心と体を守る「外部環境」の力:身の回りの自然や住環境がもたらす効果とは

西岡惠美子

西岡惠美子

テーマ:働く人のメンタルヘルス対策

心と体を守る「外部環境」の力:身の回りの自然や住環境がもたらす効果とは

私たちの日々の生活は、自然環境や住居、移動環境などの外部要素に大きな影響を受けています。
たとえば、天候や緑豊かな景色は気分を左右し、住居環境や移動中の快適さも心理的な安定に関わってきます。
こうした外的な要因を理解し、整えていくことで、私たちはストレスの軽減や抑うつ気分の緩和に役立てることができます。
このコラムでは、私たちを取り巻く外部環境の種類と、それぞれがメンタルヘルスに及ぼす影響について考え、どのように活用できるかを解説していきます。


1.私たちを取り巻く外部環境とは?


①自然環境


  • 天候(晴れ、雨、曇り、雪、霧など)
  • 地形(山、川、海、湖、森林など)
  • 植物(庭や公園の花、街路樹、近くの森)
  • 動物(野鳥、ペット、昆虫など)
  • 地面(芝生、土、砂利、アスファルト)


特に影響を受けるのは毎日変わる天候ですね。最近は「気象病」なども注目されています。

②住宅・建物周り


  • 自宅(外壁、庭、ベランダ、玄関など)
  • 隣接する住宅(隣家のフェンス、屋根、窓)
  • 集合住宅の共有スペース(エレベーター、廊下、ロビーなど)
  • 近隣の商業施設(スーパー、カフェ、コンビニ、薬局など)
  • オフィスビルや公共施設(役所、学校、病院)


人は常にどこかの施設の中にいます。そこから受ける影響は大きいです。

③移動関連の要素


  • 車両(車、バイク、自転車など)
  • 信号機、横断歩道
  • 鉄道の線路、高架橋
  • 空港や港湾施設(滑走路、フェリーターミナル)


移動中のストレスも見逃せません。代表的なものは通勤通学ラッシュですね。

他にも

  • インフラ設備
  • 公共スペース
  • 商業エリア
  • 近隣のコミュニティ関連
  • 緑地・景観関連
  • 産業・業務エリア
  • 地域特有の景観・建物
  • 家の内外の施設や家具


などが考えられますが、まずは代表的な上記3つについて考えていきましょう。



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2.外部環境とメンタルヘルスの関わり


「気の持ちよう」という言葉がありますが、メンタルが落ちたとき、人はメンタルの力で立て直そうとします。
しかしよく考えたらおかしな話ですよね。折れた脚を使って骨折を治そうとするようなものです。
メンタルが凹んだら、それ以外の要素で立て直すほうが手っ取り早いです。
そのための外部要素です。

では先ほどの主要素3つはどのようにメンタルに関わって来るでしょうか。

①自然環境


まずポジティブな影響としては、リラックス効果が上げられます。
緑や水辺の風景にはリラックス効果があり、ストレスの軽減や心の安定に役立ちます。
特に植物や動物などの自然との接触は幸福感やポジティブな気分を高める効果があります。

逆にネガティブに影響するのは、天候や地形がネガティブ感情を刺激する場合です。
悪天候や危険を感じさせる自然環境によっては、気分が沈んだり、孤独感や無気力感が増したりする場合があります。

②住宅・建物周り


家や隣接する住宅が整然としていると安心感を得やすく、心の落ち着きに寄与します。
また、商業施設のアクセスが良いと生活の利便性が高まり、心理的な負担を軽減します。

しかし住宅密集地や高層ビルに囲まれた環境は、閉塞感や息苦しさを感じることがあります。また、隣人の生活音が多いと、ストレスや不安感が増すことがあります。

③移動関連の要素


整備された交通網や、交通の便が良い場所にいると行動の自由度が高まり、活動的な気分が促進されます。乗り物を利用する際に他者との間に適度なスペースを確保できることによって快適に移動することが可能です。

逆に交通渋滞や混雑、ラッシュ、騒がしい車両音などはイライラの原因となりやすく、心理的な負担を増加させる要素になります。

3.外部環境の整備と抑うつ気分への効果


目に見える要素は変更や排除が可能です。目で見て分かるので「以前とは違う」ことを確認出来、安心感も得やすいです。
具体的には以下のような効果が想定出来ます。

①自然環境の充実


自然との触れ合いは、ストレスホルモンの低減や心拍数の安定に役立ち、リラックス効果をもたらします。
毎日、自然の風景を眺めるだけでも気分が落ち着き、ポジティブな思考が生まれやすくなります。

  • コルチゾールの分泌を抑えることによるストレス軽減
  • 心拍数や血圧が安定することで体がリラックスし、睡眠の質向上が期待できる
  • 脳波がリラックスし、自律神経のバランスが整う
  • ポジティブな思考が引き出され、視野が広がり、思考が柔軟になる


が期待できます。

【改善例】
観葉植物や花を家の中に取り入れる
公園など自然豊かな場所での散歩を日課にする

②住居・建物環境の整備


住環境から必要以上の刺激をうけなくなることで、安心感が高まり、自己効力感や満足度の向上が期待できます。
また、身近な空間が快適であれば、ストレスが減少し、生活への意欲も向上します。

  • 住環境が整うことで「自分は安全な場所にいる」と感じることが出来る
  • 家の中は自分が考えて変えることが出来る。それによる効果は「自己効力感の向上」にも寄与する
  • 住環境の整備は生活への満足感を高める
  • 自分達で変えた結果が良い効果になって現れることで「もっと良くしよう」というモチベーションに繋がる


が期待できます。

【改善例】
住まいの掃除や整理整頓を行い、部屋を広く使えるようにする
周囲に植物や柔らかい照明を置く
家具の配置を変えて安心感を高めたり音・光から自分を守る

③移動環境の工夫


移動中に穏やかな景色を楽しんだり、新鮮な空気に触れると気分がリフレッシュでき、気持ちが前向きになりやすくなります。
またネガティブな要素を除外することで、家から外へ出ることへの抵抗感も下げることが出来るでしょう。

  • 移動中に新鮮な空気に触れることで、脳への血流の改善になり、疲労感や倦怠感が軽減される
  • 渋滞や混雑を開けることでイライラや不安感を低減で消える
  • 混雑を避けることは移動時間の短縮も期待できるため、時間を有効活用出来ることで自己効力感も高まる


という効果が期待できます。

【改善例】
日常の移動ルートに、自然を感じられる場所を取り入れる
落ち着いたエリアを通るようにする
早起きして空いている電車に乗る/道路を使う



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4.外部環境の調整で注意すること


外部要素を調整することはメリットも効果も大きいですが、以下の4つに注意しましょう。

①無理をしない


疲れやすい状態や、気分が安定しない時に無理に環境を改善しようとすると、かえって負担やストレスが増える可能性があります。

一度にすべてを変えようとせず、小さなステップで少しずつ取り組むようにしましょう。
例えば、部屋の整理整頓を少しずつ行う、週に一度植物を買い足すなど、負担にならない範囲で少しずつ改善していくとよいでしょう。

②他者の協力を得る


改善を進めることで環境が変わるため、家族や同居人にとっても心地よい環境かどうかの配慮が必要です。また、自力で行うことが難しい時は無理せず頼ることも大切です。

一緒に改善のアイデアを話し合い、相手の意見も取り入れて計画を立てることで、みんなが心地よい空間を目指せます。
また、物の移動や模様替えなど、力仕事が必要な場面では、家族や友人の助けを借りるのも一つの方法です。

③日常のリズムを崩さない


大きな模様替えや頻繁な改善は、日常リズムが崩れ、慣れるまでにストレスを感じることもあります。

大幅な変更を避け、まずは小さな改善から始めましょう。
新しいアイテムの追加やレイアウトの調整など、少しずつ変化を加えると、適応しやすくなります。

④シンプルな改善を目指す


あれもこれも取り入れると、かえって雑多な印象になり、心が落ち着かないこともあります。

必要最低限で効果的な改善を目指し、シンプルな空間づくりを意識すると良いです。
たとえば、家具や装飾品を増やしすぎず、機能的で落ち着いた空間にすることで、心地よさが維持されやすくなります。



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5.まとめ


①私たちを取り巻く外部環境主要3つ:自然、住宅、移動手段
②外部環境とメンタルヘルスの関わり
③外部環境の整備がどのように抑うつ気分改善につながるのか
④外部環境調整時の注意点 4つ


外部環境の整備は、メンタルヘルスに直接的なポジティブな影響を与える力強い手段です。
自然環境に触れることや住環境を整えること、移動中のストレスを軽減する工夫は、抑うつ気分やストレスを和らげるのに効果的です。
日々の生活環境を少しずつ調整することで、リラックス感や安心感を得られ、自分自身の心の安定を助けることができるでしょう。

ただし、改善を試みる際は、無理をせずシンプルな方法を選び、身近な人の協力も得ながら取り組むことが大切です。
自然な形で生活空間を整え、心が落ち着く環境を作り上げていきましょう。

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