仕事がデキる人がしてること
どっちつかずだったり結果が出ない状態は、不安や疑問、焦りの原因にもなります。
絶対の正解が見つからず探し続ける状態は非常にストレスです。早くそこから抜け出したくて余裕を失います。
しかし「早く」を意識しすぎるあまり、最善手を逃してしまっていないでしょうか。
どっちつかずで中途半端なプロセスの途上を耐える力を得るため、まずは自分自身のモヤモヤと向き合いましょう。
1.どっちつかずが辛くなる仕組み
①無理に決断・行動・選択する
どっちつかずな中途半端で不確実な状態は、気持ちも立ち位置も態度も安定しません。
安定しない状態は早く終わらせたいと考えるのが普通です。
どっちつかずを終わらせるために、「何でもいいから決めてしまえ」「やっちゃおう」と考えます。
選択・決断・行動の根拠が「今(どっちつかず)な状態を終わらせる」になります。
本当に取るべき選択ではなく「実行しやすいもの」になる可能性が高いです。
後悔する確率は高くなります。
②検討が不十分な為結果に不満を持ちやすい
どっちつかず状態を終わらせるための選択・決断ですから、「どっちつかずな状態が解消」されれば成果アリ、と考えていいはずですが、安定を取り戻して気持ちに余裕が出来るとその目的を忘れてしまいがちです。
そして本来目指すべきだった状態を思い出しますが、今行った選択は「どっちつかずを解消する」ことを主眼としていたため、当然ずれています。
当初期待していた成果は得られず、自分や状況、環境に対して不満を持ちやすくなってしまいます。
③ストレスから自己批判を繰り返す
冷静さを取り戻すと「どうしてあの時あっち(どっちつかずを解消するための選択肢)を取ってしまったのか」と、自分を振り返って自己批判するようになります。
その時はとにかく気持ちや立場を安定させたかったのだから、仕方がなかったとも言えます。
しかし人は自分に対しては「仕方がなかった」という納得の仕方をしません。それは甘えと捉えてより一層自分を責めるようになります。
そしてストレスが増していってしまうのです。
2.どっちつかずな状態を苦しめる感覚とは
①「この状態が続いて、未来はどうなるのか」という不安
どっちつかずな状態が辛い理由の一つが「未来への不安」です。
そもそもが未来が不安ない状態のとき、「変化がない」ことはそのまま不安を増幅する種になります。
変化がない、とは、悪いほうへも進んでいない、と考えることも出来るのですが、「良い未来へ向かわなければいけない」と強く思い込み過ぎることで「良い兆候がない=変化がない=ダメな状態」と考えてしまうのです。
変化がないまま、特別な行動を取らずに過ごしていることへの不安、そして自責が生まれてしまいます。
②「どこかに必ず正解があるはず」という期待
どっちつかずな状態は、「何が正しいのか」が分からない時にも起こります。
「VUCA」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
『VUCAは、不確実性(Volatility)、不安定性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧さ(Ambiguity)の頭文字を取ったものです。
これらの要素は、現代のビジネス環境がますます不確実で変化しやすく、複雑であることを指します』
どこかに必ず正しい不変の正解がある、と思っていると、「正解探しの旅」が始まってしまいます。それは終わりがありません。必要なものは正解ではないかもしれないのに。
不確実で不安定で複雑で曖昧な状態は、間違った状態でも自分がおかしいのでもなく、今やそれが当たり前なのだ、と、前向きに受け容れる必要があります。
③「このままでいていいのか」という焦り
どっちつかずな状態が嫌で、「早くここから脱したい」と考えて無理な決断や行動を取るリスクにつながってしまうことはすでに述べました。
それは自分にとって不本意な状態だからですよね。
ということは「こうだったらいいな」という好ましい状況も想定しているはずです。
本来は「好ましい状態」を目指すプロセスの途中だったはずなのに、焦りがそれを忘れさせてしまっていることがあります。
3.どっちつかずな状態に耐える
①待つ決断をする
どっちつかずな中途半端で不安定な状態は、逆に言うと「まだ何かを決断・安定させるタイミングではない」ということです。経過観察中、のイメージですね。
どっちつかずな状態に対する不安、焦りを拒絶せず、「今は決断したり行動するタイミングではない」ことを認識することが大事です。
待つ、という他にも、様子見・観察・見守り・距離を置くイメージですね。
②全体を俯瞰し、「今どの段階か」を知る
「何かを決断・実行するタイミングではない」ことを受け容れるためには、全体の流れを把握しておくことが役に立ちます。
子どものときの「朝顔観察」を思い出しましょう。
種を植えて○日後に目が出て、それから双葉が開いて、本葉が伸びてきて、蔓が伸びて二週間ほどで花が咲きます。
この流れを知っていると、例えば5日目だとしたらどんな状態なら問題ないか、を確認して安心出来ますよね。まだ5日目なのに「花が咲かない!」と焦っても仕方がありません。
全体の流れを把握し、今どの段階にいるのかを知り、次のステップの準備に時間を充てることが出来ます。
③「今」必要な選択・決断・行動が分かる
全体を俯瞰して今どの時期に当たるかを確認すると、「この先どうなっていくことが理想的か」を考えることが出来ます。
次のステップ、更にその次の段階を迎えた時、十分に効果を発揮できるための準備は万全に整っているでしょうか。
意外と「早く、早く」とスピードばかり気にしすぎて、準備が十分とは言えないことも少なくありません。
もしまだ不足していることがあるなら、補完するための時間に使えますね。
④必要な行動を取りつつタイミングを待つ
選択・決断・実行はしない、今できることをする時期で、では何をすればいいのか、まで決めることが出来れば自ずとメンタルは安定していきます。
どっちつかずで中途半端な状態が辛いのは、「何をすればいいか分からない」からでもあります。
今自分がすべきことが分かって、それに取り組めていると自覚出来れば、選択・決断・行動のタイミングを待つことはそれほど難しい作業ではなくなります。
4.「どっちつかず」から生まれた感覚を受け容れる
どっちつかずで中途半端な状態で自分が抱える感情は、言葉にするのが難しいものが多いです。思考や感情というより「感覚」と言ったほうが近いでしょう。
言葉に出来ないほどあやふやなものだから、自分の気のせいかも、怠けているからでは、更には「何かの予兆かも」などと考えて、それを振り払うために不本意な選択・決断・行動に走ってしまいます。
不本意な結果を避けたいと思うなら、その手前の「あやふやな感覚」を受け容れてみましょう。それが「フォーカシング」です。
①フォーカシングとは
フォーカシングとは、言葉にしづらい、もやもやした曖昧な感覚と向き合うことで心の安定を目指す心理療法です。
『ジェンリンズによって提唱され、1960年代に発表されました。フォーカシングは、クライアントが自分の内面にフォーカスし、その内面の情報や感覚に耳を傾けることを通じて、問題解決や心理的な成長を促進します。
フォーカシングは、クライアントが自己の内面にアクセスし、その内面の情報に対して非常に優しい、受容的な態度を取ることを重視しています。このプロセスは、クライアントが自分自身を受け入れ、理解し、癒すための有効な方法として広く使用されています。』
②フォーカシングのやり方
フォーカシングのやり方は以下の通りです。
1)自分が感じている「モヤモヤして気になる」「言葉で上手く表現出来ない」感覚を扱う
↓
2)リラックスできる場所で<1>に意識を集中する
◆感触
◆手触り
◆形・色
◆動き
↓
3)<2>で浮き上がって来た感覚の存在を認める「よくわからないけど何かある」
↓
4)「何かある」と思ったものを、じっくりと感じる+向き合う+一緒に居る
↓
5)「何か」に名前を付けてみる(<2>で感じたものをヒントにしましょう)
◆イガイガくん
◆ちくちくさん
◆もやっとちゃん
↓
6)「何か」(つけた名前)と対話する
◆ちくちくさんは何に対してイライラしているんだろう
◆ちくちくさんは、私の喉の辺りにいる
◆何かしなきゃ、って言ってる気がする
◆でもちくちくさんも「何をすればいいか」は分かってないらしい
↓
7)対話によって新しい気づきが得られる ⇒対話をテーマにジャーナリングするのもOK
つまりフォーカシングを通じて、自分の中にある感覚を
「見つける」⇒「観察する」⇒「自分の外側に置く(名前を付ける)」⇒「対話する」⇒「気づき・発見」⇒「安定を取り戻す」
という流れが生まれるのです。
③フォーカシングのメリット
フォーカシングをすることで、様々なメリットが考えられます。
◆自分自身への理解度を深める
もやもやした正体不明の「感覚」と向き合うことで、自分が何に対して不快だったのかを知ることが出来ます。正体不明なまま抱え込んでいたから、必要以上の不安や焦りを感じてしまっていたのです。
自分が感じているものが何に関わっているものだったのか、実は一番の課題とは全く関係ないものが原因だった、と気づくこともあります。
◆ストレスの軽減
正体不明なもやもやは存在するだけでストレスです。なんとかして解消しようともがきますが、そもそも正体不明なままだと解消方法すら分からないでしょう。
自分の内面にある感覚に注意深く集中する行為は「マインドフルネス」と似ています。良い悪いの判断をせずじっくり自分の内側と向き合うことで「今」の自分を受け容れることが出来ると、不要な緊張感が減っていき、余裕が生まれます。
◆問題の解決方法が見つかる
正体不明なもやもやによって集中力が妨げられていたとすると、それが解消されることで思考や感情に余裕が生まれます。
すると「これからどうすればいいか」を考えることが出来るようになります。
また、フォーカシングによって深まった自己洞察は、「これからどうすればいいか」を考えるときに大きなヒントにもなります。
5.フォーカシングによって「どっちつかず」はどう変わるか
①言葉に出来ないネガティブ感覚に追い立てられなくなる
どっちつかずで不安定な状態に対してもやもやと感じていた感覚が明確になることで、不明瞭さが生んでいたネガティブ感覚が減っていきます。
「よくわからないけれど急いだほうがいいかもしれない」
「とにかく何かしないと落ち着かない」
と追い立てられることが無くなります。
②「今」に留まる余裕が生まれる
フォーカシングで少しずつ自分自身の感覚が明瞭になっていくことで、思考や感情を仕分けることが出来るようになります。
一番に考えなければいけないテーマと、自分を不必要に追い立てていた「ねばならない」感覚を分けて考えることが出来るようになるのです。
例えば「家族があと1ヶ月で職場復帰することになったけど、休職時と今とでそれほど大きく変化したように見えない。今から規則正しい生活をさせないといけないのでは」と考えている時。
その心配はその通りかもしれませんが、本人と主治医、職場とでどういう話し合いになっているか、復帰後どんなステップで元の状態に戻っていくことを目指しているか、を聞いていなければ対処のしようがありませんよね。
自分がもやもやしていたいのは「聞いたほうがいいと分かっているけど聞けていない状況」に対する焦りや不満かもしれません。
ならば対処すべきは本人の生活リズムよりも、「聞いたほうがいいけど聞けない理由」を探ることかもしれません。
そうすればむやみに本人を追い立てることもなくなるでしょう。
③「今すべきことは何か」を考えられるようになる
上述の「全体を俯瞰して今の段階を認識する」ことが出来るようになります。
必要以上に「どっちつかずな状態」を回避しようとしていた原因が「正体不明のもやもやへの不快感」だとすると、フォーカシングによってもやもやが正体不明ではなくなったことで「早くどっちつかずを解消しなければ」とは考えなくなります。
焦りがなくなれば「ところで本当はどうしたいんだったっけ?」を思い出すことが出来ます。それが「全体を俯瞰する」ことです。
むやみに焦る必要がないなら、落ち着いて「今すべきことは何か」を考えやすくなりますよね。
6.どっちつかずな状態を受け容れるためにすぐできること 3選
①情報収集
この「情報」には自分自身についての情報も含まれます。
どっちつかずで中途半端と感じているのは自分だけかもしれません。自分は特別なことはしていないと思っていても、周囲の状況は色々変化しているかもしれません。
そして「自分は何もしていない」と思っていても、実は出来ている可能性があります。
今持っている情報だけが全てではありません。
自分と周囲、環境を今一度観察し直しましょう。
②自分自身のリラックス、メンタルケア
どっちつかずな状態、言葉に出来ないモヤモヤした感覚を抱えている状態はそれだけでストレスです。
フォーカシングでもやもやに対してはある程度軽減できるとしても、そもそもの自分のメンタル状態が不安定ではまた別のもやもやが生まれる可能性もあります。
一見関係ないと思うかもしれませんが、睡眠の質を上げたり、適度な運動をしたり、好きなことを楽しんで気持ちをリラックスさせることも忘れないようにしましょう。
③過去の棚卸からヒントを探す
大人が抱える悩みやストレスは、実は「今までに似たようなことを経験している」ことが多いです。
状況や環境は違うかもしれませんが、自分自身の思考や感情、行動は「いつものパターン」を繰り返している可能性が高いです。
どっちつかずで何も行動出来ないタイミングを活かして、過去を振り返ってみましょう。
「そう言えば昔も似たことがあったな」と思い出せたら大きな収穫です。そこに「これからどうすればいいか」のヒントが隠れているでしょう。
7.まとめ
目に見えないプロセスの中で、変化がないまま時間が過ぎていくことをじっと耐えるのは、一見何もしていないようですが非常に勇気が必要な姿勢です。
決断や行動が必要な場面は多いです。しかしその決断や行動を選択した過程や理由もまた重要です。なぜならそれに対して自分が十分に納得できていなければ、結果に対して強い不満や失望を感じて、それがそのまま自分の自信を失うことにもつながるからです。
どっちつかずで曖昧な状態を耐える力をつけることは、焦った選択や行動を防ぎ、タイミングを待つ余裕を作ってくれます。
そのためにまずは自分自身の不安定な感覚と向き合ってみましょう。
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