必要な「家族会」がいつしか誤った方向へⅠ
目 次
1.変わったつもり
2.自分自身の問題として
3.どのような状態になることが解決ですか?
4.原点へ還る
5.原家族から受け継がれる家族の神話
6.生命のリレーと家系の相続
変わったつもり
「先ず親が変わらなければ」という言葉は、よく聞かれますが、いささか言い古された
きらいがあります。
こういった言葉が出ていても、「変わろうとしているのだろうか?」と首をかしげたく
なることは、決して少なくありません。
恐らく、「変わらなければ」とは言っても、何をどう変えればいいのかが、全く分から
ないでいるのだと思います。
中には、色々な相談窓口へ行ったり、講演や研修を受けただけで、変わったような気に
なっている方も多いようです。
耳学問が一種のトランキライザー(精神安定剤)になっているケースです。
当事者家族の集まりなどで、一生懸命他者に「親が変わらなければ」と勧めている方を
拝見したりする場合がありますが、そういう人にかぎって、10年近くもわが子の問題解決は
出来ていなかったりがあります。
自分自身の問題として
どう変わっていけばよいのかと言いますと、わが子へ気づきを与えられる変化が必要だと
いうことです。当人に気づきがなければ、親がどう変わろうと子は変わりません。
わが子に気づきを与えるためには、先ず「親自身の問題として受け止めてくれるように
なった」と感じてもらえることが必要です。
「学校の責任」「先生が悪い」
「親がダメだと思っている世間の偏見が悪い」
「格差社会が悪い」
などと言っている内は、何も変わりません。
何事も外に原因を求めている間は、自分が変わろうとはしません。
常に「主因は内(自分)にあり!」を心がけましょう。
どのような状態になることが解決ですか?
なぜ学校へ行かないのか、なぜ働かないのかとかいった理由が分かり難いだけに、とかく
場当たり的な対応をしてしまいがちですが、同時に「こうなってほしい」といった未来像
へ向けた《解決志向》の視点が大切です。
そのために、どういう状況になったら解決したと見なされるのかを明確にする必要があり
ます。
単に学校に戻ったり、働き出したりが解決ではないことは、これまでにもお話しております。
不登校、ひきこもりが無くなったら全て問題はなくなるのかを考えてみられたらいいです。
《解決志向》は、今何が出来て、何が出来ないでいるのかを明瞭にしていきます。
できないでいることをできるようにしていくことを実行していかなければなりません。
また、うまくいかなかったやり方を何度も繰り返さないことです。
意外にこれが多いものです。
状態の改善は望んでいても、そのために自身の方針を変えることには抵抗を感じているの
で、結局同じことをやっています。
それがたとえ誤っていてもです。
昨日と同じ過ごし方を今日も繰り返してしまっていないかを振り返ってください。
現状改善のための新たな取組みが今日はなされましたか?
「生きかたの見直し」これが、「親が変われば子は変わる」の真意です。
原点へ還る
現状のわけを知るためには、これまでの歴史を振り返ることが必要ですね。
意識するしないに関わらず、これまで自身が成してきたことが原因となり、その結果として
今の状態があります。
「原風景」という言葉がありますね。
皆さんの原風景にはどういうイメージがありますか?
今ある自分の原風景は、どこにどのようにしてあるでしょうか。
原家族から受け継がれる家族の神話
私は、今目の前のわが子の不登校やひきこもり問題の解決のために、「原家族」を振り返る
ことを勧めています。
ひきこもり問題などを解決するためには、少なくとも三代はさかのぼる必要があります。
つまり、当事者の祖父母の代です。両親がそれぞれどのような生い立ちをしてきたか。
特に親との関わりがどうだったかを振り返ります。
また、当事者からしておじやおばにあたる両親の兄弟関係。
わが子との関わりにおいては、両親の親、兄弟との関係、「原家族」がまさに原風景と
なります。
この家(一族)に誕生し、家族との人間関係を営んできた。
そこには、受け継がれた家族神話があり、家族内だけで支持されてきた偏った見方が、
様ざまな抑圧を生み、家族本来の機能を歪めてしまったことに気づくべきなのです。
生命のリレーと家系の相続
家族神話の呪縛から解放されるための行動療法として、私はお墓参りを推奨しています。
自分の存在を在らしめたルーツが親・先祖です。
三十代遡ると先祖の数は十億人を超えます。
生命の連続性を感じてみましょう。
墓前に手を合わせ、生命の初発に立ち戻って感じてみてください。
先祖あってのわが身です。
自己存在のルーツ(原初)の受容ができてこそ自己受容ができます。
お墓参りは「和解」の儀式です。
わだかまりは残っていませんか?
わだかまりは、そこに執着し心が自由になりません。
今なお自己を支配されているようなものです。
そのことが、わが子との間柄にも投影されてしまいます。
わが子の生命の在りようを大切にしてこれたでしょうか。
生命への感謝があれば、その可能性、独自性に気づくことができます。
わが子の個性(目的・役割)を大事に育てられたでしょうか。尊重できたでしょうか。
「現家族」に生じている問題は、「原家族」の反映です。
故郷へ帰り、幼きころの心象風景に想いをはせてみてください。
きっと、置き忘れてきた(未解決の)何かに気づけるはずです。
それがわが子の問題を解く鍵となるのです。
「困った時は、原点に返れ」です。