うつ病急性期の症状と治療・サポート
3つのタイプ別アプローチと家族ができる4つの取り組み
精神疾患の家族との関わり方は、繊細さと柔軟性が求められるため難しいです。
日によって、状態によって、家族側からの関わり方を変える必要があるからです。
今回は精神疾患本人のタイプを3つに分けて接し方をご提案します。
家族に出来ることがどこまでか、を認識し、本人を尊重しつつ前向きに関わっていきましょう。
目次
1.関わり方を考えるときの3つのタイプ
①タイプA:未自覚タイプ
まだ自分の精神疾患を自分事として受け入れ切れていないタイプです。
それほど症状が重くなく、自分で感じる困りごとも多くない、発症初期に多いです。
仕事に行くのは辛いけど家に居ればそれほど困ることはないから、少し休めば大丈夫、何故周囲が騒ぐのか分からない、というのが本音でしょう。
②タイプB:不平不満タイプ
自分が精神疾患だ、という認識はありますが、そうなった原因が環境に由来するものが多い場合です。
そして病気になるほど辛い思いをしてきたプロセスに対し、不平不満がたまっていて、それを十分に他者に理解されていない、という思いが強いです。
愚痴になるから言ってはいけない、と思っている反面、誰かに聞いてもらいたい、という欲求もあります。
辛さのあまり他責傾向になりがちです。
③タイプC:主体的タイプ
自分の精神疾患を受け入れ、どうにかして解決したい、頑張りたいという意欲を持っている方です。発症からある程度時間が経って余裕が持てているケースです。
主治医やカウンセラーなどに自分から相談したり、インターネットや専門書を読んで情報を集めたり勉強することにも熱心です。
では以下で、それぞれのタイプ別に精神疾患家族との関わり方を見ていきましょう。
2.タイプA:未自覚タイプとの関わり方
①体の症状など自覚している困りごとに焦点を当てる
精神疾患は、どんな症状が出るか、何に困っているか、どんな助けが必要か、は、人それぞれ違います。
一般的なルールがそのままぴったり当てはまらないことも多いです。
例えばうつ病で「気分が落ち込み物事への関心が低下する」というものがあります。
本当にただ座ったまま何時間もそのまま、ということもあります。
どよ~んとしているのがうつ病、と思ってしまいがちですが、逆に「易怒性(いどせい)」が高まって些細なことで怒ったりする人もいます。
「○○病は△△になる」というセオリーよりも、本人が何に困っているか、をヒアリングし、それを和らげることを優先しましょう。
②必要以上に病人扱いしない
そもそも本人に病気という認識、つまり病識が薄いのですから、病人扱いされることへ抵抗を感じることがあります。
それが続くと家族への不信感や拒否感が湧いてきて、関係が悪化する恐れがあります。
また、症状が軽いことが病識の薄さに繋がっているなら、むしろ病人扱いしすぎることは回復を遅らせます。
必要以上に病人扱いしないことで、本人に出来ることはどんどんやってもらいましょう。それがリハビリ代わりになり、回復や復帰を早めます。
③本人からの発信を待つ
本人に病識が無いとは言っても専門医を受診して「○○病です」と診断が出たなら、確かに精神疾患なのです。病気ではない人とは違います。
病気ではない人と全く同じ扱い方は出来ません。
例えばずっと家に居るから「たまには散歩してくれば」とか「せっかくだから旅行でも行こうよ」と言っても恐らく難しいでしょう。
元気そうに見える分家族は色々提案したくなりますが、本人が受け入れることはほぼ難しいので、本人が「○○やってみたい」と言い出すのを待ちましょう。
3.タイプB:不平不満タイプとの関わり方
①本人が満足するまで話を聞く
上述したように、このタイプの方は「自分の気持ちを周囲は十分に理解してくれていない」という不満を持っています。
大人なら誰彼構わず不平不満をぶつけてはいけない、と自分を制していることもあるでしょう。
ですが不満が強く残っている状態では、精神疾患を自分事として受け入れて療養に前向きに取り組むことは難しいです。
なぜなら、療養は「今出来ていないことが出来るようになる」為のプロセスなので、どこかで壁にぶつかるからです。不満が強ければ壁を乗り越えるより回避するほうへ向かってしまいます。
家族になら他の人たちより愚痴も不満も言いやすいでしょう。
本人が納得するまで話させましょう。
家族側の注意点としては
- アドバイス不要
- 自分が解決しよう、説得しよう、考え方を変えようと思わない
- 疲れたら「続きはまた明日」と切り上げる
です。
≪こちらも読まれています!≫けいぜん庵コラム「愚痴を聞く上手
②本人が自覚している問題点と原因に焦点をあてる
不満が溜まっている状態だと、自分自身の問題として対処するゆとりが持てません。
不満が和らいで来るまでは、本人が「○○が問題だった」と主張する内容に同意して共感しましょう。
例えば「会社の上司が自分ばかり厳しく接する」ことが高じてストレス過多になってしまった場合。
家族なら何となく会社での様子が想像できるでしょう。
ですからアドバイスのつもりで「あなたの○○なところが悪かったんじゃないの」と言いたくなります。しかしそれは逆効果です。
なぜなら実際にその現場を見たわけではないですし、本人としては対処法を知りたいわけではなく自分の味方が欲しいのに、辛さを理解してくれないばかりか「家族まで上司と同じ考えなのか」と感じて孤独と拒否感を募らせてしまうからです。
上司が問題で病気になった、と本人が主張するなら、転属や転職も想定して関わりましょう。
同じように本人が主張する問題点や原因の視点から関わることが必要です。
③「あなたが悪い」と言うと関係が悪化するので禁句
これには2つの理由があります。
一つ目は関係性を保つためです。
家族は特別な関係だからこそ他の人が言えないことまで言ってしまうことがあります。
それは家族のメリットでありデメリットです。
家族だから言えること、でもあるし、言われる側からすると「家族にまで言われたくなかった」ということもあります。病気の時に傍で支える家族との関係が悪くなるのは絶対に避けたいことです。
二つ目は「自分で悟る」ことに意味があるからです。
不平不満は、言葉にして誰かに聞いてもらうことで言語化されます。話した相手からの反応(同意、驚嘆、労わりなど)を取り入れながら、自分の中で意味づけを再構築していきます。
再構築が進むと、自分自身で「あの時○○しないで△△すればよかったんだ」と思いつくようになります。
他者が指摘するより、自分で自覚することのほうが何倍も効果があるのです。
4.タイプC:主体的タイプとの関わり方
①基本は本人に主導権を握らせる
家族が精神疾患になると、支える側が「私が何とかしなければ」と考えますが、このタイプ、またはこの境地に至っている人は「本人にお任せ」で良いと思います。
逆に本人がこうしたい、と思っている方向性を持っているのに、家族が違う方向へ引っ張ろうとすれば衝突が起きます。
タイプCに対しては、家族は「一緒に生活する人」くらいの緩い関わり方がおすすめです。
②暴走しないよう専門家との連携を意識する
主体的タイプは自分で考えて行動もするので、家族があれこれ気をもむ場面は少ないです。
しかしやり過ぎる可能性もあります。
バランスをとるのが苦手なので、やるとなるととことんやりだします。
頑張ることはいいことですが、そもそも病気になった原因が過労や過剰適応だったとしたら、その習慣を変えなければ再発のリスクもあります。
例えば通院から帰ってきたら「先生なんて言ってた?」と、主治医の言葉を反芻してもらいましょう。もしその時主治医の意見に必要以上に反発しているようなら、再度相談を持ち掛けてみてはどうか、とか、主治医と似た意見を伝えてみるなどして、バランスを取りましょう。
家族が精神疾患になると、支える側が「私が何とかしなければ」と考えますが、このタイプ、またはこの境地に至っている人は「本人にお任せ」で良いと思います。
逆に本人がこうしたい、と思っている方向性を持っているのに、家族が違う方向へ引っ張ろうとすれば衝突が起きます。
タイプCに対しては、家族は「一緒に生活する人」くらいの緩い関わり方がおすすめです。
③暴走しないよう専門家との連携を意識する
主体的タイプは自分で考えて行動もするので、家族があれこれ気をもむ場面は少ないです。
しかしやり過ぎる可能性もあります。
バランスをとるのが苦手なので、やるとなるととことんやりだします。
頑張ることはいいことですが、そもそも病気になった原因が過労や過剰適応だったとしたら、その習慣を変えなければ再発のリスクもあります。
例えば通院から帰ってきたら「先生なんて言ってた?」と、主治医の言葉を反芻してもらいましょう。もしその時主治医の意見に必要以上に反発しているようなら、再度相談を持ち掛けてみてはどうか、とか、主治医と似た意見を伝えてみるなどして、バランスを取りましょう。
主体的に取り組むタイプは、回復や社会復帰を焦っていることもあります。
休職しているのに会社のスケジュールが頭から離れず「○月までには自分が復帰しないと皆が困るから」と病気と関係ない理由で復帰時期を自分で決めてしまったりします。
本人なりの目標があるのは良いことですが、状態が見合っていないのに復帰を焦るとほぼ必ず再発し再休職になります。
復帰したい、という意欲を尊重しつつ、復帰時期は職場スケジュールではなくあくまで自分の回復度合いで決めることだということを、主治医含めて本人と共有しましょう。
コラム「うつ病の見守りの難しさ -持続可能なうつ療養-」
5.家族がすぐできる取り組み4つ
①外部機関と繋がる
家族は精神疾患の療養生活における「調整者(コーディネーター)」です。
本人の状態や性格をよくわかっていて、一緒に生活する中で自分も問題を感じていて、本人よりも他者と繋がる余裕があります。
どこと繋がるか、というと
- 医療
- 福祉(公的な専門機関)
- カウンセリング
です。
どうしたらいいだろう、と悩む「どう」の部分を専門家に聞いてもらいましょう。
②精神疾患の家族が暴れたら自分の身を守る
精神疾患の症状が急に悪化して、暴言・暴力・破壊行動に及ぶことがあります。
その時は何よりも自分の安全を守ってください。物理的に離れましょう。
落ち着くまで放置出来る状態なら時間が経つのを待ってください。
自傷他害行為(自分で自分の体を傷つけたり、他者に暴力を振るったりする)が出たら警察に通報しましょう。
躊躇する必要はありませんし、通報したからといって即逮捕とか即入院とはなりません。
精神疾患の身内が暴れてしまった場合の対処法(シンプレ)
③本人の前で感情的にならない
家族だって人間です。本人の言動によっては傷つくし、ストレスも溜まります。
だから我慢しないでほしいです。
しかしストレスをそのまま本人へ感情的にぶつけることはやめましょう。
ぶつけたところでこちらが望むような理解は出来ないし、更にストレスが溜まるような諍いや関係悪化につながりかねません。
本人の症状も悪化します。
家族のストレスや傷心は本人にぶつける以外の方法で解消しましょう。
例えば
- リフレッシュ
- ストレス解消
- 自分がカウンセリングにかかる
- 本人から離れて休息する
等が考えられます。
④家族自身の心身のケアを入念に行う
精神疾患は目に見えません。
どんな状態か、を理解するのは、病気本人の発信だけが手がかりです。
そして日によって状態は変化します。
これほどケアしづらい病気もないでしょう。
その分かりづらい病気をケアする家族側の負担は計り知れません。
家族の心身が健康な状態でなければ、精神疾患のケアは難しいです。
本人との関わり方を工夫するのと同じくらい、またはそれ以上に自分自身の心身のケアを充実させてください。
けいぜん庵コラム「家族のメンタルヘルスサポート」
6.まとめ
関わり方は何の病気なのか、本人が何に困っているのか、で変わってきます。
その部分は主治医など専門家のアドバイスを仰ぎましょう。
その上で家族は「生活上必要な関わり方」に主眼をおいて、「頑張って関わって病気を治そう」と意気込み過ぎず、自分自身のケアを忘れないようにしましょう。
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