脊柱管狭窄症の太もも痛が軽減、79歳女性の鍼灸施術5回の経過
杖を右手に持って、腰を少し丸めたまま、ゆっくりと部屋に入ってこられる。腰部脊柱管狭窄症と診断された方をお迎えするとき、私はまずその歩き方を黙って見ています。鍼を持つ前の、いちばん大事な時間だと思っているからです。
「病院でMRIまで撮って、狭窄症だと言われました。もう年だから仕方ないですね」。そうおっしゃる方によく出会います。とくに畑や庭の手入れが生活の一部になっている方ほど、この言葉を口にされます。
ただ、私はその「仕方ない」を、そのまま受け取らないことにしています。年齢を理由に最初からあきらめないというのは、当院が基本姿勢として変えていない部分です。
今日は、狭窄症と言われた方に対して私が何を見て、どんな順番で施術を組み立てているのかを、77歳女性の事例をもとにお話しします。
歩けないこと、畑に出られないこと
来院時、この方が最も困っておられたのは歩くことでした。右足に体重をかけることが難しく、前かがみにならなければ歩けず、杖が手放せない状態が続いていました。寝返りを打つだけでも痛みが出て、腰を反らすこともできません。日常生活全般に支障が出ており、生活の質(QOL)は大きく低下していました。
一方で、安静時や夜間に激しい痛みが出ることはありませんでした。動作のたびに症状が出るという点は、施術を組み立てるうえで重要な判断材料になります。
もう一つ、この方の気持ちを大きく占めていたのが、畑仕事ができなくなったことです。「もう少し身体を楽にしたい」「もう一度畑仕事がしたい」。そうした思いから、当院での鍼灸施術を希望されました。
初診で確認したこと
画像でどの部位が狭窄しているかは、施術の計画を立てるうえで欠かせない情報です。ただ、私が最初に確認したのは画像そのものではありませんでした。
この方の場合は、杖歩行であること、前かがみでなければ歩けないこと、寝返りで痛みが出ること、腰を反らせないことを、これらを実際の動きの中で一つひとつ確かめていきましたが、安静時や夜間の激しい痛みがなく、動作時にのみ症状が出ているということから、神経の出口付近が圧迫されて痛みやしびれが出ている状態を想定しました。
血流の改善を優先した初期の施術
初診では、神経周囲の血流を整えることを最優先にし、腓骨神経にあたる部位へ低周波鍼通電療法(鍼に微弱な電気を流し、筋肉や神経周囲の血流をうながす方法)を15分行いました。
痛みが徐々に軽くなってきた段階で、臀部の筋肉である中殿筋への置鍼、腰背部のツボである脾兪・腎兪への長生灸レギュラー、遠赤外線による温熱施術を、その日の状態に合わせて加えていきました。
時期に応じて施術の目的を変える
この事例で特に意識したのは、症状の時期に応じて施術内容を変えていくことです。
急性期は、神経周囲の血流改善を最優先にし、改善期には、臀部の筋緊張をゆるめる施術を加えました。そして症状が落ち着いた維持期には、畑仕事を続けられる身体づくりと再発予防、季節や作業量に応じた施術内容の調整を重視しています。
痛みがなくなったところで終わりにするのではなく、元気に趣味を続けられる状態を長く維持することを、この方への施術の目標にしました。
歩行状態の変化
施術を始めてからおよそ1か月で、杖を使わずに歩けるようになりました。日常生活での支障も大きく減り、一旦施術を終了しています。
その後はご本人の希望もあり、月1回程度のメンテナンス施術に移行しました。強い痛みを取り除く段階から、身体のバランスを整えて再発を防ぐ段階へと、施術の目的を切り替えています。
2024年には、草むしりのあとに左の臀部に痛みが出ました。中殿筋への置鍼と長生灸レギュラーを行い、緩和しています。2025年11月には、寒い中で子芋を収穫したあとに右の腰痛が再発しましたが、右腰部と臀部への低周波鍼通電療法と遠赤外線照射で、その日のうちに痛みが軽減しました。以後は大きな再発なく、多少の筋疲労や腰痛が出ても早めの施術で持ち直しており、2026年8月現在も良好な状態を維持されています。
嬉しかったのは、この方が、歩行や生活面での変化を実感されていたことです。畑仕事は、この方にとって単なる作業ではなく、生きがいであり日々の楽しみでした。好きなことを再び楽しめるようになったことが、身体だけでなく表情や気持ちにも良い変化をもたらしていたのが印象的でした。
この事例から伝えたいこと
腰部脊柱管狭窄症は加齢とともに増える病気ですが、だからといって、諦める必要はないと私は考えています。
症状の原因は、神経の圧迫だけとは限りません。筋肉の緊張や血流の低下が重なっているケースも少なくありません。適切な施術と生活動作の工夫を続けることで、歩行能力や日常生活動作が改善に向かうケースがあります。痛みが落ち着いたあとも定期的なメンテナンスを続けることで、再発を防げることも多くあります。
もう一度趣味を楽しみたい方、また旅行や畑仕事がしたいという方は、一度専門家に診てもらうことをおすすめします。
まとめ
腰部脊柱管狭窄症は、高齢になると付き合っていくしかない病気だと思われがちですが、今回の事例のように、神経だけでなく筋肉や血流の状態も含めて評価し、その時々の状態に応じて施術内容を調整することで、日常生活の質が大きく改善することがあります。
・狭窄症と言われ、歩くことがつらくなってきた方
・病院での治療と併用しながら鍼灸を試してみたい方
・畑仕事や旅行など、これからも続けたいことがある方
この方の施術例はインスタグラムでも紹介しています。
金沢市北安江のトキの森鍼灸院では、はり・きゅう基本コースを中心に、おひとりずつ計画を立てて施術プランをご提案しています。
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またご予約・ご相談はホームページから承っています。
※施術の効果には個人差があり、本事例は一例です。同じ診断名でも症状や改善経過は人によって異なります。


