退職金規程を見直すことが有効です。
これにより、従業員自身が税制に合わせて選択できるようになります。
ただし、企業側の運用もそれだけ複雑になるので、「従業員の利便性 vs 会社の退職事務の運用」を天秤にかけて考える必要があります。
2.年金受取やNISAとの「選択肢」の提示
すべてを一時金で受け取るのではなく、一部または全部を「年金形式(公的年金等控除の活用)」で分割受給するのも有効です。
また、すでに自社に十分な退職金制度があり、10年ルールの問題を避けたい場合は、引き出し制限のない「NISA」と併行活用を社内で周知するなど 、ライフステージに応じた情報提供を行うことが従業員の安心感に繋がります。
3.中退共(中小企業退職金共済)との併用
確実なベースとなる退職金は「中退共」で全従業員一律に確保し 、さらなる上乗せや自己責任での積極的な資産運用を希望する従業員に対して、「iDeCo+」を提供するという「二階建て」の運用を構築することも有効です。
これにより、リスクを嫌う従業員と、積極的な形成を望む従業員の双方に安心感と満足感を与えるとともに、手厚い福利厚生という実績が、従業員のエンゲージメント向上にも繋がります。
まとめ
3部にわたり、福利厚生の選択肢となる「iDeCo+」について解説してきました。
「採用力」と「定着率」を獲得するためには、従業員が自らの未来に安心感を持てる仕組みへの「先行投資」が欠かせません。
法改正をチャンスと捉え 、適法な労使合意 、客観的な制度設計 、そして出口まで見据えた従業員教育を通じて 、働く人々が最大のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが、企業の持続的な成長へと繋がります 。
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