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記憶3

吉田洋一

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テーマ:運動と脳

 記憶には海馬が重要な役割を果たしていますが、記憶を固定して保持しているわけではありません。海馬を損傷した人は、新しいことを覚えることができなくても、幼児期のことなどは思い出すことができるからです。
 短期記憶はリハーサルを繰り返すことで、長期記憶へと移行することができます。これを記憶の固定といいます。海馬では、感覚連合野や運動連合野から入力されて固定化されつつある情報を修飾しています。すなわち、エピソード記憶を、出来事の順序(時間)と場所を整理して、想起しやすくしていると考えられています。
 しかし海馬では、記憶の固定までは行ってはいません。海馬で整理された記憶は、側頭葉などの大脳皮質に固定されると考えられます。
 大脳皮質に固定された記憶を、どのように想起するかも、よくはわかっていませんが、エピソード記憶の場合は、やはり海馬が想起に関わっていると考えられます。記憶として固定されるまでの整理の段階で、海馬は想起しやすい何らかの回路を残しており、それを手がかりとして思い出すのではないかとみられています。
 その手がかりを残しやすくする方法として、シナプスの可塑性があります。シナプスを変化させてそれを維持する、すなわち記憶を深く刻むことで、想起もしやすくなります。また、記憶の要素を項目ごとに階層化したり、関連する一つのまとまりとして記憶しておくなどの工夫も、想起のしやすさにつながっています。
 記憶に関してはまだ不明な点ばかりですが、最新の研究では、脳の神経細胞の場合、脳発生初期以降は死滅するだけで再生することはないと、長い間信じられえてきましたが、近年では、成人の脳細胞も「新生」することがわかってきました。
 最初に証明されたのが、「海馬の新生ニューロン」です。ラットなどでは、ある種の学習や記憶に関わる行動をとると、新生ニューロンが増加することがわかり、人間も同様のことが起こるとされています。
 一方、記憶がつくられたり想起されるのを妨げるPPI(Protein Phosphatase 1)という酵素も発見されています。PP1の作用を抑制すると、記憶力が向上するというのです。
 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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