アドラー心理学の子育てには「対等な関係」だけでなく「共同体感覚」の養成が必須

長谷川満

長谷川満

テーマ:子育てパネルトーク

 昨日6月3日(日)は午後から第5回参加型子育てパネルトークがありました。
 テーマは「アドラー心理学の子育てについて語り合う」。



 まず最初に「アドラー心理学の子育て」における3つの基本的な考え方についてお話ししました。

 

1つ目、親と子は「対等な関係」である


 まず1つ目は、親と子は「対等な関係」であるということです。
 親子関係がうまくいかない大きな原因の一つに「上下関係」があるとアドラーは考えました。
 親が子に命令したり、親の考えを押し付けたり、
 子は親に従うのが当たり前として子どもに接すると
 子どもは親に不満を抱くようになり、ついには反抗するようになります。
 その関係が悪化してはいい子育て、いい教育はできません。
 まずは親は子どもを指導し従わせる存在ではなく、
 互いに信頼し、尊敬し合う対等な存在として接することが、
 良好な親子関係を築く上で不可欠だと考えました。

2つ目、「課題の分離」を意識して過干渉をやめる

 
 2つ目は「課題の分離」です。
 親子関係がうまくいかないもう一つの大きな原因に親の過干渉があります。
 親は子にその愛情や心配から過干渉になってしまいがちです。
 親は子を思う愛情からやっているつもりですから、
 自分の価値観の押し付けになっていることには無自覚なことが多いのです。
 子どもは自分の自由を奪われたように感じ親子関係は悪化します。
 「これは子どもが自分の意思で決めることである。
  いらぬ口出しは子どもの自由や主体性を奪うことになる。」
 と自覚して、子どもの問題については極力口を出さない。
 それが「課題の分離」ということです。

3つ目、「共同体感覚」を養うことが自立の基礎になる


 3つ目は「共同体感覚」です。
 共同体感覚とは、
 「この共同体(家庭、学校、会社、地域、国、地球)は私の味方である、
 ここに私が安心していられる居場所がある、
 私はこの共同体に貢献したい、共同体のメンバーの役に立ちたい。
 そしてそれを行う能力も意志も私は持っている。」
 そういう感情を養成することが教育において重要だとアドラーは考えました。
 違う言葉で言うと「自己信頼(自己受容)」「他者信頼」「他者貢献」の気持ちを身につけるということです。そのような「共同体感覚」を持つことが子どもが自立していく基礎になると考えました。

アドラー心理学の子育ての考え方

 
 そのための具体的方法として「アドラー心理学」はこのような関わりを示しています。


 


 

どうして親子関係は上下関係ではいけないのか

 


 どうして親子関係は上下関係ではいけないのか?
 最近の子は親や先生に対しても偉そうに言ったり、言うことを聞かなかったり、そんな現状を見るともっと上下の区別をはっきりつけて厳しくやった方がいいのではないか?
 という意見も出ました。

 これは当然といえば当然の意見です。

 そして、そういう現状があるのも事実です。
 ただし、これはアドラーの言う「対等な関係」が実現された結果、起きている現象ではなくて、不徹底で中途半端な「上下関係」がもたらしている現実だということを理解しておかねばなりません。

 戦前の日本のような徹底した「上下関係」の中では、上の者に対して生意気な態度を取ることも反抗することも許されていないので、現代のように先生に対して失礼な態度をとる子どもはほとんどいませんでした。
 
 戦後、徹底した「上下関係」の反省から、父親、母親、教師、学校は「対等な関係」になりました。
 こうして大人どうしは対等になり、子どもだけは親や教師に従うものとして下に置かれる構図になりました。
 そうすると父親、母親の言うことが違っていたり、親と先生の言うことが違っていたり、時に先生の意見が親によって覆されたり、そんな場面をしょっちゅう目にする子どもたちは、親が言うことも先生が言うことも絶対的に正しいとは思わなくなります。
 今の子どもたちの無秩序な姿もそういう所から来ているように思います。

 

「共同体感覚」を養うことで子どもは変わる





 では、アドラーの言うように徹底して「対等な関係」を実現したら、それらは良くなるのかといったらそうではありません。
 子どもたちが学校や先生や同級生たちを、自分を助けてくれたり、安心して学校やクラスに居れたり、そしてみんなのために、クラスのために、学校のために自分も何か役に立ちたいという気持ちになれる「共同体感覚」を養うことが大事になります。

 そのためには子どもたちが学校を自分にとって「良きもの」と認識しなければなりません。
 学校は安心して通える所、楽しい所、自分を成長させてくれる所と子どもたちが認識し、そこで自分が貢献する喜び、感謝される喜びを体験することが大切です。
 また教師は子どもとの間に相互尊敬、相互信頼の関係を築くべく、教師自らが子どもを尊敬し、尊重し、信頼していく必要があります。そうすることで子どもも先生を尊敬し、信頼するようになります。
 
 実際、私が家庭教師として担当する生徒さんにおいても、はじめは不真面目な態度であったりしても、その子の味方になって、宿題やテスト勉強を手伝ったり、その子の良いところや成長したところを親に伝えたり、そういうことを通して「この先生は本当に僕のことを理解しようとしてくれている、大切にしてくれている、本当の意味で僕を助け、成長させようとしてくれている。」と認識してくれると態度が変わってきます。
 言葉遣いが丁寧になったり、僕に対して思いやりの言葉や感謝の言葉を言ってくれたり、敬意が感じられるようになります。また心を開いて正直に自分のことを話してくれたり、相談してくれたりするようになります。
 
 そういう意味では変わるべきは子どもの方ではなくて、まずは私たち親や教師の方であるように思います。

 学校や家庭が子どもたちにとって安心できる場所であるかどうか、楽しい場所であるかどうか、自分たち大人がそういう学校や家庭にしようとしているかどうか、子どもにばかり求めてはいないだろうか。

 そういうことを一度立ち止まって考えてみてもいいのではないでしょうか。






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長谷川満
専門家

長谷川満(家庭教師)

家庭教師システム学院

発達障がいや不登校の子の意欲を引き出すには自己肯定感を高める必要があります。その子のありのままを受容し、信頼関係を築き、成功体験と褒め言葉で自信と意欲を引き出します。

長谷川満プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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