【第1部】2026年度税制改正で整理する「年収の壁」見直しの全体像

こんにちは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
前回は「年収の壁」についての全容を整理しました。
今回は、社会保険に関する年収の壁について3部構成でお話します。
はじめに:2026年度「年収の壁」のおさらい
まず、前のコラムで整理した「年収の壁」についておさらいします。
| 区分 | 従来の基準 | 2026年度の新基準 | 実務上のポイント |
|---|---|---|---|
| 住民税の壁 | 100万円前後 | 100万円前後 | 自治体により差があり |
| 所得税の壁 | 103万円 | 160万円 | 所得税がかからない目安 |
| 配偶者控除の壁 | 103万円 | 123万円 | 扶養判定の所得要件が48万→58万へ |
| 配偶者特別控除(満額) | 150万円 | 160万円 | 控除額38万円が適用される上限 |
| 配偶者特別控除の上限 | 201万円 | 201万6千円 | 配偶者特別控除の対象 |
| 社会保険の壁① | 106万円 | 2026年10月撤廃予定 | 賃金要件(月8.8万)が撤廃。週20時間以上が主軸に |
| 社会保険の壁② | 130万円 | 130万円(運用緩和) | 臨時収入は「見込み」に含めない柔軟運用 |
「106万円の壁」の消滅と、週20時間基準への移行
注目すべきは、2026年10月の「賃金要件(月額8.8万円)の撤廃」です 。
現在、短時間労働者の社会保険加入要件の一つとして「月額賃金8.8万円以上(年収換算で106万円)」という基準があります。これがいわゆる「106万円の壁」です。
この賃金要件が、2026年10月に撤廃されます。
これにより、「年収を106万円未満に抑える」という就業調整は意味をなさなくなります 。
今後は「週20時間以上働くかどうか」が、社会保険加入の判断基準となります 。
「130万円の壁」の要件緩和
もう一つの130万円の壁は、配偶者の扶養から外れるかどうかに関わる基準です。
基準の130万円は変わりませんが、厚生労働省通知により被扶養者認定は労働契約上の見込み収入を基準に行い、契約時に予見しにくい時間外手当などの臨時収入は原則として年間収入見込みに含めない考え方が示されました。
これにより、一時的な残業で直ちに扶養から外れるのではないかという不安は、一定程度和らいでいます。
社会保険適用拡大:2035年までの10年計画
2024年の年金制度改正により、適用拡大は以下のスケジュールで段階的に実施されます 。
| 施行時期 | 対象企業(厚生年金被保険者数) |
|---|---|
| 2026年10月 | 賃金要件(月8.8万円)の撤廃 |
| 2027年10月 | 従業員26人以上の事業所が対象 |
| 2029年10月 | 従業員11人以上の事業所が対象、 個人事業所の全業種適用拡大 |
| 2032年10月 | 従業員6人以上の事業所が対象 |
| 2035年10月 | 企業規模要件の完全撤廃(全企業対象) |
(出典:厚生労働省「年金社会保険の加入対象の拡大について」 )
つまり、2035年10月以降は、週20時間以上働くすべてのパート・アルバイトが社会保険の加入対象となります。
まとめ
第1部では、2026年度を起点として、最終的にすべての企業で「週20時間以上働く全従業員」が社会保険の対象となる流れを確認しました 。
これは単なる制度変更ではなく、企業のコスト構造そのものを変える変革です。
第2部では、この法改正が具体的に企業の財務にどのようなインパクトを与えるのか、そして従業員にとって厚生年金加入は本当に「損」なのか、シミュレーションを交えて整理します 。


