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1.サステナブルな習慣づくりとは?
①サステナブルな習慣とは
サステナブルとは「持続可能」という意味です。
サステナブルな習慣とは、無理なく長期にわたって続けることができる習慣、という意味になります。
長期間続けるためには生活に自然に取り入れることができ、心身への負担が大きくなく、続けることが自分にとってメリットがある、と感じられる必要があるでしょう。
- 習慣が毎日のルーティンに溶け込んでいる
- 一時的ではなく、長期的視点で継続できる
- 目標が現実的で、かつ、達成感を得られる
ことがポイントになります。
②なぜうつ病患者にとってサステナブルな習慣が重要なのか
うつ病になると患者は心身のエネルギーが大幅に低下します。
それによりモチベーション・意欲を維持することが難しくなります。
しかし元々の性格が真面目で「〜であるべき」思考が強い方が多いため、短期間で無理な目標を立てそれを目指してしまいます。
結果として少なかったエネルギーが枯渇し、挫折感を味わうことになります。
サステナブルな習慣を取り入れることで
- 負担を最小限に抑えながら、効果的な行動が出来る
- 小さな成功体験を積み重ねることで、自己効力感を得られる
- 毎日のリズムを取り戻し、生活の中に安心感が生まれる
という効果が期待できます。
③うつのリハビリへの効果が期待できる
サステナブルな習慣は、うつ病のリハビリにおいて重要な役割を果たします。
理由は以下の通りです。
【心理的な安定感を育む】
毎日少しずつでも何かに取り組むことで、生活に規則性が生まれます。
「何も出来ていない」という自責感を感じることから解放されます。
【自己肯定感を取り戻す】
習慣が続くことで、「自分にはできる」という感覚を育てることができます。
これが、次の行動への意欲に繋がります。
【新たな可能性を発見する基盤となる】
一つの習慣を身につけることで、次に挑戦する自信が生まれ、リハビリが段階的に進みやすくなります。
2.うつ病患者が習慣化の難しさに直面する理由
①病気によるエネルギー低下
うつ病は脳や体のエネルギーを著しく消耗させる病気です。
うつ病になると、今までなら当たり前に出来ていたことが「すごく頑張らないと無理」なものになってしまいます。
例えば、歯を磨く、着替える、といった行動さえも困難になります。
②モチベーション維持の難しさ
意欲・モチベーション、更にそれによる集中力が続かないのは、うつ病の中心的な症状の一つです。
「やりたい」という感情そのものが薄れるので、行動のきっかけがつかみにくくなります。
行動しないことで更に回復が遠のいていきます。
習慣化するためには行動は必須です。
スタートすることすら難しいのがうつ病の現状といえるでしょう。
③環境や周囲のサポートとのズレ
うつ病患者が習慣化に挑戦するためには、周囲の環境やサポートが重要な役割を果たします。
しかし、これが整っていなかったり現状とズレた内容だと、習慣化は更に困難になります。
環境要因:ストレスの多い環境・スケジュール、目標が不明確
周囲のサポート:今の本人の状態が見えづらいせいで理解が不十分になる、うつ病本人の強い孤独感によってサポートと足並みが揃わない
ではどのようにサステナブルな習慣化を取り入れていけばいいでしょうか。
そのステップを見ていきましょう。
3.ステップ1:小さな行動から始める
①「まずは簡単なことから」の心理的な利点
うつ病患者が新しい行動を習慣化するためには、スタート地点を可能な限り小さな行動として設定することが非常に重要です。
最初にやることが「これならできる」と思えることで、心理的なハードルや拒否感が下がります。
それは更に挫折防止、成功体験の積み上げに貢献します。
【小さな行動がもたらす利点】
- 取り組みやすい
- 過剰な負担を避ける
- すぐに達成感を味わえる
②実践例
具体的な行動例として、以下のようなものをご提案します。
これらは負担感が少なく、毎日の生活に取り入れやすいでしょう。
【毎朝5分だけ深呼吸】
5〜10分程度の散歩:所をゆっくり歩くだけ。ペースや距離は気にせず、自分のペースで行う
起きたらキッチンに行き、コップ1杯の水を飲む
③小さい目標の最大のメリットは「成功体験」
うつ病患者にとって、「自分でできた」という成功体験の積み重ねは、次の行動への意欲を育てる大きなカギになります。
ポイントは一度にたくさんのことをやろうとしないことです。
そして完璧は目指さない。成果を求めすぎないことも重要です。
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4.ステップ2:達成感を見える形にする
①行動を記録する:日記やアプリの活用
次は達成感を得やすくするために、やってきたことを「見える化」していきます。
行動を記録することで、毎日出来ていることを振り返り、自分の成長を実感出来ます。
特にうつ病患者の場合「自分は何も出来ていない」という強い無力感に陥りやすいため、記録がその偏った認識を修正してくれます。
記録の取り方として以下の2つをご提案します。
【手書きの日記】
ノートやメモにに毎日の行動や感じたことを箇条書きで記録します
「今日は朝の散歩が出来た」
「今朝は5分間深呼吸した」
のような簡単な記録でOKです。
【アプリ】
スマホアプリを利用して、取り組みたい行動をリスト化し、達成したらチェックを入れる、という方法もあります。
②達成感の見える化
記録を「見える化」することで、習慣を続けるモチベーションが高まります。
見える化には、カレンダーやシンプルなチェックリストを活用することが効果的です。
【カレンダー】
目標を達成した日に色付きペンで○をつける
続けて達成出来たら○と○を線でつなぐ
【見える化のメリット】
まず、目に見えることで「達成できている」ことを何度も確認出来ます。
進捗が一目でわかるので、積み上げだけでなく「あと何日で1ヶ月」のようなゴールが楽しみになります。
自分がやったことは、人はすぐ忘れます。それを防止する効果もあります。
達成感を見える形にすることで、患者自身が日々の取り組みを振り返り、自分を認められるようになります。
この積み重ねが、習慣化を支える大きな力になります。
5.ステップ3:柔軟な計画を立てる
①予定に縛られ過ぎないゆるさを持つ
柔軟な計画とは、あらかじめ決めたスケジュールや目標に過剰に縛られることを予防することです。
その日の体調や気分に合わせて調節できる、調整していいのだ、というマインドで向き合うことが大事です。
なぜ「ゆるさ」が重要なのでしょうか。
何よりうつ病本人の心理的な負担を軽減するためです。
ガチガチに計画や目標に縛られると、「やらなければ自分はダメ人間だ」のような極端なプレッシャーを感じる危険があります。
何よりそうした硬直化したメンタルがうつ病になった原因の一つです。
リハビリするならその点も変えていく必要があります。
「今日出来なくても明日やればいいんだ」と思えるようになるために「ゆるさ」が効果的です。
そして計画倒れのリスクを回避するためでもあります。
完璧を目指すと、一度失敗したときにモチベーションが大きく低下する可能性があります。
「もうやりたくない」「やっても無駄」と逆学習してしまうと、もう一度やろうと思えるためには今回の倍以上の時間と労力が必要になります。
②体調や気分に応じたアプローチの切り替え方
体調や気分によっては、計画を完全にこなすのが難しい日もあります。
そんなときのために「選択肢を用意する」ことが大切です。
【プランA・プランB・プランCを用意する】
- プランA: 体調が良いときの通常計画(例:20分の散歩)
- プランB: 少ししんどいときの軽減計画(例:5分のストレッチ)
- プランC: 体調が悪いときの最小限の行動(例:椅子に座りながら外の景色を見る)
これにより、「全く何もできない」という日を防ぎやすくなります。
【日々の気分チェックを行う】
朝や昼に「今日はどのプランにするか」を選ぶ時間を取ると、その日の状況に応じて無理のない行動計画が立てられます。
③柔軟性を取り入れるための心構え
一番重要なのは「完璧主義を手放す」ことです。
「全てをこなさなければ意味がない」という意識は、リハビリにおいて百害あって一利もありません。
「出来る範囲で十分」と、自分自身を評価する視点が必要です。
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そして「小さくても進歩を評価する」視点も必要です。
毎日やっていることがたとえ完璧でなくても、続けていられればそれがすでに進歩です。
「出来ない理想」より「出来ている現実」のほうが遥かに価値があることを、うつ病本人だけでなく家族も理解する必要があるでしょう。
更に「失敗」に対して柔軟な捉え方を持ちましょう。
予定通りいかない=失敗、と捉えると、もう明日から何もする気になれません。
その日に出来たことがある自分・本人を褒めることを忘れないようにしましょう。
柔軟な計画を立てることで、患者自身の生活リズムや体調に合わせたリハビリが可能になり、長期的な継続を目指せるようになります。
特に、ストレスの少ない方法で「できることを増やす」というポジティブなサイクルが生まれるのが、このアプローチの最大の利点です。
6.ステップ4:達成を振り返り、新たな目標を設定する
①達成した習慣を振り返る
リハビリにおいて、習慣化を目標に取り組んだ行動を振り返ってその成果を確認することはモチベーション維持だけでなくうつ回復のために非常に重要です。
次に進むための目標を設定することで自分のステップアップを実感出来ます。
まず成功体験を認識しましょう。
今回取り組んだ努力が結果に結びついたことを確認出来ると、「自分ならできる」という自己効力感が高まります。
そしてポジティブなサイクルを作っていきましょう。
達成感を感じることで、次の挑戦へのモチベーションが高まり、継続した行動が可能になります。
やってみて感じた不具合や反省も大事なポイントです。
それは改善点として、次の目標を決めるときの条件になります。
②振り返り方法
まずは行動記録、日記やアプリの内容を確認しましょう。
例えば「過去2週間で散歩できた日は何日あるか」「朝食を食べられた日は何回あったか」などをチェックします。
そして結果に肯定的な意味づけを行いましょう。
「2週間のうち散歩出来なかった日が5日もあった」のではなく、「14日の内9日も散歩が出来た」のです。
ずっと家から出られなかったことと比べたら素晴らしい成長ですよね。
そして家族は本人と一緒に前向きなフィードバックを行いましょう。
外側から見ている家族だからこそ、本人には気づかない変化に気づいていることがあります。
「朝ごはん食べられるようになって、寝る時間も早くなったよね」とか、「私も一緒にご飯食べられて嬉しい」のような感謝も効果的です。
③次の目標を設定する
振り返りを通じて、これまでの行動をベースに新しい目標を設定します。
目標設定時には次のポイントを意識しましょう。
【SMART目標を活用する】
目標は、具体的・数値化可能・達成可能・関連性がある・期限を設定することで行動とリンクします。
「ちゃんとする」「立ち直る」「前向きになる」のような漠然とした目標はNGです。
【目標の種類を拡大する】
今取り組んでいる習慣の頻度や時間を増やす、という方法もいいでしょう。
散歩の時間を10分→15分にしてみる、のようなイメージです。
これもいきなり10分→1時間、などにしないよう注意しましょう。
今までやってこなかったことを取り入れるのも、いいタイミングです。
週1回簡単な料理を作る、家族の代わりに図書館に本をを返しに行く、なども視点が変わって新鮮な気持ちになれます。
④達成目標を支える仕組みを整える
新たな目標を設定したら、それを達成しやすくする環境づくりも重要です。
ここは家族が大きく関与出来るところです。
【サポート体制を利用する】
例えば今やっていることやこれからの目標を主治医に相談してみましょう。
医学的な見解を踏まえてアドバイスや注意点を指摘してくれるかもしれません。
【目標の見える化】
よりわかりやすく、記録漏れしない方法を考えるといいでしょう。
【動機づけを保つ仕組み】
ご褒美、というのはやる気を引き出すために有効と思われがちですが、実は逆です。
やる気を出している人に「ご褒美をあげる」と言うとモチベーションが低下します。
うつ病の人は物が欲しいのではありません。もう一度頑張れるための自信が欲しいのです。
そのためには一緒に生活している家族からの承認・褒め言葉が一番効果があります。
7.挫折しても再挑戦する心構えとは
一番の懸念点は「挫折したときどうすればいいか」ではないでしょうか。
挫折、という状況をどう捉えるか、がポイントになります。
人間は完ぺきではありません。どれだけ準備してハードルを下げても出来なかったり失敗することはあります。
むしろ新しい習慣を作ろうとするとき、失敗するのが普通です。
そして「出来なかった」「失敗した」ときに、自分・本人を責めることは何のメリットもありません。
厳しくすれば人は奮起する、というのは完全な誤りです。
そうではなく「どうして今回は出来なかったか」「どこを変えれば出来ると思えるか」を考えるタイミングと捉えましょう。
もし失敗した日があっても、それはリセットしただけ、と捉えましょう。
ゼロに戻っただけです。マイナスではありません。
セロ、と思うことで落ち込むなら「まっさらになった」と考えましょう。
「長続きさせること」はスキルであり、努力を楽しむ工夫をしながら少しずつ身につけていくことが大切です。
8.まとめ:一歩ずつ進む大切さ
サステナブルな習慣づくりは、うつ病リハビリの中でも非常に重要な要素です。
特別な努力や大きな変化を求めるのではなく、小さな一歩を積み重ねることで、心と体のバランスを取り戻すことができます。
この記事でご紹介した方法を取り入れる際には、何よりも「無理をしない」「自分に優しくする」ことを大切にしてください。
たとえ少しずつでも、続けることで新たな可能性が広がります。
うつ病本人が心地よく続けられるペースを見つけ、少しずつ日常に変化を取り入れていきましょう。
その積み重ねが、豊かで穏やかな未来への道しるべとなることを願っています。
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