HbA1c値だけで血糖変動評価は困難?
糖尿病患者の疲労感は前日の高血糖が影響?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「糖尿病患者の疲労感は前日の高血糖が影響?」という報告です。
疲労感は2型糖尿病患者の多くが訴える症状であり、特に起床時から日中の疲労感は患者の活動意欲を削ぎ、血糖管理の成否にも悪影響を及ぼす。疲労の原因については急性あるいは慢性的な高血糖との関連が推測されているものの、その因果関係を明確に示した医学的証拠は得られていない。米国イリノイ大学の研究者らは、血糖値と睡眠、疲労の「時間的な関連性」に着目し、これらの関連を検討した結果、日中の疲労感には睡眠の質の低下に加えて前夜の高血糖や血糖日内変動幅が関与している可能性が示されたと報告した。
対象は、45歳以上の2型糖尿病患者68例。平均年齢は58.0±8.4歳、男女比は1:1、人種構成は白人30.9%、アフリカ系54.4%、アジア系/その他14.7%であった。また、糖尿病罹病期間は8.2年、HbA1c値は7.4%、体格指数(BMI)は32.6であった。同研究者らは、これらの患者に持続血糖測定装置と睡眠障害の診断・治療等に用いられる腕時計型の体動センサーを装着してもらい、連続7日間の血糖変動と睡眠時間を測定した。
その結果、7日間の平均血糖値は163.8mg/dL、日内変動幅は40.1mg/dLであり、1日(1,440分)のうち570.1分が高血糖状態にあった。さらなる分析により、起床時の疲労感の程度と相関する有意な因子は、血糖値と患者自己評価による睡眠の質であり、意外なことに、前日の睡眠時間の長さは無関係であった。日中覚醒時全般の疲労感の程度と相関する因子を検討したところ、患者自己評価による睡眠の質と血糖日内変動幅、就寝前の疲労感の程度の3つが有意な予測因子として同定された。
一方、1日当たりの高血糖曝露時間は有意な負の予測因子として同定された。ただし、高血糖曝露時間の長さと血糖日内変動幅の間には強い相関があり、その点を補正した解析では高血糖曝露時間も有意な正の予測因子として同定された。また、ここでも前日の睡眠時間の長さは無関係であった。
同氏は「成人の2型糖尿病患者では、就寝前の血糖値が高いときや、睡眠の質が悪いときほど翌日起床時の疲労感が強く、さらに、前日の血糖日内変動が大きく、高血糖曝露時間が長いときや、就寝前の疲労感が強いときほど、日中の疲労感が強くなると考えられる」としている。つまり、起床時や日中の疲労感を軽減するには、夜間の血糖コントロールを良好に保つことに加え、就寝前に前日の疲労を取り除き、睡眠の環境を整えるなど、行動要因の改善を図ることも有用な方策であると提案した。
実際、糖尿病患者さんは初期には殆ど自覚症状がありませんが、血糖のコントロールがかなり悪くなると倦怠感をはじめとして口渇・多飲などの症状が出て来ます。それを考えるとある意味、上記の報告は当たり前かも?知れません。ただ、もう一つ興味深いのは睡眠時間ではなくて自己評価による睡眠の質が疲労感と影響しているという結果です。よく睡眠時間の長短に関しては議論されますが、質に関してはその評価がかなり難しいこともあり、忘れられがちですが、今回の報告ではそれが明らかな結果として出ていることが興味深いと思います。糖尿病患者さんも含めて睡眠の質には拘る必要がありそうです!