現象の理解のために親の学ぶ姿勢が不可欠なのだが
家族会が、ひきこもりの解決の要になることを述べてみましょう。
これまでも様々な場所で、家族会は設けられてはいたりしますが、残念ながら解決につながる
だけの役割を果たせているところはないようです。
ですから、実際あまり重要視(期待?)はされてはいないようですから、「解決の要になんか
なるの?」と思われるでしょう。
特に、実際参加したことがある方ほどそうでしょう。
家族会は、〈ひきこもっているわが子を抱えた家族(親)たちの会〉と認識されていますが、
その認識から改めなければなりません。
そうではなく、〈ひきこもりという現象を起こしている親の会〉です。
つまり、自室に居る青年たちと同じ、まさに当事者の会なのです。
だからこそ、解決の要になり、なくてはならないものなのです。
わが子を支えているつもりが、長期化を支えていた
幸いにも、外出がままならないひきこもり者と違い、外出も出来ますし、人にも会えます。
ですから、その気になれば、すぐにでも動けます。
自分たちも当事者であるという自覚がもてれば、半分は解決したようなものです。
ひきこもり現象は、親子の共同作業なのです。
「ひきこもる子」と「ひきこもりを支える親」がそろって生じている現象です。
ひきこもり現象を支えるから、わが子を支える(援助する)に切り替わることで、改善、解決
の方向へ確実に進路が変わっていきます。
自分たちも当事者である自覚がもてたら、自力で生きていけないわが子を支えていたと思って
いたら、実際は〈ひきこもり〉を支えてしまっていた。
ひきこもりが継続してしまう条件をつくってしまっていた。
ということに気づくことが重要です。
わが子が勝手にひきこもっていたわけではないのです。
知らず知らず手を貸していたということです。
専門家による病気の勉強では解決しない
こういったことも含め、家族会の中では、必ず〈ひきこもり現象〉を理解していくための
学習の時間が必要です。
この学習で大切なことは、あくまでも状況改善、解決のための具体的な内容でなければ
なりません。
よく見受けられるのが、医者をはじめとする精神医療関係者を招いての疾患や障がいの
解説やカウンセリングや心理学の紹介。
研究者による統計的データに基づく傾向、社会的背景や歴史の概説や文化論などです。
これらの話は、日頃なじみの薄い内容で専門家と称される立場からの話だけに新鮮に聞こえ、
とても勉強をしたような気がしてしまいがちなのですが、問題解決という点で、まったく
具体性に欠けます。
日々のひきこもり状況の様々な場面に対しての対処に関しての効果的な具体案の話は、
ほとんどありません。
それらの学習は、実際に自室で動けない状態から社会参加までのサポート実績のある支援者
でないとできないでしょう。
医者が、当たり前ですが病気の治し方は詳しいのと同じです。
つまり、実際に解決の経験が多い者からの情報提供でなければ、学習の効果は期待できない
ということです。
これまで、対応した事例で、親が医者や身内に精神科医がいる家庭もありました。
カウンセラーや教師のケースも少なくありません。
基本、ひきこもりは病気や障がいではないのですから。
解決に必要なのは当事者の声と先行く家族
学習会は、ひきこもり者の声(訴え)を前提に行っていくべきものです。
ひきこもり者の声を知らぬまま、家族が寄り集まっても意味をなしません。
ですから、学習会には、ひきこもり者の声を知っている(聞いている)支援者が必要です。
最も必要なものは、〈先行く家族〉の存在です。
段階的な成果を実現している家族です。
私がこれまで、この〈先行く家族〉がいない家族会が少なくないことを話しますと、どこか
の家族会への参加経験がある方なら、あらかた大きくうなづかれます。
当協会では、目的に応じて複数の家族会を運営していますが、継続的なサポートをしている
家庭の家族会では、当事者がすでに様々な訓練を受けている段階に来ている家庭や、アルバ
イトや就労という形で、社会参加を実現している家庭〈先行く家族〉の参加がもちろんあります。
これから、部屋から出てくるようにはたらきかけを始めていく家庭にとって、とても励みに
なります。
最初は、皆同じだからです。動けないところからスタートしています。
そして多くが、アウトリーチ(訪問支援)を必要とせず、実現しているのです。
なぜ必要としないのか。
単純です。家族が動くからです。
ひきこもりは親子の共同作業なのですから、親が〈ひきこもり〉を支えるのをやめて、
わが子を支えることに専念すれば、ひきこもり者たちは、動けるようになるのです。
視点のズレが誤った認識を生み長期化を加速させる
「8050問題」がにわかに危機的問題としてあげられていますが、家族会自体が、目的とは
裏腹に長期化を進行させてしまっているという現実があります。
しかも、その自覚がないだけに、怖いところがあります。
どうしてこのような状況になっているかと言うと、〈ひきこもり現象〉という問題を解決
していくんだという認識がないからです。
どういうことかと申しますと、時間の経過により、当人(ひきこもり者)が自然と意欲を回復
していくのを信じて(期待して)待つとしています。
つまり、本人がその気になってくれないかぎり、家族としてはどうにもできないとして
しまっているのです。
当事者家庭は、複数の〈問題〉を抱えています。
ですから、気分や意欲がどうではなく、その問題を解決していく必要があるのです。
〈問題〉というものは、そのままにはしておけないことです。
具体的な解決方法で、ひとつひとつ解いていかなければなりません。
もちろん問題を解いていくのは、自分です。
「わが子がその気になってくれないかぎり・・・」などと思っている内は、決して自分が
動こうとしません。
この姿勢が、すでに依存です。
ひきこもり現象が家族依存症とも呼ばれる所以です。
問題の解決法が分かるためには、適切な支援者からの助言を求めながら、学習していかな
ければなりません。
また、長期戦の間に投げ出してしまわないよう、ストレスコーピングや意欲の喚起もして
いかなければなりません。
まま家族会に見受けられるのは、「親が変わろう」「もっと自分のことに時間を使おう」と
レクレーション的な催しで、明るく笑顔をつくろうといった取り組みがありますが、そう
いった視点は 一時的な対処にしかなり得ません。
親が変わることで、わが子にも変化が起こってくることが重要ですから、親の世界観、
人生観、家族観、教育観、生命観 などにより良い変化が起こるような取り組みが必要なのです。
これらのことが、当事者意識をもった親御さんたちで行われる家族会こそが、
〈ひきこもり現象〉の改善、解決につながる真に有効な家族会なのです。