学校現場で子どもの自己肯定感を高める方法
自己肯定感の根底にはありのままの自分を許し受け入れる「自己受容」の心があります。
自己肯定感を高めようとするのなら、強い自分・美しい自分になって自信をつけようとするのではなく、ダメなところもあるそのままの自分を許し受け入れるようにしていくことが大切です。
子どもの自己肯定感を高める上でも「ありのままの子ども」を許し受け入れ、肯定していく関わりが必要です。
9月5日(日)午後からオンライン講演がありました。
テーマは「子どももおとなも自己肯定感を高める方法」。
主催は、はりまCAPリバ様です。
自己肯定感とは
自己肯定感とは「自分はそのままで愛され、喜ばれ、価値のある人間であるという自分自身に対する信頼感」です。「そのままで」というのがポイントです。欠点も含めた丸ごとの自分ということです。
自己肯定感は、そのままの自分を許し、受け入れ「OK」を出すこと。
I am OK. You are OK.
自分でいい、自分がいい、この自分で生きていく。
そういう心持ちです。
それは失敗した時や挫折した時に「こんな自分なのに受け入れてもらえる。愛されている。」そう感じた時にこそ高まるものです。
「ダメな自分、弱い自分も許し受け入れる。だからこそ人も許せるし、受け入れられる。」そういう「自己受容」「他者受容」の心が根底にあります。
子どもの自己肯定感を高める7つの関わり
子どもの自己肯定感を高める接し方や言葉がけにはどのようなものがあるのでしょうか。
1、幸せを受け取る(子どもの存在を喜ぶ)
2、そのままを愛する(変えようとしない)
3、子どもの善さを見る(尊敬する)
4、話を聴く(口を挟まず最後まで)
5、気持ちを理解しようとする(押し付けない)
6、信じて任す(管理者ではなく援助者になる)
7、弱さや欠点を受け入れる(許し合う)
Q&A 不登校の子にどのように言葉をかけたらいいですか?
Q&A 良い関わり方をしたいのに上手く出来ません
1、幸せを受け取る(子どもの存在を喜ぶ)
子どもがいてくれるからこそ生まれる喜び。
それを受け取り親としての幸せを十分に味わうこと。
そしてそれを言葉にして伝えること。
「〇〇ちゃんがいてくれるから楽しい」
「お母さんの所に生まれてきてくれてありがとう」
「〇〇ちゃん、だ〜い好き」
そんな言葉や態度が子どもの自己肯定感を高めます。
2、そのままを愛する(変えようとしない)
そのままを愛するとは、やんちゃな子はやんちゃな子のまま、引っ込み思案な子は引っ込み思案な子のまま、そのままを愛するということです。
それは一言で言うと「子どもを変えようとしない」ということです。
不登校の子を学校に行かそうと説得したり、約束したり、そんなことをすればするほど子どもは自信をなくし学校に行けなくなってしまいます。「無理に行かなくてもいいよ」と心を楽にしてあげて安心させてあげることで子どもは元気を取り戻し、前向きな意欲も出てきます。
発達障がい傾向のある子も、偏食やこだわりや様々な困りごとを直そうと躍起になればなるほど余計にひどくなります。直そうとするのではなく、その子の本当の気持ちを理解し、「無理しなくていいんだよ」「あなたはあなたでいいんだよ」と安心させてあげることがその子の発達を促し、結果的に困りごとの解消につながります。
そして、そのような関わりが自己肯定感を高め、そのことによって二次障害(うつ等精神疾患)の予防につながります。
3、子どもの善さを見る(尊敬する)
子どもの良いところを見て言葉にして褒める。
「できたね」「偉いね」など上からの評価的な言葉ではなく、「尊敬する」「見習いたい」といった対等な立場からの褒め言葉の方が子どもの自己肯定感を高めます。
ここで注意しなければならないのは親の望む方向に誘導するために褒めてはいけません。
狙いを持った「褒め言葉」はいつか子どもの信頼を失います。
何の狙いもなくただ「素晴らしい」と思ってもらえたから子どもは嬉しいのです。
その感動、喜びを伝え合い共有する。
そういう関わりが親子関係を良好なものにし、自己肯定感を高めるのです。
4、話を聴く(口を挟まず最後まで)
相手の話を聴く、耳を傾けるというのは「あなたが好きですよ。あなたを大切に思っていますよ。あなたを理解したいと思っていますよ。あなたを尊重していますよ。」という無言のメッセージなんですね。
また、あなたの話は聴く価値があるということは、あなたには価値があるということでもあります。
「話を聴く」
それは静かな、それでいて強力な愛情表現です。
「自分はこんなにも愛されている。こんなにも大切にされている。尊重されている。」
そういう思いが自己肯定感を高めます。
5、気持ちを理解しようとする(押し付けない)
親や教師は子どもを指導しようとする意識が働くせいか、どうしても自分の意見を押し付けがちになります。それは子どもからすると自分の意見や思いをわかってもらえないという気持ちになるものです。
子どもは「自分の素直な思い」を親や教師から大切にされることによって「自分は大切な存在なんだ」と自己肯定感を高めます。子どもが自分の正直な思いを言いやすくしてあげること。そしてその思いを否定せずに「そう感じるんだね」と受け止め、理解していこうとする姿勢が大切です。
6、信じて任す(管理者ではなく援助者になる)
「自分は信頼されている。信じて任せてもらっている。」
それが自信となり、勇気となり、自己肯定感を高めます。
また援助者になるとは子どもに命令・強制するのではなく、「こうしたらどう?」と提案するにとどめるということです。最終判断はあくまでも子ども自身であり、決定権は子どもにあるということです。
「あなたの考えで決めたらいい」
これはとても強い信頼の言葉であると同時に覚悟の言葉でもあります。
なかなか言えない勇気のいる言葉です。
それだけに局面を打開する力を持った言葉です。
7、弱さや欠点を受け入れる(許し合う)
自分のありのままをを許し、受け入れること。
これを「自己受容」と言います。自己肯定感の土台となるものです。
自分のダメなところや情けないところを否定せずに「あるもの」として受け止める。
それらを失くそうとするのではなく自覚し受け入れること、その上で出来るだけそのマイナス面が出ないように工夫すること。そうして初めてその弱さや欠点はコントロール可能になり、自分を責めることをやめられるようになります。
子どもが「自己受容」できるように、子どもの弱さや欠点を「あるもの」として受け止めてあげてください。子どもを責めることなく、それらを許し受け入れてあげてください。その上でどうすればいいかを一緒に考えてあげてください。そのような関わりが「他者受容」にもつながり、良好な人間関係を作る基礎となります。
Q&A 不登校の子にどのように言葉をかけたらいいですか?
Q. 不登校の我が子に「無理しなくていいよ」と言ってあげたいのですが、そうすると安心してしまってずーっと学校に行かなくかなってしまうのではと心配になります。やはり学校に行くように言った方が良いのか・・。
どのように言葉をかければいいでしょうか?
A. やはり「無理しなくていいよ」とお子さんが安心できるように言葉をかけられるのがいいと思います。いつでも休めるという安心感がある方が「今日1日だけは頑張って行こう」と前向きな気持ちになれるものです。例えばあなたがパート勤めをしていて嫌な同僚やパワハラ上司がいて、もう辞めたいと思っているとしましょう。そしてそれをご主人に相談したとしましょう。「私、パートを辞めようかと思っているんだけど構わないかなあ?」と。そのときご主人が「ダメダメ。家計のことを考えたら今辞めてもらったら困る。」と言われたら余計に辞めたくなるし、ご主人に対して信頼も持てなくなるし、夫婦関係も悪くなるかもしれませんよね。でも逆に「いいよ。嫌な思いをするくらいならパートを辞めた方がいいよ。」と言ってくれたら、かえって勇気も湧くし、前向きな気持ちにもなれるし、そうすると多少嫌なことがあっても「負けるもんか。気にしなければいいだけ。」と頑張ろうと思えるんじゃないですか。子どもも同じです。「休んだらいいよ」と安心させてあげる方がかえって頑張ろうという前向きな気持ちになりやすいし、学校に行く勇気も生まれるものです。
Q&A 良い関わり方をしたいのに上手く出来ません
Q. 自己肯定感を高める関わり方はその通りだと思うのですが、一方で「もっと勉強してほしい」との思いもあり、ついつい口うるさく注意してしまいます。どうしたらもう少し上手に接することができるようになるでしょうか。
A. この「子どもの自己肯定感を高める7つの関わり」を知らない多くの親御さんは「子どもの悪い所を直すのは親の役目だ」と何の反省もなく口うるさく注意されています。それが悪いことだとは思わないから言い方もきつくなるだろうし、しつこくもなるでしょう。
でも、あなたは口うるさく注意することが良いことではないと知っておられます。そして反省もしておられます。そうすると「言わないように気をつけよう」とされるから、自然にその回数も減っていきますし、言い方も優しくなるんじゃないでしょうか。
だからこそ子どもへの良い関わり方を知ることが重要です。
それを知っていれば悪い関わりはやめようと心がけますし、良い関わりをしていこうとしますよね。それで十分だと思います。完璧を目指さずにいつも「出来るだけそうあろう」とするでいいんじゃないでしょうか。
大人の自己肯定感を高める10の方法
「私、自己肯定感低いんですけど、どうすれば高めることができますか?」
そのような思いを持たれている方も多くいらっしゃると思います。
自己肯定感が高いと、人生や生活に対して前向きになれますし、仕事面においても主体的・積極的に取り組めるようになるので成功の確率も上がります。周りとの人間関係も良くなり幸福感も増します。何より人生を自分らしく生きられている実感があります。
では具体的にどうすれば自己肯定感を高められるかについてお話ししていきましょう。
1、自分に対する要求水準をうんと下げる
2、我慢グセをやめる
3、支配的で口出しの多い親や友人と距離を置く
4、時には好き嫌いで物事を決めてみる
5、やりたいことは思い切ってやってみる
6、人と比べず、ありのままの自分を生きる
7、悪かった原因ではなく良くする方法を考える
8、人からほめられよう、認められようとしない
9、自分の素直な気持ちをそのまま伝える
10、子どものことは子どもに任せる
1、自分に対する要求水準をうんと下げる
自己肯定感の低い人は自分への要求水準が非常に高い傾向があります。
完璧主義なんですね。
完璧主義だと、なかなか自分を褒めたり満足することができません。
上手くいって当たり前、少しでも失敗すると自分を責めて落ち込んでしまう。
これは自己肯定感の低い人ほど自分を過大評価する傾向にあり、それゆえ過大な要求を自分に課してしまっているからです。
まずはありのままの等身大の自分を認めて「60点なら上出来」と自分に対する要求水準をうんと下げることから始めましょう。
2、我慢グセをやめる
言いたいことも言えず相手に合わせてコトを治めるクセを「我慢グセ」と言います。
それは自分を大切にしていない証拠です。
自己肯定感と「自分を大切なかけがえのない存在だ」と思える自尊感情はとても似ています。
まず、自分が自分を大切に扱うこと。
この「我慢」という言葉、実は仏教用語なんですね。
自分が我慢してやっている、というのは慢心であり、決して褒められたことではないんですね。
本当は自分は相手に我慢してもらっている方かもしれないのですから。
「我慢グセ」があるとそういう考え方が出来ず、「いつも私が我慢している、させられている」という被害者意識ばかりが強くなってしまいます。被害者意識からの脱却が大切です。
3、支配的で口出しの多い親や友人と距離を置く
あなたの考えや思いを尊重せず「こうすべきだ」「こうした方が良い」と自分の意見を押し付けてくる親や友人とは距離を置きましょう。
それらの人たちは、あなたがあなたらしく生きることを良しとしません。
それらの人たちは世間体や常識、自分の偏った価値観に縛られていて自由に自分らしく生きられていないので、そういう自由で自分らしい生き方が認められないのです。
ただし、これについては自分がそれらの人たちと同じになっていないかを自問する必要があります。
特に自分の子どもに対してはそのようになりがちです。
4、時には好き嫌いで物事を決めてみる
自己肯定感の低い人は物事を決める際、自信がないので他人軸で決めることが多いんですね。
それに対して自己肯定感の高い人は自分の考えや思いに対して引け目を感じることがないので自分軸で決めることができます。
自分の内面の声を聴く。
自分の心の声を大切にする。
そしてその声に従って決める。
それこそが「自分で決めた」ということです。
この「自分で決めた」という感覚が持てれば持てるほど自己肯定感も幸福感も高まります。
ちなみに幸福感を決定づける要因の第1位は健康、第2位は良好な人間関係、第3位は自己決定、第4位は年収、第5位は学歴だそうです。(神戸大学と同志社大学の共同研究)
5、やりたいことは思い切ってやってみる
「やりたいことがやれている自分」という自己イメージはとても精神的に良い自己イメージです。
自分の望む人生を生きている。
そう思えるならあなたはとても幸せです。
これこそ自己肯定感です。
自分のやりたいことをやるきっかけは危機的状況の時に訪れます。
危機的状況を打破するためには「何をしなければいけないの?」と考えてはいけません。
義務感から生まれる工夫や努力ではその状況を打ち破るだけの力とはなりません。
「是非ともやりたいことは何か?」と自問し、自分が心から情熱を持って取り組めるものに注力することが行き詰まった局面を打開する力を持つのです。
6、人と比べず、ありのままの自分を生きる
自己肯定感が低い人はとにかく自分と他人を比べることが多いです。
常に自信がないというか不安なんですね。
だから人と比べて自分の位置を知りたい衝動にかられるんですね。
人と比べないと自分がOKなのか、幸せなのかすらわからない。
やっぱり他人軸(世間軸)なんですね。
そして、人と自分を比べて落ち込む。人の子と自分の子を比べて落ち込む。
この人と比べて落ち込むクセをやめない限りは自己肯定感を高めることはできません。
人は人、自分は自分。
他者からの評価ではなく、自分の内面の満足や日常の中のささやかな喜びに幸せを見出すように心がけましょう。
7、悪かった原因ではなく良くする方法を考える
悪かった原因を探るとついつい自分を責める方向に行ってしまいます。
大切なのは「次、失敗しない」ためにはどうすればいいかを具体的に考えることです。
負の感情に溺れると冷静に客観的に分析するができなくなるので自分を責めてはいけません。
「何が悪かったのか」と原因や過去を追求する思考から、「どうすれば今後同じ失敗を回避できるか」と今後への取り組みを具体的に考える思考へと変えましょう。
我が子を虐待する度に自分を責め落ち込むお母さんがいますが、それではいつまでたっても自分の力で虐待を止めることはできません。自分を責めるのをやめて、そうしてしまう自分を「辛かったね。そうなっちゃうよね。」と受け入れ、許した上で「どうすれば叩くことを止められるか」と自分に合った具体的な方法を考えるようにすると虐待も止められる可能性が出てきます。
8、人からほめられよう、認められるようとしない
これは具体的に言いますと、
・いい人をやめる
・優秀な人をやめる
・努力する人をやめる
・我慢する人をやめる
ということです。
そうして色々良さそうなものをやめたら、残るのはありのままの自分です。
人間には普通、二つの自己があります。
ありのままの自分(現実自己)とあるべき自分(理想自己)です。
この二つの自己の乖離が激しいと葛藤が生まれ、精神的に不健康な状態になります。
理想自己に現実自己を合わそうとして、
・フリする
・無理する
・我慢する
これでは心は病むばかりです。
大切なのはありのままの自分(現実自己)を受け入れることです。
臆病者の自分を否定しない。
行動力、決断力のない自分を否定しない。
傲慢な自分を否定しない。
ありのままにこれらの自分を受け入れる。
自分のダメなところを知って、自分のダメなところを受け入れた時、その欠点は初めてコントロール可能になります。
自分が臆病者であると知っているからこそ、ココ一番という時には自分の臆病な心に負けずに大胆に決断し行動することができるのです。
自分がすぐに傲慢になりやすい人間であると知っているからこそ常に「傲慢になっていないか」と気をつけ、かえって傲慢にならずに済むのです。
ありのままの自分を知って受け入れる。
自分の欠点を知ってその欠点を受け入れる。
そうするとその欠点はコントロール可能になり克服できるのです。
それが自己一致の状態です。
ありのままの自分で安心できている状態です。
この状態が自己受容の状態であり、自己肯定感が最も高い状態です。
こうなりますと今まで葛藤に使われていた心的エネルギーが前向きな意欲となって自分らしく積極的に生きられるようになります。
9、自分の素直な気持ちをそのまま伝える
自己肯定感の低い人は、自分の感じ方に自信がありません。それでどうしても自分の素直な気持ちをそのまま伝えることが出来ません。
逆に自己肯定感の高い人は自分の思っていることをそのまま出します。
自分の思いや感じ方に対して引け目を感じないからです。
自分の素直な気持ちを伝えると、それを聞いたあなたの周りの人はできる範囲であなたの気持ちに添った対応をしてくれるようになります。
あなたは周りから大切にされていることを実感するでしょう。
それはあなたが自分の素直な気持ちを大切にしたからです。
それが自分を大切にするということです。
自分が自分を大切に扱ったからこそ、他者もあなたを大切に扱ってくれるようになるのです。
10、子どものことは子どもに任せる
自分のダメなところや欠点は許し受け入れられるようになった。
人が評価してくれるものではなく、自分が好きなことやりたいことを選べるようになった。
そのおかげで自由に自分らしく生きられるようになった。
でも、それで終わりではありません。
この詩をご覧ください。
詩 「自分らしく幸せに生きる方法」
正しい方ではなく
楽しい方を
得な方ではなく
幸せな方を
人から認められる方ではなく
自分の好きな方を
「選べばいい」と子どもに言う
by はせがわみつる
自分を許し、受け入れ、自己肯定できたように思えても子どもに対しては本音が出るものです。
自分は好きな方を選んでいるのに、子どもには「こっちの方が得だよ」と自分の価値観を押し付けているようでは本当に自己肯定できているとは言えません。
子どもに自分の好きな方を選んだらいいんだよと心から言えるようになった時、あなたは自分らしく幸せに生きられるようになっているのです。
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