第47回ペアレントセミナー「子どもの思春期・親の思旬期」終了しました。<後編>

長谷川満

長谷川満

テーマ:ペアレントセミナー

 <前編>からお読みになりたい方はまずこちらをご覧ください。
 http://hasegawa-mitsuru.seesaa.net/article/457177292.html

 



 自我というのは、例えて言うと国家でいうところの「政府」です。
 そして、本音や弱音を含めた自分全体が「国民全体」だと考えてください。

 「政府」には二つの顔があります。
 一つは国民生活を守り、国民の権利や自由、幸せを第一にする守護者の面と、
 もう一つは国民を管理監督していこうとする統治者の面です。

 「政府」は国民の代弁者、代表者であったはずが、知らず知らずのうちに国民(本音の自分)を抑圧する方向に働くようになります。独裁国家や一部の社会主義国家をイメージしていただけるといいかと思います。

 こうなりますと、政府(自我)は自分にとって都合のいいことしかしなくなります。
 自我の目的は「自己安全」ですから、自我にとって都合のいいこととは「今まで通りに、今までの自分で」「常識的に無難に安全に」「人から批判されないように」生きることです。
 そういう生き方を自我が押し付けてくるわけです。自分自身に。





 でも、本当の幸せは「ただ安全に生きる」ことだけではなく、もっと自由に、もっと自分らしく、もっと自分を生かして生きていきたいというところにあります。
 その自己実現的生き方をを邪魔しているのが自我です。
 自我の考えとしては、そんな危険なリスクの多い生き方ではなく、もっと安全に生きて欲しいのです。
 そして、それが行き過ぎると自分の本音を抑圧する方向に行くのです。
 
 ここでもう一度この図をご覧ください。





 ここでまた例え話で説明します。
 日本は近代において大きく2度そのあり方が変わりました。
 それが人間の心の成長ととても似ているのです。

 一番最初の自我未満の状態が、日本の江戸時代までの封建時代だとしましょう。
 そこに泰平の眠りを醒ます蒸気船がやってくるわけです。
 そう。「ペリー来航」です。
 ここから明治維新へと動いていくのですが、
 この激変に当たるのが人間でいうと「思春期」です。
 
 日本人が民衆レベルで自我を獲得したのはこの明治時代以降です。
 お侍さんや学者さんで自我を持っていた人はいたでしょうが、それ以外の一般庶民はそんなものとは関係なく生きていたと思われます。
 そして自我の時代が、明治、大正、昭和と続くのですが、
 日本におけるこの自我の時代も太平洋戦争の敗戦と共に終わり、脱自我(戦後の日本)の日本へと生まれ変わったわけです。

 どう生まれ変わったのか?

 政府は国民の幸せを増大させるために、国民生活を向上させるために生まれ変わったのです。
 そして憲法では国民主権となり、政府の上に国民が置かれるようになったのです。
 国民の権利や自由を守ることが政府の最も大切な役目となりました。

 太平洋戦争の敗戦。
 この出来事は当時の日本にとって起こってほしくない出来事でした。
 でも、国民にとって幸せな結果に繋がりました。 

 これを個人に当てはめますと、自我の時代の終わりには何らかの問題が起こってきます。
 それは子どもの不登校であったり、病気であったり、リストラであったり、親の死や介護の問題・・。
 日本にとってのあの敗戦のように。

 個人にとっては起こってほしくない、避けたい出来事なのですが、
 実はこの時の問題や悩みこそが「脱自我(自己実現)」の扉なのです。
 この問題を通して、自我はその支配的を地位を追われ、その代わり自己実現をより社会に適応した形で実現できるように機能するようになるのです。



 ここである一人の女性の自己実現までの道のりを見てみましょう。

 その女性はご両親との縁が薄く、12歳からおばあさんと二人暮らしでした。
 慎ましい暮らしの中で年に1回だけ行く旅行が何よりの楽しみだったそうです。
 その後、彼女は29歳で結婚したい男性が現れるのですがおばあさんは猛反対。
 しかし彼女はその反対を押し切って結婚します。
 結婚した矢先、彼女は重度のうつ病にかかります。
 仕方なくおばあさんのいる実家に帰って静養しますが、それが最後の二人の時間となります。
 元気になってご主人のいる家に戻って1ヶ月半後、おばあさんは急死されました。
 たった一人の身内を亡くし心はまた暗く沈み込んでいきましたが
 そんな彼女を救ったのは何気ない京都の街の風景でした。
 ちょっと歩けば神社がありお寺がありました。
 そこに植わっている梅や桜の木は春になると花を咲かせます。
 それらが心を慰めてくれました。
 立ち直った彼女は自身の経験を生かして心理カウンセラーになる夢を持ちます。
 4年間かけてカウンセリングを勉強し、資格も取ってさあ開業というときに
 様々な事情が重なってその夢を断念してしまいます。
 そんな時、彼女はおばあさんと年1回の旅行がとても楽しかったことを思い出し、
 旅行を仕事にしたい、個人のツアーガイドになりたいという新たな夢を見つけます。
 たまたま東京で病気や障害のある方専門の個人ツアーをされている方を見つけると
 「私がしたいのはこれだ!」と単身東京に行きその方に弟子入りし、
 そのノウハウと精神を身につけて半年後京都に戻ります。
 京都に帰った彼女は個人ツアーの会社を開業しようとしますが
 「好事魔多し」
 今度はご主人のご両親が相次いで入院、そして介護・・。
 またも彼女の夢は半ばで頓挫してしまいます。
 それらが一段落した時には40歳になっていました。
 夢への情熱も冷め、
 彼女は普通に再就職します。
 たまたま再就職した職場がとても居心地がよく、
 楽しく働いているうちに48歳になっていました。
 ところがその頃になって職場で色々と問題や行き違いが起こり、
 そういったことがきっかけで彼女は2度目のうつ病になってしまいます。
 やむなく退職した彼女を救ってくれたのは
 やっぱり京都の街でした。
 京都御所や賀茂川の景色やそこに吹く風、季節の匂い。
 古くから続く老舗の油屋さんや味噌屋さん、
 カラフルな手ぬぐいだけを売っているお店、
 ノートや便箋だけを売っているお店、
 見慣れたはずだった京都の街は
 ゆっくり歩けば新しい発見がいっぱいありました。
 京都の街には人を癒す力がある。

 京都の街・・
 癒し・・
 カウンセラー・・
 個人ツアーガイド・・
 それらが全部繋がりました。

 そうだ!
 京都の街で心を癒す旅の案内人になろう!

 彼女はついに自分の本当の願いにたどり着きました。
 今まで起きたことはここにたどり着くために全部必要なことだった・・。
 そして今度こそ彼女はその夢を現実のものとしました。
 「京都癒しの旅」という個人ツアーを企画運営する会社を起こしたのです。
 その時彼女は49歳になっていました。
 それから地道な活動が徐々に世間に広まり、
 今では自己実現した女性として様々な雑誌で紹介されています。


 実はこの女性は僕の中学高校の同級生です。

 今お話しした内容は僕自身が彼女から直接聞いたものです。

 何度も夢が阻まれ、挫折したように見えても、
 それは本当の夢にたどり着くための過程だったり、
 必要な修行期間だったりするのです。
 今なら振り返ってそう思えます。

 よく考えてみれば2度目のうつ病でも
 「どうして、また・・」と考えがちですが
 もしうつ病になっていなければ、
 彼女は本当の夢にはたどり着けなかった。
 そう考えれば一見不幸のように見える事柄も
 本当は幸せになるための、
 そして本当の自分になるための
 産みの苦しみなのかもしれない。

 そういう視点を持っていれば、
 苦しい、つらい状況にあっても
 前向きな希望を失わずにいられるように思います。
 
 子どもの思春期も、大人の思旬期の時の問題もプラス視点で捉えていく。

 人生の目的とは何でしょう?
 この自分に生まれてきた意味とは何でしょう?
 それには色々な答えがあってどれが正解とは言えませんが、
 僕は「自分を生きる」ことだと考えていて、
 それは「自分がしたいことをちゃんとして楽しく生きる。」ことだと思います。
 そう生きられるようにいろいろな問題が起こってくるんだと思います。
 
 自己実現というのは何か大きな夢を叶えるということではありません。

 自分らしい素直な心で生きるということです。
 
 人生には「自分を生かして幸せに生きられる」可能性が開かれていて、
 そのドアの前には常に「問題」とか「悩み」という札がかかっているけれど、
 不安で立ちすくむのではなく勇気を持ってそのドアを開けて中に入っていきたいと思います。

 本日は誠にご清聴ありがとうございました。

 講演の終わりにもう一度「サザンカ」の曲に乗せてお一人お一人それぞれ違う詩をプレゼントしました。





 みなさん、貴重なお休みにも関わらずこのペアレントセミナーに足を運んでいただき本当にありがとうございました。
 
 

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