内臓脂肪蓄積の遺伝的素因が糖尿病・心血管疾患発症に関与?
中年期までの体重増で生活習慣病増加?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘中年期までの体重増で生活習慣病増加?’という報告です。
20歳前後から55歳にかけて体重が2.5~10.0kg増加した人は、ほぼ安定していた人に比べ、2型糖尿病や高血圧症、心血管疾患などの発症リスクが有意に高く、慢性疾患や認知機能・身体的障害などを有さずに健康な状態で年を重ねられる割合は低減することがわかった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者らが、看護師健康調査(Nurses’ Health Study:NHS)と医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-Up Study:HPFS)を基に行った研究の結果が発表された。
研究グループは、NHS(1976~2012年6月30日)に参加した女性およびHPFS(1986~2012年1月31日)に参加した男性で、女性は18歳時、男性は21歳時の体重について記憶があり、55歳時の体重を報告した人を対象に、20歳前後から中年にかけての体重変化とその後の健康状態との関連を調べた。分析対象者は、女性9万2,837例(37年間の平均体重増:12.6kg)と、男性2万5,303例(34年間の平均体重増:9.7kg)だった。
2型糖尿病発症率(10万人年当たり)について体重増加の程度で比較したところ、中程度増加群(2.5kg以上10kg未満)の女性では207に対し、安定群(体重減2.5kg以下、体重増2.5kg未満)の女性では110だった。男性では、それぞれ258と147だった。高血圧症発症率は、女性はそれぞれ3,415と2,754(、男性はそれぞれ2,861と2,366。心血管疾患の発症率は、女性はそれぞれ309と248、男性はそれぞれ383と340。肥満に関連したがん発症率は、女性がそれぞれ452と415、男性がそれぞれ208と165だった。健康状態維持達成者の割合は、体重が中程度増加群では、女性24%(3,651例)、男性37%(2,405例)に対し、安定群は、女性27%(1,528例)、男性39%(989例)だった。体重増が大きいほど主な慢性疾患発症のリスクは増大し、健康状態維持の達成低下との関連が認められた。
以前から体重増加が様々な生活習慣病を引き起こすことは知られていましたが、肥満体国とも言われている米国でのこの報告は日本においてはさらに深刻な問題を起こしかねないことが予想されます。というのは米国と日本における糖尿病患者の割合はほぼ同程度とされていますが、肥満者の割合は圧倒的に米国の方が多く、日本人ではそれほど肥満にならなくても糖尿病を発症しやすいことが分かっているからです。日本人は米国人以上に中年期までの肥満には十分な注意が必要と思われます。