サステナブルな習慣づくり:毎日の生活に「持続可能な変化」を取り入れる方法
報酬遅延耐性とは、目の前の欲望を抑え、将来の利益を得るために自分をコントロールする力です。
私たちは日々、即時の楽しみや快楽と、未来の大きな利益を天秤にかける選択をしています。
この能力が高いほど、目標に向かって努力し続けることができ、人生をより充実させることができます。
では報酬遅延耐性によるメリット、高める方法について詳しく見ていきましょう。
1.「目の前の誘惑」に負けていませんか?
①なぜ私たちは即時性に弱いのか?
長い目で物事を見なければいけない。
と、わかっていても目先のメリットや快感に引き寄せられてしまいます。
後から後悔してもまた同じことを繰り返す……。
これは脳の仕組みから考えれば至極当然です。
短期的なメリットや満足は脳内で「ドーパミン」を分泌させます。
すると幸福感や満足感が得られるので、引き寄せられるのは仕方がありません。
「長い目で、全体的に検討して…」と思いつつ、それを実行するためには目の前の誘惑を我慢しなければなりません。
欲求を抑えるのは大きなストレスです。
ある程度スタミナや余裕があるときなら可能ですが、疲労や抑うつなどでエネルギーが枯渇している状態では抵抗しきれません。
②人間の本能としての「今すぐ欲しい」衝動
何かが欲しい!という欲求に限らず、人の本能は太古から進化する中で生命を守るために備わった能力です。
だから論理的思考よりずっと強力です。
現代では何千年、何万年も前と比べたら常に命の危険を察知しなければいけない状況は少ないです。
むしろ大抵は「長い目で考える」ことのほうがメリットが大きかったりします。
しかし「長い目」ということはメリットも「遠い未来」にしか手に入りません。即時ではないし不確定です。
より確実な方を、と考えてしまうと、やはり「今すぐほしい衝動」には勝てないでしょう。
2.「報酬遅延耐性」とは?未来の自分を助ける力
①マシュマロ実験に学ぶ
「マシュマロ実験」をご存じでしょうか。
1970年代にスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが行った有名な実験です。
4歳から6歳の子どもたちに対して「今すぐ1つのマシュマロを食べるか、15分我慢すれば2つもらえる」という選択肢を与え、彼らの行動を観察しました。
結果として、誘惑を我慢できた子どもたちはその後の人生で、学業成績や社会的スキル、健康状態、経済的成功といったさまざまな分野で良い成果を挙げる傾向があることがわかりました。
この実験が示しているのが、「報酬遅延耐性」のメリットです。
即時性を優先させてマシュマロ1個を取るか、15分待って倍の利益を獲得するか。
15分待つほうが自分にとってメリットが大きい、と判断することの有益性を示す心理学研究です。
②実験結果が示した将来への影響
この実験を受けた子供たちがその後どうなったか、を、研究者たちは追跡調査しました。
マシュマロを待つことが出来た子どもたちは、学業成績が優秀で、大学進学率も高かった。
社会的スキルや自己管理能力が高く、職場でも良い評価を得ている傾向があった。
健康管理ができており、肥満や生活習慣病のリスクが低かった。
精神的な安定度が高く、ストレスに強い傾向があった。
といった結果が報告されています。
これにより、目先の誘惑をコントロールする力がその後の人生の成功に深く関係していることが示されました。
③報酬遅延耐性とは
報酬遅延耐性とは、目の前の即時的な報酬(短期的な満足)を我慢し、将来的に得られるより大きな報酬(長期的な利益)のために待つ能力のことを指します。
この概念は、自己制御や意志力と密接に関連しており、成功や幸福に大きな影響を与える心理的スキルとされています。
報酬遅延耐性が高いことによって、様々なメリットが考えられています。
【長期的な成功】
仕事や学業で長期的な目標に向けて努力を続ける力を支えます。
例:試験勉強、投資、健康的な生活習慣の維持など。
【健康的な習慣を身につけられる】
健康的な選択(運動、適切な食事)を促し、不健康な衝動(暴飲暴食、喫煙)を抑えることに役立ちます。
【人間関係の保持・向上】
衝動的な発言や行動を抑え、他者との関係を良好に保つ助けとなります。
報酬遅延耐性を高めることで、人生の幸福度や満足度が高まります。
先ほどお話したように目先の欲求に左右されず計画性を持った行動が出来るようになります。
そのためには自分の感情を取り扱うスキル、疲労をケアする習慣、何より長期的な計画を具体化させることが役立ちます。
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3.なぜ報酬遅延耐性が大切なのか?
①健康的な生活を維持できる
報酬遅延耐性は、健康的な生活習慣を維持する上でとても重要です。
例えばこんな場面で、報酬遅延耐性の高さが効果を発揮します
【食事管理】
例:ジャンクフードや間食を我慢し、栄養価の高いバランスの取れた食事を選ぶ
【運動の習慣】
例:楽をして健康になろう、とせず、実際に身体を動かす運動の長期的な効能を優先する
【睡眠】
例:夜更かししてゲームやエンタメを楽しむことよりも、適切な睡眠をとることによって明日の集中力や健康を守る
更にこれが繰り返されることで、生活習慣病の予防となります。
健康寿命を長くすることが出来、その間自分のしたいことを自由に楽しむことが出来るでしょう。
②仕事・学業の成功を支える基盤
仕事や勉強は何かしら目標が設定されています。
それを達成するためにはほぼ確実に長期的な努力が求められます。
まさに報酬遅延耐性の出番と言えるでしょう。
【試験勉強やスキルの習得】
例:友達と遊んだり趣味の時間をある程度咲いて学習に回すことで、最終的な成果に繋がります。
【プロジェクトの進行管理】
例:例えば最終的な締め切りが3ヶ月後だったとしても、着実に達成するためには最初から計画的に作業を進める必要があります。
「3ヶ月も先だから」と考えず「3ヶ月間どう進めるか」に取り組むことが出来るでしょう。
結果としてコツコツ努力を続けることが出来ます。その必要性を理解した上で進められるので「やらされ感」が無く、ストレスになりにくいです。
また確実に結果を残す人物として周囲に認識されるので、良い評価を得られる可能性が高まります。
③人間関係にも影響を与える意志力の力
報酬遅延耐性の「報酬」とは、目標達成やモノばかりではありません。
気分や感情にも当てはまります。
例えば「スッキリさせたい」「爽快感を味わいたい」のようなものは、短期的報酬として非常にパワフルです。
それを報酬遅延耐性によってコントロールすることが出来るメリットは大きいでしょう。
例として
- 短期的な感情、例えば怒りなどに流されず、冷静に相手と向き合うことで関係を保持・改善出来る
- 自分の短期的な欲求をセーブし、相手の話をしっかり聞くことで共感できると、信頼関係が高まる
のようなことが期待できます。
④報酬遅延耐性を実生活にどう活かすか
この力は、健康的な習慣、学業や仕事での成功、人間関係を良好に保つための基盤となります。
以下のような実践方法を取り入れることで、日常生活に活用できます。
- 健康面:食事記録をつける、運動計画を立てる。
- 学業・仕事:To-Doリストで進捗を可視化する。
- 人間関係:感情を記録し、冷静に対処する訓練を行う。
「目の前の楽しさ」を選びがちな自分に気づいたら、「未来の自分が喜ぶ選択」を意識することで、より充実した人生を築けるでしょう。
4.報酬遅延耐性を育てる5つのステップ
①ステップ1:誘惑を遠ざける
まずは環境整備が有効です。
やりたくない勉強の参考書とゲームアプリがたくさん入っているスマホが並んでいたら、大人だってスマホを手に取ってしまいます。
また、キッチンへ行けばお菓子やお酒があるなら、食事管理はままなりません。
そうした誘惑を喚起するものを排除する・遠ざけることが先決です。
②ステップ2:小さな成功を積み重ねる
次に、長期的計画は不可能ではない、と自分が納得する必要があります。
長期的な視野を持つことが苦手な人は「自分には無理」と思ってしまっていることがあります。
小さなステップを繰り返しそれを成功させることで「自分にもできるかも」と考えることが出来るようになります。
【方法】
◆タスクを小さく分ける
例えば、1時間の作業をするのではなく、「5分間だけ作業を始める」といった形で始めると、集中しやすくなります。
5分でも実際に行動に移すことで、次第に作業に没頭できるようになります。
◆短期的な目標から始める
初めは「1週間後に5キロ減量する」ではなく、「今週は毎日30分歩く」というように、短期的な目標を立てて、その達成感を積み重ねていきます。
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③ステップ3:報酬を視覚化する
次は報酬を「見える化」します。
「成功する」「合格する」だけだと抽象的なため、いざ目の前に短期的な報酬が現れるとそちらに引っ張られてしまいます。
長期的計画によって得られる報酬を視覚化・具体化しておくことで、目の前の誘惑に打ち勝つ力を育てることが出来ます。
実際に「その先に得られるもの」をイメージし、どれだけ自分にとって価値のある結果が待っているかを理解することが重要です。
④ステップ4:マインドフルネスで衝動を観察する
それでも衝動的な誘惑は中々抑えられません。
最初にお話したように本能ですから、論理的思考よりパワーが強いです。
押さえ込もう、我慢しよう、と考えすぎるとストレスとなり、逆に制御力を弱めることになります。
ここで活躍するのが「マインドフルネス」思考です。
自分の衝動を観察する姿勢を取ることで、囚われて流されることが減っていきます。
お勧めは呼吸法です。
衝動に駆られそうになった時に深呼吸をすることで、一時的に冷静さを取り戻すことができます。
深呼吸しながら、呼吸の動作、空気の出入り、自分の体の動きに意識に集中させます。
そうしながら自分の感情の移り変わりを感じ取ることが出来、強い衝動に振り回されずに乗り越えることが出来ます。
⑤ステップ5:自分を信じる
これまでのステップを踏まえて目の前の誘惑や衝動に引っ張られないためには、自分の目指す目標や計画の価値を信じることが必要です。
衝動的な欲求や目先のメリットより少し先の成功を選び取るのは、言葉でいうほど簡単ではありません。
何かに堪えたり耐えたり我慢するためには、目の前のおいしそうなメリットより「あっち(長期的目標)のほうが遥かに価値がある」と言うことを忘れてはいけません。
自分を信じるとは、その目標を立てた自分を信じる、という意味です。
そのためには、ステップ1~4を繰り返す中で小さな成功を積み重ねる自分を、その都度たくさん褒めてください。
これらの5つのステップを意識して実践することで、報酬遅延耐性を養い、長期的な目標達成への道のりを着実に歩むことができます。日々の小さな努力と意識的な行動が、最終的な大きな成果を生み出します。
5.「未来の自分」を応援しよう!今日から始める小さな変化
報酬遅延耐性を高めるために、今日から変えていけることをいくつかご紹介します。
目先の快楽に囚われず、未来の自分のために今何をするべきかを考え、実行に移すことが出来るようになるために、ご自身に合う取り組みを考えてみましょう。
①今すぐ出来る3つの行動
【今すぐやらなくてもいいことは後回し】
一番簡単にできることは、目の前の誘惑ややりたいことを、時間を決めて後回しにすることです。
たとえば、スマホの通知をチェックする代わりに、今やらなければならないこと(仕事や家事、勉強など)を先に済ませましょう。
【1分間の集中タイム】
「未来の自分」のための行動としては、集中して短時間で取り組むことも有用です。
たとえば、1分間だけ深呼吸をして心を落ち着ける、または1分間だけ机の上を片付けるなどのタスクをこなしてみましょう。
最初は小さな行動でも、これを積み重ねていくと、集中力や達成感を得ることができ、報酬遅延耐性が向上します。
【今の自分に報酬を与えない】
自分が目の前の誘惑に勝った後に、すぐに報酬を与えるのではなく、少しの間自分を我慢させてみましょう。
たとえば、今すぐにお菓子を食べたい気持ちがある場合、少しの間それを我慢してから食べる、などです。
この延ばす行為が、報酬遅延耐性を鍛える一歩となります。
②小さな一歩を支える3要素
大きな変化を一度に成し遂げようとすると、挫折してしまうことが多いですが、毎日少しずつ進むことで、長期的には大きな成果を得ることができます。
【自信と達成感を積み重ねる】
目の前の小さな目標を達成することは、自己効力感を高めます。
小さな成功体験を重ねることで、「自分はできる」と感じ、その後の行動にも前向きになれます。
こうした小さな成功の積み重ねが、最終的に報酬遅延耐性を高める土台となります。
【自分を大切にする習慣を身につける】
小さな一歩を踏み出すことで、自分の将来に向けて意識的に時間を使うようになります。
習慣化のためには「やりにくい」ことより「やりやすい」ことをたくさん採用することがポイントです。
質だけでなく量(時間など)も、小さい負荷から始めましょう。
【モチベーションをメンテナンスする】
目の前の誘惑を遠ざけ、本当に目指す目的へ一歩ずつ努力を重ねることは地道な作業です。
それを続けるために必要なのがモチベーション、つまりやる気です。
やる気をを常に維持するためには、出来たことを可視化して振り返り、小さくても努力した自分を褒めて、休養を取って疲労を回復させましょう。
6.まとめ
報酬遅延耐性とは、「今すぐの楽しみや欲望を我慢して、将来の大きな利益を得るために自分をコントロールする力」のことです。
この力を高めることで、例えば健康的な生活習慣を続けることができたり、仕事や勉強で成功を収めたり、人間関係を良好に保つことができるようになります。
有名な「マシュマロ実験」では、子どもたちが目の前のマシュマロを食べずに我慢することができるかどうかが、後の人生における成功や幸福に関わると示されています。
この実験は、今を楽しむことを我慢する力が、どれほど人生に大きな影響を与えるかを教えてくれます。
誘惑に負けないためには、自分が今感じている欲求や感情をしっかりと理解し、冷静に行動することが大切です。
目の前の欲望を抑えて、将来の自分にとってより良い選択をすることが、結果的に自分の人生をより充実させることにつながります。
報酬遅延耐性を高めることは、未来の自分を助けるための大切なステップです。
それを意識的に育てて、人生の質を向上させていきましょう。
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