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【WLBコラム】なぜ、最近の新人看護師はすぐ辞めてしまうのか?

2018年8月13日 公開 / 2018年8月17日更新

テーマ:看護師

コラムカテゴリ:ビジネス

WLBコラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。
働き方改革をサポートするタイムマネジメントコーチの山本武史です。


先日、ある県の看護協会さんで
部下指導関連のテーマで講演させていただきました。



様々な病院から教育担当者さんたちが集まり、
休憩中にも現状を話し合ったりされているのですが・・・、



「最近の子たちは、すぐ辞めてしまうよね。
 忍耐力がないのか、何なのか・・・」

「ちょっときつく指導したら、
 すぐ『辞めたい』と言い出すし・・・」

「そんなこと言われると、
 こっちとしてもどう声かけしたらいいか迷うよね」


などといった声が聞こえてきました。





確かに、いろんなアンケート調査や
ネットの業界記事などをみていると、
他の業界に比べて離職率が高いようにも思えます。



が、本当に「忍耐力がない」のでしょうか?

本当に「厳しい指導」が原因なのでしょうか?




ちょっと話は逸れますが、

精神科医で心理学者の
ヴィクトール・エミール・フランクルは
こんなことを教えてくれています。



「相当の苦難にも人は耐えられるが、
 意味の喪失には耐えられない」



フランクルは第二次大戦中に
ナチスドイツの強制収容所に入れられ
奇跡的に生還した精神科医です。


収容された人は、
人間どころか、動物以下の扱いを受け、
過酷すぎる衣食住環境プラス強制労働で
次々と命を落としていきます。


終戦後、そんな極限状態から解放され、
人々が自宅に帰った時、

「どんなに暖かく家族に迎えられるだろう」
「過酷だったが、そんな話にも耳を傾けてくれるだろう」

と想いを馳せながら帰還したのです。



しかし、現実は違っていました。



家族や友人たちからは

「そんな状況にあるとは知らなかった」
「私たちも被害者なのだ」
「戦争中だったから我々にもどうしようもなかった」

と、言い訳とも取れる声ばかりだったそうです。




そんな声を聞かされた帰還者たちは

「私たちの、あの過酷な経験は何だったのだ。
 あれを生き延びたことに意味はあったのか?」

と、失意のどん底に落ち、
生きる気力すらも無くしてしまったそうです。




強制収容所という、
まさに過酷を極めた極限状態を生きた人々でさえ、
そのことに対する「意味がなかった」という結論が
生きる気力を失ったのです。




僕たちは、「意味がある」と本気で思えれば、
どんな苦難にだって立向かえますし、
それを乗り越える努力をし続けられます。


しかし、その努力に「意味がない」と思った瞬間、
やる気は削ぎ落とされ、失望します。





話を戻すと・・・、
実は新人看護師も
このような心理状態に陥っているのではないかと思うのです。




看護師というのは、
患者の命や健康を守るとても重要な役割です。

大きな責任も伴います。


そのために専門の学校に通い、
専門性の高い知識とスキルを身につけます。




だからこそ、
知らず知らずのうちに期待してまうのです。



『感謝の言葉』を。





しかし、患者も生きることに、自分の健康に、
文字通りまさしく『必死』です。

看護師の存在をありがたいと思いつつも、
それを言葉に出すことを忘れることもあるでしょう。



あるいは、
最近では、サービスを当たり前と思う風潮があり、
「看護師は看護して当たり前」と思う人も増えているのでしょうか、
感謝の言葉をもらえないことも多いようです。



理由はどうあれ、
「ありがとう」の言葉をもらえないことで、
自分の努力に「意味がない」あるいは、

「こんなにがんばっているのに報われない」とか
「わたしは何のためにがんばっているのか」という

虚無感や喪失感を感じているのではないでしょうか。




フランクルの言うように、
この「意味がない」には、どんな人もくじけてしまいます。


単に「忍耐力がない」ことが理由ではないし、
「厳しい指導」が直接の原因でもありません。




新人看護師の
『心のあり方』の問題なのです。



では、どうすればいいのでしょうか?




その答えのヒントは、
フランクルと同じ時代を生きた心理学者
アルフレッド・アドラーが教えてくれています。



『自立せよ』


ここで言う『自立』とは、
自分で考え行動する、あるいは自分で生計を立てる、
といったことではなく、心理的な自立です。



アドラーがいう『自立』とは、

「自分の価値を自分で決めること」です。





先の新人看護師の心理はこうです。

「『ありがとう』と言ってもらえない自分には価値がない」



すなわち、自分の価値を
患者からの「ありがとう」という言葉でしか決められないのです。




先のアドラーの自立の定義の逆です。

「自分の価値を他者に決めさせる」

これは、自立の真逆である『依存』した考え方です。





つまり、結論を言うと、
新人看護師は、心が『依存』の状態にあると言うことです。



ですので、そこから脱し、
少々の厳しい指導にも耐えられるように、

心を『自立』した状態に成長させる必要があるのです。




専門知識やスキルも、もちろん重要です。

が、心の成長はもっと重要ではないでしょうか。



先輩看護師として、
あるいは教育担当者として、
新人看護師の『心の成長』をサポートしてあげてくださいね。


《関連コラムを追加しました》
【WLBコラム】新人看護師の『心』を育てる方法とは?



では、今回はこの辺りで失礼します。


《関連するコラム》
看護師のためのタイムマネジメント

クリニック院長が絶対に取らなくてはいけない時間TOP3とは?

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