心の回復力を鍛える:レジリエンスとコミュニケーションの関係

テーマ:自己啓発

心の回復力を鍛える:レジリエンスとコミュニケーションの関係

レジリエンスとは「回復する力」であり、逆境や困難に直面したときに、ネガティブな感情に支配されることがあっても、必ず回復する力を指します。
この回復力は単なる「元気になる」以上のメリットをもたらし、現代を生き抜くために不可欠なスキルです。
他者とのコミュニケーションは、レジリエンスを高めるために重要な役割を果たします。
他者からの理解や共感、受容、励ましは、孤独を解消し、自己受容を促進します。
今回は、コミュニケーションを活用してレジリエンスを高める方法について考えます。


1. レジリエンスとは何か?


①レジリエンスの定義とその重要性


レジリエンスとは、落ち込んだ時や逆境にあるときにそこから回復する性質とスキル、力のことです。
個人の適応力、回復力、自分への自信の強さなどが影響します。

心理学におけるレジリエンスとは、社会的ディスアドバンテージや、己に不利な状況において、そういった状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力と定義される(wikpedia)


②レジリエンスがもたらす効果


レジリエンスが高い人は、ネガティブな状況に遭遇したときに、どれくらいで・どうやって自分が回復するのかを知っていたり、回復する自分を知っているため、未知の環境や状況に対して必要以上に警戒することがありません。
そのため様々なことへ挑戦でき、結果に対してポジティブでいられるため経験を学習に転化することが出来ます。

また、もし想定外の状況が起こっても落ち着いて対処することが出来るためストレスを抱えることが少なく、次善策を構築することも可能です。

結果として将来にも自分にもポジティブな見方を維持することが出来ます。

2. コミュニケーションの役割とは


①コミュニケーションがレジリエンスに与える影響


コミュニケーションは、レジリエンスを育むための重要な要素です。
良質なコミュニケーションは周囲からのサポートを受けるための土台です。そしてストレスを抱えている時や困難な状況にあるとき、それらへの適応力を高める手助けになります。

具体的には以下の3つがレジリエンスに与える影響です。

◆感情面のサポート

他者との良質なコミュニケーションはストレスを受けているメンタルをケアする手助けになります。
特に自分にとって大事だと思う特別な関係の相手(家族、友人、パートナー、尊敬する人など)とのコミュニケーションは回復への手助けになります。

◆問題解決

他者とのコミュニケーションの中で、自分が抱えている問題を解決するためのヒントを見出すことが出来ます。
直接的なヒントではなくても、コミュニケーションから刺激を受けることで自分が持つ解決力が活性化することも考えられます。

◆自己表現

自分が抱えているストレスや問題を誰かに表現し伝えることは孤独感を軽減してくれます。また、他者への言語化の過程で自分の思考が整理され回復への助けにもなります。



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②良好なコミュニケーションが心の回復力を高める理由


先ほども少し触れましたが、レジリエンスを高めるためにコミュニケーションを活用するなら、それは良好な相手との良質な内容であるほうが効果が高いです。
その理由は以下の3つです。

◆孤独感の解消

良好なコミュニケーションは、孤独感や孤立を解消してくれます。
悩みごとがあったりストレスを抱えている時は、些細な刺激が自分をネガティブな意味で「特別」と考えさせます。そして「全部自分が悪いのだ」という極論を引き寄せます。
親しい人と感情や悩みを共有することで、「自分だけが悪い意味で特別で、そのせいで今の状況を引きこした」わけではない事実を忘れずに済みます。

◆問題解決能力の向上

自分以外の人や何かから受ける刺激は、八方塞がりに感じていた状況を打開する手掛かりを与えてくれます。
親しい関係の人や信頼している相手との関わりは勿論、専門家からの助言や書籍からの気づきも、レジリエンスを活性化してくれます。

◆自己効力感の向上

自己効力感とは「自分ならできる!大丈夫!」と信じられる感覚です。ネガティブ感情に囚われている時でも選択・行動しなければいけません。その内容に対して他者から前向きな評価・フィードバックを受けられると、自分への自信を回復することが出来ます。



3. レジリエンスを高めるための基本的なコミュニケーションスキル


①アクティブリスニング(積極的傾聴)


1つ目はアクティブリスニングです。
アクティブリスニングとは、相手の話をしっかり聴いて理解しようとする姿勢です。これにより相手との信頼関係が強まります。
具体的な手順は以下の通りです。

  1. 注意を向ける:身体の向きや目線を相手に焦点を当てます。
  2. 相手の話に集中する:気が散る環境や条件を排除します(テレビを消す、静かな場所を選ぶ、スマホを遠ざけるなど)
  3. 非言語情報に注意を配る:言葉以外の、仕草・目線・声のトーンや大きさ・沈黙の長さやタイミングから相手の意図を汲み取るよう注意を向けます。
  4. フィードバックを返す:意見を言おうとする必要はありません。「あなたの話をしっかり聞いています」という気持ちが伝わるよう、相づちをうったり、「つまりこういうこと?」と確認したり、分からないことはスルーせず質問したりします。
  5. 共感を伝える:特に相手の感情に対して、その人になったつもりで感情を再体験して、それによって感じた気持ちを言葉で伝えます。


こうした手順をふむことで、お互いの信頼関係が高まり相互理解が促進されます。



②共感


コミュニケーションにおいて共感は非常に重要な要素です。特にレジリエンスを高めるためには共感は必須です。
共感は、された側だけでなく、した側にも良い影響を与えます。
具体的に以下のスキルがレジリエンス向上に寄与します。

  • アクティブリスニング
  • 非言語コミュニケーション:アイコンタクト、ボディランゲージ、目線を合わせる、相手と表情を合わせる
  • 感情を反映した返答:話し手が感じている感情を「それを否定しません、理解しています」と伝えるような返しをします。しかし自分まで相手と同じ理由・視点で同じ感情を持たなければいけない、ということではないので注意しましょう。


共感されることで自分が受け入れ切れずにいた体験や思考・感情を受け入れることが出来るようになります。体験を受容すると、「ではどうやって解決しようか」という未来志向へつながります。

そして共感した側は、相手との勘定的なつながりが強化出来たこと、相手の心的負荷の軽減を手伝えたことで自己効力感が高まります。繋がりを感じることはオキシトシンやセロトニン分泌を促進し、自分自身のストレスケア効果も期待できます。



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③アサーティブネス(自己主張)


アサーションとも呼びます。自分の考えや感情を、相手への尊重を考慮して伝える方法です。「自分もOK、相手もOK」なコミュニケーションスキルです。

  • 明確で肯定的な自己表現
  • ノーを伝えるための表現を工夫する
  • お互いの立場の対等性を意識する
  • 建設的な対話を務めて相互理解を深める


最も実用的なアサーティブネスなコミュニケーションは「アイメッセージ」です。主語を「私は(=I)」にして感情や考えを伝えることで、相手の立場も尊重しつつ自分を押さえつけない対等なコミュニケーションを実現出来ます。

アサーティブなコミュニケーションにより、自己効力感が高まり、人間関係が健全になって、ストレスが軽減され、結果としてレジリエンスが強化されます。

4. 困難な状況におけるコミュニケーション


① コンフリクトマネジメント(紛争解決)


コンフリクトとは混乱している状態です。悩みがあったりネガティブ感情に囚われている状況は、個人の中で「紛争状態」にあると言えるでしょう。これは何としても解決したいですよね。そして解決出来てメンタルが回復すれば、自己効力感とレジリエンスの両方が高まります。

コンフリクトマネジメントのステップは次の通りです。

  1. 問題点を明確にする:何に取り組むことで混乱状態が解消されるか、の仮説を立てます。
  2. 感情表現:混乱解決に関わる人に、アイメッセージを使って自分の考えや感情を伝えます。
  3. 解決策を考える:当事者が複数いる場合は全員のニーズを踏まえて、自分一人の問題なら自分の欲求や希望を踏まえて、複数の解決策を考えます。一人だけで思いつかない場合はメンター(仕事や人生において後輩や部下に対してアドバイスやサポートを行う役割の人)に相談して意見を聞いてもらったりアドバイスをもらうのもいいでしょう。


そして最終的にコンフリクト(混乱)状態を解決する行動を実践します。

②ストレスフルな状況での効果的な対話


ストレスフルな状況は、レジリエンスが試される場面です。
ストレスは「感じないようにする」ことで余計強まります。一度受け止めて、自分に合った方法で対処し、ダメージから回復するルートを取ることをおすすめします。

そのためにコミュニケーションを活用する方法は以下の通りです。

  1. 休養を求める:ストレスフルな状態では建設的理論的思考は難しいです。一旦冷静になるために、休養や休息を申し出ることも必要なコミュニケーションの一つです。
  2. 5W1H:ストレスフルでネガティブな感情に囚われている時は、その感情をどのように認識するか、で、その後の回復ルートが決まります。「むかつく」「うざい」「だるい」は、感覚的にはマッチしてもその後の解決にはあまり結び付かない表現です。例えば無力感を感じているなら、それを5W1Hで分析します。
  3. フィードバックの受け入れと選択:他者からアドバイスやフィードバックを受け入れた時、その全てを実践・同意する必要はありません。自分が実行可能な内容を適切に選択し、実践しましょう。



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5. 成功事例とケーススタディ


①レジリエンスを高めた実際のコミュニケーション例


【家庭での境界設定と自己表現】

背景
・山田さんは、家族との時間を大切にする一方で、仕事の要求に常に応じてしまい、家族との時間が取れない状態が続いていました。
・家族との関係が悪化し、ストレスが増していました。

実践
・山田さんは、アサーティブネスの一環として、境界設定と自己表現の重要性を学びました。
・仕事の要求を適切に断る方法を身につけ、家族との時間を確保することを決意しました。
・上司に対して、明確かつ尊重を持って「ノー」と言う練習をしました(例:「今週末は家族との時間を大切にしたいので、追加の仕事は引き受けられません」)。

結果
・山田さんは、家族との時間を確保できるようになり、家族関係が改善されました。
・境界設定により、仕事のストレスが軽減されました。
・家族との時間を大切にすることで、全体的な生活の満足度が向上しました。

②ケーススタディを通じた学び


この事例では、まずは「NOの自己主張」が出来たことがレジリエンスに寄与しています。
NOを我慢することで家族との時間が取れないという問題が起きて、フラストレーションが溜まっていました。更に「NOを言わせてくれない上司」との信頼関係にもネガティブな影響が出ていた可能性があります。

NOを適切に伝えることが出来たおかげで家族との時間を確保でき、フラストレーションが解消され、受け入れてくれた上司との信頼関係を回復させることが出来ました。

更に、問題解決をするために他者に働きかけることが出来たので、自己効力感が高まりました。この成功体験は次回以降問題が発生したときに「自分なら解決することが出来る」という信頼感へ貢献します。
自分への信頼感はダメージからの回復を早めることが出来るので、結果としてレジリエンスが向上します。



6.まとめ


①レジリエンスとコミュニケーションには密接な関わりがある
②レジリエンスとは、逆境から回復する力。高めることで自信につながる
③レジリエンスにおけるコミュニケーションの役割とは、感情面のサポート、問題解決、言語化である
④基本スキルは、アクティブリスニング・共感・アサーションの3つ
⑤困難な状況でコミュニケーションが担う役割は、コンフリクト解決・ストレスフル状況での対話実現である
⑥事例で見るレジリエンス×コミュニケーション活用


レジリエンスを高めるためには様々なステップや手法があります。
その中でもコミュニケーションが担う役割は、レジリエンスが一人よがりにならないために効果をもたらしてくれます。

他者に依存しすぎず、一人で抱え込み過ぎることを避けるためにも、コミュニケーションを適切に活用しながらレジリエンスを高めていきましょう。


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西岡惠美子
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西岡惠美子(カウンセラー)

惠然庵(けいぜんあん)

私自身がケアラー(病人のケア、療養サポートをする人)です。自身の経験と専門知識による「メンタルケアラーカウンセリング」でケアラーのサポートと成長、家族支援を行います。

西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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