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「診断」のもつ意味②

吉田洋一

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テーマ:発達障害とは

 とはいえ、単純ではないのは、当事者である子どもやそのまわりの者に必要なのは、ただ名前を知るだけではなく、いまその子に起きている体験をどう理解し、具体的にどう支援すればよいかを知ることだからです。診断名とは、その子の外につくられた「引き出し」のラベルで、その引き出しを開ければ、ほかならぬその子個人への「理解」や「支援」が詰まっているわけではありません。たくさんある引き出しのどれかに過不足なくぴったり収まるとも限りません。
 それに加え、「操作的診断」は、近代医学の一般的な診断とは違って、病巣や病因、病理は考慮しない症状分類だけの診断のため、治療に直結できない弱点をもっています。
 「名前」はおろそかにできないけれども、診断名は診療へのいわば入場券に過ぎません。いったん入場すればチケットはただの紙片になるのに似て、いよいよ診療がはじまれば、診断名よりも、その子その子に即した理解や支援こそが本人やまわりにとって必要なものになります。そこでは名前ではなく、その子がどういう子なのか、どんな状況におかれているのか、まわりの心配はどこにあるのか、だからどうすればよいのか、等々の個別的かつ具体的な判断が求められます。また、この判断は治療が進むにつれ、変化や修正がなされていくことになります。
 このような把握が、広い意味での診断になります。分類という意味での「診断diagnosis」ではなく、理解という意味での「診断formulation」で、これを本人や家族、その子とかかわる人たちと分かちあっていくことが診療なのです。そして、できればその分かちあい自体が、治療性をはらんでいる「診断formulation」であることが望ましいのです。

※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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