体脂肪量が多いとやはり危険?
内臓脂肪蓄積の遺伝的素因が糖尿病・心血管疾患発症に関与?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「内臓脂肪蓄積の遺伝的素因が糖尿病・心血管疾患発症に関与?」という報告です。
今までの研究では、腹部脂肪蓄積と2型糖尿病、冠動脈性心疾患(CHD)との関連が示唆されているが、因果関係は不明とされていた。今回、遺伝的素因として体格指数(BMI)で補正したウエスト/ヒップ比(WHR)が高い集団は、2型糖尿病やCHDのリスクが高いとの研究結果が発表された。報告を行った米国・マサチューセッツ総合病院の研究者らは、「これは、腹部脂肪蓄積と2型糖尿病、CHDとの因果関係を支持するエビデンスである」としている。
研究グループは、体格指数(BMI)で補正したウエスト/ヒップ比(WHR)の多遺伝子リスクスコアと、脂質、血圧、血糖を介する2型糖尿病およびCHDとの関連を検証するために研究を実施した。BMIで補正したWHRの多遺伝子リスクスコアは、腹部脂肪蓄積の遺伝的素因の指標であり、最近の研究で同定された48の一塩基多型(SNP)で構成される。このスコアと心血管代謝形質、2型糖尿病、CHDとの関連を、症例対照と多くのデータを用いて検討した。
心血管代謝形質は、2007~15年に行われた遺伝子解析(GWAS、32万2,154例)の結果と、2007~11年に収集された英国の遺伝子解析データ(UK Biobank)に基づいて評価した。また、2型糖尿病およびCHDは、2007~15年に実施された2つのGWASとUK Biobankのデータを合わせて評価した。UK Biobankの参加者11万1,986例の平均年齢は56.9歳、5万8,845例が女性であり、平均WHRは0.875であった。平均血圧は143.6/84.5mmHg、平均BMIは27.5で、糖尿病が5.1%、CHDが5.0%にみられた。
BMIで補正したWHRの多遺伝子リスクスコアが上昇すると、総コレステロール値、LDLコレステロール値、トリグリセライド値がそれぞれ上昇し、HDLコレステロールは低下し、いずれも有意な変化であった。また、空腹時血糖値、食後2時間血糖値、HbA1cもそれぞれ上昇し、収縮期血圧、拡張期血圧はそれぞれ有意に上昇した。さらに、BMIで補正したWHRの多遺伝子リスクスコア上昇により、2型糖尿病のリスクが有意に増加し(危険率:1.77倍)、CHDのリスクも有意に増加した(危険率:1.46倍)。これらの知見は、以前の観察研究の示唆を裏付けるもので、体脂肪分布はBMIよりも2型糖尿病やCHDのリスクの変動を説明可能であり、BMIで補正したWHRはこれらの疾患の予防治療の開発におけるバイオマーカーとして有用となる可能性があるという。
今回の報告で内臓脂肪の蓄積による糖尿病や心血管疾患発症に遺伝的要因の関与が示唆されたようです。日本人でも内臓脂肪が多く、肥満の方が必ずしも糖尿病を発症しないのは遺伝的要因も関与しているということかも知れません。しかし、元来日本人を含めた東アジアの民族は血糖を低下させるインスリンの分泌が欧米人に比し、半分程度とされており、ちょっとした内臓脂肪の増加を伴う体重増加で糖尿病を発症しやすいとされていますのでやはり体重管理を含めた内臓脂肪の増加には注意することが大事です!
昨夕の吾妻小富士。夕焼けバックの吾妻小富士なかなかです。