がんに匹敵する都民病?
過剰ストレスは百害あって一利なし?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘過剰ストレスは百害あって一利なし?’というお話です。
スウェーデンの大規模コホート研究で、ストレスに関連した精神疾患(PTSDなど)と診断された人は、後に自己免疫疾患と診断されるリスクが高いことが報告されている。貴重な報告である。
体の病気とストレスは関係していそうである。病院で患者さん方の話を聞いていると、あるいは街でおしゃべりをしていると、「Aさんは〇〇と診断されたが、思い返してみると、しばらくストレスの多い生活をしていたらしい。やはりストレスはよくないね」というプロットは定番である。しかし冷静に考えてみれば、ストレスがなければ発症しなかったのか、ということについてはわからないのだ。そうなると、本研究のような大規模な疫学研究の出番である。
ところで、なぜ自己免疫疾患なのだろうか。受け止めきれないくらいの大きなストレスにさらされたとき、自己と他者の境界は揺らぐが、精神医学的には解離性障害(その記憶をなくす、現実感を失う、などの防衛機制)が生じると考えたくなる。しかし、東大元教授の故多田富雄が『免疫の意味論』の中で、身体的に「自己」を規定しているのは免疫系であって脳ではないと述べたように、自己と他者の境界が揺らぐことで自己免疫疾患が生じることもあるかもしれない。
また本論文の意義を広い視野で考えると、身体科と精神科のいっそうの協働必要性であろう。あくまで個人的経験だし、「ごーまん」と思われたら謝るしかないが、総合病院においては各診療科の精神医学的センスの格差が大きいことに驚く。どういうことかというと、本当に要注意のケースを的確に精神科受診させる科もあれば、ずれた依頼が多い科、あるいはほとんど依頼してこない科もある。その昔は、患者さんや家族とトラブルがあると「変な人の対応をしてよ」と依頼してくるようなケースもあった。
いずれにしても、過度のストレスにいいことは何もない。筋トレだって週に2回くらいが筋肥大にはちょうどいい。医療現場は究極の感情労働であるが、過度のストレスで致命的な転帰に向かうくらいなら、静かに逃げ出して再起を図ってほしい。
*岡村毅先生の医療コラムを抜粋し、一部改変
広い意味のストレスは様々な病気の誘引になっているのは間違いないと思われますが、自己免疫疾患の原因となっている可能性があるというのは少し驚きです。