模倣としぐさの共有
「その子の内側の体験の世界」第58回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
「その子を見守る」の意は、その子を放ったらかしにするという意味ではありません。
その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
次は、「その子にはたらきかける」です。
親は、わが子が5歳になるまでに積極的にかかわることがとてもたいせつになります。
これは、子育ては「脳を育てること」で詳細に解説しました。
もう一度、読み直しましょう。
「その子にはたらきかける」15
排泄はお手洗いで、食事は箸で
模倣によって大人の行動を子どもがなぞれるようになると、それを社会的・文化的な約束やルールに則した行動の習得へと導く大人からの働きかけがはじまります。これが「しつけ」というもので、1歳過ぎ幼児期に入ると行われるものです。
排泄をどこでしようと生存には問題はありません。食事を箸で食べても手づかみで食べても栄養には変わりはありません。だからといって放っておく養育者はおりません。排泄はお手洗いで、食事は箸と茶碗でというのが、私たちが社会的・文化的に共有している約束です。わが子が自分たちと同じ「社会的な存在」へ育つことへの親の願いがしつけを促します。
それは、愛着的・性愛的なつながりで結ばれた親だから「こうしようね」と差し向けられるため、理屈抜きに幼児は取り組みます。また、親自身もお手洗いを使い、箸と茶碗で食べているから幼児も「自分もそうしたい」と積極的に真似をしようとするのです。
ここでの「しつけ」ですが、訓練ではなく、親子間の親和的な交流性が土台になっています。
次回に続きます。