喉が渇いただけなのに、すぐに買えない

鎌田千穂

鎌田千穂

テーマ:心のあり方のヒント

バナー

喉が渇いた。
自動販売機で、お茶を買おうと思った。

……お茶が多い。

緑茶。
濃い緑茶。
香ばしいお茶。
特茶。
新しいお茶。
期間限定のお茶。

……お茶だけで、ずいぶん種類がある。

お茶に、そんなに事情があるのか。

昔は、飲みたいものを選んで、ボタンを押せばよかった。

今は違う。

健康を考えたお茶。
味にこだわったお茶。
機能性を追求したお茶。
産地や製法をアピールするお茶。

……お茶も、ずいぶん忙しい。

ただ喉を潤したいだけなのに、
こちらは商品の開発背景まで想像させられる。

しかも、商品名が長い。

読んでいるうちに、
何を買いに来たのか忘れそうになる。

喉は水分を要求しているのに、
目は商品説明を読まされている。


期間限定という、謎の圧力。

さらに厄介な文言。

〝期間限定〟

別に、今すぐ飲みたいわけではない。

ところが〝期間限定〟と書かれると、急に気になる。

今しか買えないのか。
次に来たときには、もうないのか。

……いや、待て。

私は、これを飲みたかったのか。
それとも、なくなると聞いて惜しくなっただけなのか。

飲み物を選んでいるはずが、
いつの間にか販売終了との駆け引きになっている。

宣伝文句の魅力、恐るべし圧。

喉の渇きにつけ込むならまだしも、
まだ飲んでもいない商品の喪失感まで先払いさせないでほしい。

便利の向上に、こちらが追いつかない。

もちろん、選べるのはありがたい。

好みに合うものが見つかる。
健康を意識した商品もある。
新しい味を試す楽しみもある。

メーカーだって、全力で工夫している。

味を変え、容器を変え、名前を変え、売り方を変える。

その努力はわかる。

わかるけれど。
こちらは、いま喉が渇いている。

新商品の説明を読み込んでいる場合ではない。

とはいえ、
目の前には、
飲料の営業担当が勢ぞろい。

それぞれが、自分の魅力を無言アピール。

……もう、いい。
ようやく一本を選び、ボタンを押す。

ゴトン。

飲む。

……ああ、生き返る。

結局、
いちばん説得力があったのは、
商品説明ではなく喉の渇き。


次も、迷わずお茶を買おう。

そう思って自動販売機を見る。

〝新発売〟

……。

営業担当、増員。

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

鎌田千穂プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

鎌田千穂
専門家

鎌田千穂(産業カウンセラー)

Chi-ho’s studio

組織課題を広い視野で捉え、主体性を持った思考と行動力、公私の均衡を図る自律型人材育成を行うこと。分析・統計による業務改善の解決策を示し、個人の悩みを解き放ち、企業の繁栄に繋げることが専門です。

鎌田千穂プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

業務改善と人材育成のプロ

鎌田千穂プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼