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子育てとは脳をつくること5

吉田洋一

吉田洋一

テーマ:子育てとは

子育ての皆様へ。

 今までと全く着眼点が違う「子育て」論です。
 今日は、その5回目です。

 この寄稿文「子育てとは、脳を育てること」と「「楽しく、心地よい」身体運動と刺激が脳をつくる」は、「子育てとは」の共通テーマとなっています。
 これらの寄稿は、随時行っています。
 また、従前からのコラム掲載はこの「子育て」のために寄稿しております。
 この「子育てとは、脳を育てること」と「「楽しく、心地よい」身体運動と刺激が脳をつくる」をご理解いただき、また従前のコラム掲載を再度ご覧いただきながら、子育ての一助にしていただけたら幸いです。
 子育てとは脳を育てること。
 つまり、脳を育てることが子育てなのです。
 脳を育てるといっても、知識を詰め込ませるような子育て論ではありませんので、誤解しないようにしてください。

 では、子育てとしての「脳を育てる」とは具体的にはどういうことなのでしょうか。

 それは、神経細胞(ニューロン)をつなぐと脳のメッセンジャー役が派生し活躍するのです。

 脳は、さまざまなタイプの無数の細胞からできています。それらが数百種の化学物質を介して、互いにコミュニケーションを取りながら、私たちの思考や行動を一つひとつ決めています。一つの神経細胞(ニューロン)は、他の10万個ほどの神経細胞(ニューロン)から情報を受け取り、それを総合して自身の信号を送り出しています。
 神経細胞(ニューロン)の枝と枝の結合部位はシナプスと呼ばれ、最も重要な場所です。結合部位といっても、シナプスは接触しているわけではありません。実際には、電気信号が神経細胞(ニューロン)の軸索を通って分岐した枝の先のシナプスまで行くと、神経伝達物質がそれを化学信号に変えて、次の神経細胞(ニューロン)に伝えます。
 信号を受け取る側の神経細胞(ニューロン)の枝は樹状突起・ひげ根と呼ばれ、そこで神経伝達物質は受容体に受けとめられ、それによって細胞膜のイオンチャンネルが開かれ、信号は電気信号の形に戻ります。受け取る側の神経細胞(ニューロン)で電荷が一定の閾値を超えると、その神経細胞(ニューロン)は自らの軸索に沿って信号を送り、次の神経細胞(ニューロン)との間でこのプロセスを繰り返します。
 脳内の信号送信の約80パーセントを担うのは、二種類の神経伝達物質のグルタミン酸とガンマアミノ酸(GABA)で、これらは互いにバランスをとりあっています。グルタミン酸は神経細胞(ニューロン)の活動を活発にして信号の連鎖的反応を始動させます。一方、GABAはその活動を抑える働きをします。グルタミン酸が、それまで結合したことがない神経細胞(ニューロン)の間に信号を送ると、結合が促されます。信号の往来が頻繁になればなるほど、神経細胞(ニューロン)同士の連絡し合う力は強くなり、結合が増えます。共に発火する神経細胞(ニューロン)は、共につながります。グルタミン酸は、学習するうえで重要な要素です。
 一方、脳の信号操作とすべての活動を調整している一群の神経伝達物質があります。それが、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンです。これらを作り出す神経細胞(ニューロン)は、脳におよそ1000億個ある神経細胞(ニューロン)の1パーセントにすぎませんが影響は大きいのです。
 神経細胞(ニューロン)に命じてもっとグルタミン酸を作らせたり、神経細胞(ニューロン)がより効果的に情報伝達できるようにしたり、受容体の感度を変えたりします。また、余計な信号がシナプスに伝わらないようにして脳内の「雑音」を小さくしたり、逆に他の信号を増幅したりもします。
 グルタミン酸やGABAのように信号を送ることもできますが、その第一の役割は、情報の流れを調節して、神経化学物質全体のバランスを調整することにあります。
 このような脳のメッセンジャーたちは、生まれたばかりのころはほとんどはたらきませんが、神経細胞(ニューロン)と同様に、生後5年間の乳幼児期に「つながり」が爆発的に増えていきます。
 先ほども述べましたが、5歳までのこの時期が子育ての「力の入れる時」なのです。

 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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