心の成長 その1(発達課題とキーワード)
「成人中期 思旬期」(40~50才)について
40才の誕生日を迎えますと「ああ、人生の約半分まできたなあ」となんとなく、しみじみした感じがあります。体力的にもはっきりと若い頃との違いを感じますし、何か折り返し地点に来たような、、ちょっと今まで歩んできた人生を振り返って、残された人生をどう生きていこうか、、そんなことを漠然と考えたりしてしまいます。
男の人はすぐに厄年(満40~42才)に入ります。事実この年齢付近は何故か病気や事故、リストラ等が多いと言われています。ただ、それをきっかけに今までの生き方を見直して、かえって充実した人生を歩まれる方も多く、そういった意味からも40才過ぎたあたりからは人生のターニングポイントに入っている、といえます。
また40代は、子どもが思春期であることが多く、不登校や非行などの問題に直面したり、親の介護や親の死といった問題もあります。
これらの問題は単に努力でどうにかできるものではないので、「どうしたらいいのか?」と途方にくれることもあります。
しかし、どうしようもなく途方にくれる経験こそ、この時期の恵みでもあります。
そうなって初めて人は、自分のこれまでのありようを変え始めます。本当にドン詰まりにならないと、なかなか人は変わらないものです。
「でも、どうして変わらなければならないの?」という疑問もあります。もちろん変わらなくてもかまいません。
ただユングをはじめ、河井隼雄さん等 多くの臨床心理学者が「中年の危機」と呼んで、この時期を深く研究してきました。
そして彼らの答えは「中年期(40代)には色々と精神的に悩むようなことがおこり、それを乗り越えた人は以前の人生より、ずっと豊かで自分らしく充実した人生を送るようになる」というものです。
ユングはこれを個性化または「自己実現」と呼びました。
現代では自己実現というと「夢をかなえること」という意味になってしまっていますが、本来は中年の危機を乗り越え、真に自分らしく生きるようになることなのです。
ぼくはこの40代を「思旬期」と呼んでいます。悩み模索しながら真の自己実現に目覚めていく時期だからです。(子どもの「思春期」は悩み模索しながら自我に目覚めていく時期です。)
子どもの思春期には「性」ということが大きなテーマとしてありますが、大人の思旬期には「死」が大きなテーマとして浮かび上がってきます。
ぼく自身も40才で友人を亡くし、44才で父を亡くしました。
そういう事があると「死」というものを、どうしても考えてしまいます。自分が今、死ぬとしたら何か心残りはあるだろうか、、とか。死を意識しだすと、残りの人生を充実した心豊かなもの、後悔のないものにしたい と思うようになりました。
本当に自分がしたいことは何か、どんな自分でありたいのか、そんなことも考えるようになりました。
でも、そんな問いは、日常の仕事に忙しく追われる中でどんどん隅に追いやられ忘れさられていきます。そんな時に、経済的な問題や健康上の問題、人間関係の問題(夫婦、嫁姑、親子 など)が持ち上がり、いやでもそれらの問題に直面せざるを得なくなります。
そして、それらの問題の中に「本当に自分がしたいこと」や「どんな自分でありたいのか」のヒントやメッセージが隠されています。
本当に困らなければ、人間は真剣に考えません。どうしようもない所に追い込まれて初めて、人は変わることができます。そこでやっと何が大切か気づくことがあります。
成人中期までの発達課題はすべて「~の獲得」でした。成人中期の発達課題は「人生の危機と問い」(今まで通りでいいのか?)です。
もう何かを獲得するのではなく、「変わる」ことこそが課題です。
自分が変わる時のキーワードとなるのが「許す」「放す」です。そして「捨てる」です。これらの言葉が表しているのは、古い自分からの解放です。
自分を縛っているのは実は自分自身です。自己実現への変化をもっとも恐れているのは自分(自我)です。
何故か?自己実現とは自我(古い自分)から解放されて、真の自分を生きることだからです。
自我は「不安」や「心配」をネタにその人自身を支配しています。
だからこそ「許す」「放す」「捨てる」をキーワードとして、色々な問題に対処していくことが大切です。それは自我(古い自分)を許すことであり、放すことであり、捨てることにつながります。
次回はこの心の成長シリーズの最後「成人後期」(自己実現 50才~)です。
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