第5回 マネジメントの基礎はデータにあり ~感覚だけに頼らず、数字から店舗の現実を読み解く~

佐々木康仁

佐々木康仁

テーマ:マネジメント


「最近、売上が悪い気がする。」
「なんとなくお客様が減っているような気がする。」
「この時間帯は忙しいから、人を多めに入れておこう。」

店舗運営をしていると、こうした“感覚”で判断する場面があります。

もちろん、長年現場に立っている店長の感覚は大切です。

経験を積めば積むほど、

「今日は忙しくなりそうだ。」
「この商品は売れそうだ。」

といった勘も働くようになります。

しかし、店長として店舗を安定して運営していくためには、感覚だけに頼るわけにはいきません。

私は店長時代を通じて、

「感覚を、数字で確認する」

ことの大切さを学びました。

マネジメントの基礎にあるのは、やはりデータなのです。

数字は、お店の健康診断

例えば病院で健康診断を受けると、

体重、血圧、血糖値など、さまざまな数字から身体の状態を確認します。

店舗も同じです。

売上だけを見ていては、本当の状態は分かりません。

客数。
客単価。
人件費。
原価。
商品別売上。
時間帯別売上。
曜日別売上。

こうした数字を組み合わせて見ることで、初めてお店の状態が見えてきます。

私は著書でも「データを分析しないから続かない」というテーマを取り上げています。

施策を実施するだけで終わらせず、その結果を数字で振り返ることが、次の改善につながります。

「売上が下がった」だけでは何も分からない

例えば、先月より売上が10万円下がったとします。

そこで、

「今月は売上が悪かった。」

だけで終わってはいけません。

さらに分解して考えます。

客数が減ったのか。
客単価が下がったのか。
特定の商品が売れなかったのか。
昼の売上が下がったのか。
夜の売上が下がったのか。
平日なのか、土日なのか。

ここまで見ていくと、ようやく具体的な対策が考えられるようになります。

例えば、客数は変わっていないのに客単価だけが下がっていたとします。

それなら、単純に「集客を増やそう」と考えるのは少し違います。

おすすめ商品の提案方法を見直す。
セット販売を考える。
商品の見せ方を改善する。

このように、数字によって打つべき手は変わります。

「なんで売上がいいんだ?」にもデータが必要

第2回でもお話ししましたが、私がモスバーガーで店長をしていた頃、オーナーから言われた言葉があります。

「なんで売上がいいんだ?」

売上が悪い時だけではなく、良い時の理由も分析しなければならないという教えでした。

ここでもデータが役に立ちます。

前年の同じ曜日と比べてどうだったのか。
客数はどれだけ増えたのか。
どの商品が伸びたのか。
キャンペーンの効果はあったのか。
天候や周辺イベントの影響はなかったのか。

数字と現場の出来事を照らし合わせることで、

「たまたま売れた」

から、

「なぜ売れたのか分かる」

へ変わります。

さらに、その成功要因を再現できれば、

「また売れる仕組み」

へと変えることができます。

ここまでできて、初めてデータがマネジメントに生かされたと言えるのではないでしょうか。

人件費も「削ればいい」わけではない

数字を見るうえで、店長が特に意識しなければならないのが人件費です。

店舗では大きなコストの一つですから、人件費を適正に管理する必要があります。

しかし、人件費が高いからといって単純に人数を減らせば良いわけではありません。

スタッフを減らしすぎれば、

接客が十分にできない。
店内が汚れる。
商品の補充が遅れる。
スタッフが疲弊する。

結果として顧客満足度が下がり、売上まで落ちる可能性があります。

大切なのは、

「いくら使ったか」ではなく、「その人件費でどれだけの価値を生み出したか」

を見ることです。

数字だけを見るのではなく、その数字の向こう側にある現場を見る。

これが店長に必要な視点です。

データはスタッフを責めるためのものではない

ここは、とても大切なところです。

数字を管理すると、

「今月は数字が悪い。」
「君の時間帯だけ売上が低い。」

と、スタッフを責める材料にしてしまうことがあります。

私は、それは違うと思っています。

データは、

誰かを責めるためではなく、みんなで改善するための材料

です。

例えば、

「夕方の客数が減っているね。何か気づいたことはある?」

とスタッフに聞いてみる。

すると、

「最近、近くに新しい店ができました。」
「この時間帯は商品の品切れが多いです。」

など、数字だけでは分からない現場の情報が出てきます。

データとスタッフの声。

この二つを組み合わせることで、より正確な判断ができるようになります。

データを見る習慣をつくる

難しい分析ツールを使う必要はありません。

まずは毎日、

売上。
客数。
客単価。
人件費。

この程度からでも十分です。

そして、

「昨日と何が違ったのか。」
「前年と何が違ったのか。」
「なぜこの数字になったのか。」

と考える。

毎日5分でも続けていけば、少しずつ数字の変化に気づけるようになります。

すると、問題が大きくなる前に対策を打てるようになります。

店長にとってデータを見ることは、特別な仕事ではありません。

店舗の変化に早く気づくための日常業務

なのです。

今日からできる実践ポイント

・売上だけではなく、客数と客単価も確認する。
・良い数字も悪い数字も「なぜ?」と考える。
・前年、前月、前週と比較する習慣を持つ。
・数字だけで判断せず、現場で起きていることと照らし合わせる。
・データをスタッフを責める材料ではなく、改善する材料として使う。

店長には、現場を見る目も必要です。

そして同時に、数字を見る目も必要です。

感覚とデータ。

どちらか一方ではありません。

「現場で感じたことを、数字で確認する。数字で気づいたことを、現場で確認する。」

この往復こそが、店舗マネジメントの基本だと私は考えています。

数字は冷たいものではありません。

その一つひとつの数字の向こう側には、お客様がいて、スタッフがいて、さまざまな行動があります。

数字から人の動きを読み取れるようになった時、店長のマネジメント力はもう一段上がります。

次回は、

「お客様は待っていても来ない」

をテーマに、店舗マーケティングにおける「集客」の基本と、お客様に来店していただくための仕掛けについてお話しします。

本連載について

本連載は、私の著書『新米店長の道しるべ―16年の失敗と成功から学ぶ』をベースに、現場で新たに得た経験や生成AI時代のマネジメント・マーケティングの視点を加えながら再構成しています。20年以上にわたる店舗運営の経験が、店長やリーダー、経営者の皆さまの実践に少しでもお役に立てれば幸いです。

著書紹介
『新米店長の道しるべ―16年の失敗と成功から学ぶ』では、20年以上の店舗運営と16年間の店長経験をもとに、現場で培ったマネジメントやマーケティングの考え方を実例とともに紹介しています。理論だけではなく、実際の失敗や成功から得た「現場で使える知恵」をまとめた一冊です。
新米店長の道しるべ16年の失敗と成功から学ぶ


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佐々木康仁
専門家

佐々木康仁(ITコンサルタント)

株式会社CNCコンサルティング

対面と非対面を組み合わせた独自のマーケティング手法、ChatGPTを活用するための基礎的な講習、小学校などでのICT教育支援を事業の柱とする。数々の職業を経験し“現場感覚”でサポートできるのが強み。

佐々木康仁プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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