デイビッド・セイン著「日本人のちょっとヘンな英語」について考える~その2
皆さんご存知と思いますが、デイビッド・セイン氏は、東京で英会話学校を経営しながら多数の著書を刊行されているアメリカ人です。先日発売になった彼の近著「爆笑!コミックエッセイ 日本人のちょっとヘンな英語」が、話題を呼んでいます。同じ著者のビジネス英語についての他の本は私も買ったことがありますが、なかなかためになる本でした。この「日本人のちょっとヘンな英語」は、「実はあなたの英語、ネイティブにはこう聞こえています」という、日本人が知らずに恥をかくような日常表現での間違いが、コミックの中でたくさん取り上げられているものです。
実は、読む前に私の家族や生徒さんたちから、「面白そうな本だと思って読み始めたけれど、不愉快になった」という感想を少なからず聞いていました。最初の数ページを読んで、その理由がすぐにわかりました。しかし本の帯にも35万部突破とありますから、とても売れている本には違いありません。そこで、アマゾンのレビューを見てみると、なかなか手厳しいものも含まれており、中には「買わないでください」と言うものまでありました。
ブログでこの本の間違いを詳細に一つずつ検証した人もいます。私もセイン氏が正解として出している英語表現そのものについて、疑問を感じる箇所がいくつかありました。そこで、私もグレン社長と一緒に、一つずつ考えてみました。
たとえば "I lost my shirt." という高校生のエミの発言に対して、ホームステイしているケイトは「ではお金貸してあげるよ」と言います。「今日着ていくつもりだったお気に入りのシャツがない」という意味でエミは使ったのですが、 "lose one's shirt" は「一文無しになる」という意味があるので、正しくは "I lost my shirts."と複数形で言わないとダメよ、とケイトが説明するというコミックです。
私も "lose one's shirt" と単数でshirt を使うとそういう意味になることは知りませんでした。しかも、エミが言うように「見つからないシャツは1枚なのに、複数形なの?」という疑問はもっともです。そこでグレン社長に聞いてみたところ、 "lose one's shirt "という表現は、ギャンブルなどで着ているシャツまで失くして無一文になってしまった、という意味で使うそうです。しかしシャツが見つからない時には、日本語のそのまま の意味で "I can't find my shirt." というのが普通でしょう。"I lost my shirt."とエミに言わせる設定そのものに無理があるというのが彼の意見です。また、「シャツが(1枚)ない」をどうしても lose を使って言うのであれば、ケイトの解説のように"I lost my shirts."と複数形を使うのはやはりヘンです。"I lost the shirt." "I lost my favorite shirt." あるいは "I lost one of my shirts.”などと言う方が自然でしょう。
このように、一つずつ検証していくとかなり大変なことになってしまいます。そうした個々の英語表現よりも問題なのは、セイン氏の英語教師としての姿勢だという点で、グレン社長と私の意見は一致しました。長くなるので、その話はまた次回に。
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